誘惑、のち監禁
《窓口》は一人、部屋で悩んでいた。望からは、解決するならどんなことをしてもいいとは言われている。正直な話、彼女が少し本気を出せば、すぐにでもこの異変は解決するだろう。いや、彼女でなくても望も同じことはできる。ただし、それは被害者の後遺症などを考慮しなければの話だ。
「まずは居場所を見つけるのが早いんだけどなぁ」
まぁ、子ども達のことは亜夢の兄妹達に任せておけば、心配ないだろう。だが、その子ども達の(意識の)居場所がわからないのだ。居場所がわかった所で、どう戻すか、だが。
「対象が子ども、ねぇ・・・あ!」
子ども、といえばもしかしたら適任かと思う仕え魔のことが、ふと頭に浮かぶ。部屋を出ると廊下にネロがいた。
「主、どうされました?」
「ネロくん、あとでいいから《情報屋》から、今回の被害者の子ども達全員の情報をもらってきてくれますか?」
「わかりました」
そして、そのまま《窓口》はとある部屋へ向かった。
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その部屋は元々は図書室だった。ドアをノックして部屋へ入る。天井まである、たくさんの本棚にはびっしり色々な本が収まっている。
「リオ、いる?」
呼び掛けてみるが・・・反応が全くない。とりあえず奥に進むと、壁際にベッド。その横には小さなテーブルと椅子。そしてクローゼット。普段はその小さな椅子に座ってる人物が、今はいない。
「あれ?リオネット?」
「マスター・・・ボク、こっち・・・」
声のする方を見ると、小さな身体いっぱいに大きな本を抱えた幼女の姿があった。
「とりあえず、何をやってるのかな?リオ」
リオと呼ばれたその子は一旦抱えた本をテーブルに置く。
「読みたい本、とってたの」
「あぁ、そっか・・・」
リオの本名はリオネットなのだが長いのでリオと呼ばれている。リオネットの身長は幼稚園児より少し小さい。高い場所の本は取りづらいだろう。《窓口》と同じ黒髪を腰の辺りまで伸ばし、黒を基調としたロリィタ服を着ている。伏し目がちではあるが黙っていれば本当に人形のようだ。(ちなみに亜夢のメイド服に関しては亜夢の趣味だが、ロリィタファッションはリオネットの意思でも《窓口》が着せているわけではない。他にいる同居人の一人の趣味だそうだ。)
「マスター・・・何か、あったの?」
「もしかしたら、明日辺りにリオにも協力してもらおうかなって思うんだけど」
「ボクに・・・できること、だったら・・・やる」
リオネットからも同意を得られたので、《窓口》は「ありがとう」とだけ伝えて部屋を出た。
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《窓口》が自分の部屋に戻ると、携帯にメール着信の文字があった。なんだろうと見ると、それは護からだった。内容は來夢から聞いたものがほとんどだったが、それに考えていたことは同じだったのか、リオネットにも何とか協力をしてほしい、とのことだった。そして明日、こちらに来るとも書いてあった。とりあえず返信をして、ベッドに潜る。さすがに自分も少しは解決に向けて動かないとならないだろう。
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──《窓口》は夢の中で一人待つ。夢の中と言っても、意識と無意識の境界線。周りは真っ白な空間で大小、形も様々なドアが浮いている。夢魔達はこのドアから、他人の夢を行き来ができると亜夢が言っていた。普通の人間なら認識もできなければ訪れることもない空間なのだが、この空間に《窓口》はよく意識だけでいる。このドアは人が夢を見れば現れ、目を醒ますと消滅する。ここでは日々それが繰り返されている。ぼんやりドアを眺めていると、一つのドアから男性が出てくる。そして彼女に気付いたらしく、こちらに向かって歩いてきた。菖蒲色の髪に瑠璃色の眼の男性。亜夢のもう一人の兄の心夜だった。
「おや、ここでは久しぶりじゃないかい?」
「そうですね」
「いつも妹達が世話になってるね」
「いえいえ、こちらこそ」
挨拶もそこそこに心夜は本題に移る。
「悪いね、君達にも手伝ってもらってしまって」
「仕事ですから」
「ここでは今、色々な夢の中を見てまわるしかできないんだけどね?愛夢と違って私は外から干渉できないから」
心夜は愛夢とはまた違う純粋な悪夢で、他人の夢に干渉は出来るが、それは夢の中からでしかできないのだとか。悪夢が外から干渉してきたら、それはそれで嫌だなぁと《窓口》は思ったが、それは言わないことにした。
「正直なところ、ここに子ども達の夢に行くドアはあっても子ども達の夢にその意識はないんだ」
「どういうことです?」
「夢から意識だけ、どこかに連れ出されてる」
「本来ならば見てない夢は消滅するはずでは?」
「多分まだどこか、ここみたいなところに繋がってるんだ」
「その繋がっているところを探せばいいのですね?」
「そういうこと」
《窓口》と心夜はドアがたくさん浮かぶ空間を進む。心夜が一つのドアの前で足を止める。ドアノブには紐のようなものが付けられていた。
「このドアは被害者の子どもの夢だ、わからなくならないよう目印を付けておいた」
ドアを開けてみると、そこはやはり夢だからか、不思議な空間が広がっている。子どもの想像力は無限大という言葉がよくわかる。
「ちょっとだけ、ね」
《窓口》は指で空間に少し穴の空ける。すると穴の向こうから紙とペンが出てきた。本来、夢の中に実体があるものは夢魔でない限り入れない、はずなのだが。
「夢の中でなら、わたしもなんでもできますからね・・・普段はそれこそ制限してますが」
そういうと《窓口》は紙に何かを書き始めた。ペンを穴に戻し、穴をふさぐ。
「一番簡単に見つける方法です」
そういうと紙を放る。すると紙はたちまち蝶に変化する。蝶はヒラヒラとどこかへ飛んでいく。
「さぁ、追いかけましょうか」
「もしかして、あの蝶が子供達を見つけるのかい?」
《窓口》はただ笑って蝶を追いかけはじめる。しばらく蝶を追いかけるとその蝶は小さなドアに止まった。自分達が入ってきたドアとは、また違う。
「きっと、この向こうに子ども達はいますね」
ドアを開けようと、ドアノブを回すが開かない。どうやら向こう側で施錠され、監禁されてるようだ。
「しかし、一体誰が・・・?」
「さぁ?明日はリオにも協力してもらえますから、その時解ればいいんですけどね」
「一応、目印つけておきますか」
小さなドアに紐を括り付けて二人は夢の世界をあとにした。




