醒めない夢
「《窓口》頼みがある、今回の事件の解決に協力してほしい」
栗色の髪と翡翠色の眼を持つ青年が、目の前のソファーに座る黒髪の少女に言う。
「協力、ねぇ・・・」
《窓口》と呼ばれた少女は若干、困惑していた。
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──その異変は数日前まで遡る。
その異変を《窓口》に知らせたのは、彼女の家の同居人の一人である亜夢だった。
「大変です、ご主人」
「どうしたのかな?亜夢ちゃん」
部屋で、いろんな場所から届いた手紙を読んでいた《窓口》は、慌てて部屋に入ってきた少女に目を向ける。腰まである藤色のツインテールに珊瑚色の眼を持つメイド服の少女、亜夢は主人である彼女にもう一度告げる。
「とにかく大変なんですよ、ご主人」
「大丈夫、ちゃんと話は聞くからね?少し落ち着きましょうか」
《窓口》は亜夢をソファーに座らせ、一旦落ち着かせる。
「それで、その大変な事とは?」
「あ、これは一番上の兄から聞いたことなんですが」
亜夢には上に二人の兄と一人の姉、そして弟と妹がいる。時々、連絡を取り合ったり、この家に遊びに来たりと仲は良い。
「その兄が言うには、夢の中で異変があったみたいなんです」
「どういうことかしら?」
詳しく話を聞くと、原因はまだわからないが『箱庭島』の住人の一部が、眠ったままで目覚めないのだという。
「それで、兄達も原因の調査を始めたみたいなんですが・・・」
「うーん・・・」
さらに話を聞くと、この異変は昼夜問わず、突然起こるらしい。なので、なかなか原因が見付からないのだという。
「それは困りましたね」
「本当は、兄達だけで解決できればいいんですが・・・少し心配で」
「まぁ・・・もしも、どうにもならなければ、わたしの方にも連絡があるでしょうけどね」
「そうですね・・・」
そしてその連絡は意外にも護からきたのである。
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応接室にて。向かい合うように座る《窓口》と護。彼女の隣にはネロが座り、その少し後ろで亜夢は立っていた。テーブルには四人分のティーカップ。主人である《窓口》に「亜夢ちゃんも座りな」と促されたが「大丈夫です」と亜夢は立っていることを選んだ。
「悪いな、急に」
「急なのはいつもの事じゃないですか」
「まぁまぁ、主、今日はちょうど予定が空いてましたし」
琥珀色の眼を細め、ネロは《窓口》をなだめる。
「さっそくで悪いんだが・・・お前は今、島の住人の異変を知っているか?」
「亜夢ちゃんから少し事情は聞きましたけど、まだ原因がわからないの?」
「あぁ」
その言葉に若干、申し訳なさそうに護は苦笑する。そして《窓口》が一口、紅茶を飲んでから「《窓口》頼みがある、今回の事件の解決に協力してほしい」と頭を下げた。
「協力、ねぇ・・・」
護からの協力要請に若干、困惑してる《窓口》をよそに話を続ける。
「ちなみに、お前に協力してほしいってのは俺とか現場の意志じゃない」
「じゃあ、誰が?」
「《夢宮》からだそうだ」
その言葉に《窓口》の顔が引きつる。それはそうだろう。夢宮の家は《窓口》の親戚であり、この相談所では彼女の上司の立場なのだ。そして夢宮からの指示ともなれば彼女も否応なしに従うしかない。それもその筈で、この相談所を立ち上げたのは夢宮なのだから。
「なんでまた・・・その夢宮から?」
「それは知らん」
「夢宮が出てきたってなったら、わたしに拒否権がないではありませんか」
「うちの上司に直接指示があったらしいからな、まぁ御愁傷様」
《夢宮家》というのは『島』の中でもかなり有力な名家で、《窓口》の家からも見える街を警護したりしている。そして《夢神様》の直系の血を引いている(らしい)とも言われ、彼女に負けず劣らず強大な力を持っている。
「仕方ないですね、夢宮がそう言うのなら・・・動かざるを得ません」
渋々、といった感じで《窓口》が協力要請を受諾する。そして誰にともなく、ポツリと呟いた。
「あの人も何を考えてるんだか、さっぱりわからないのよねぇ」
三人は「お前(貴女)が言うな」と思ったが、ぐっとその言葉を飲み込んだ。




