巻き戻す時間と違う行動
目覚まし時計が鳴り響き、護は目を覚ます。これはいつも通りの事。
「今日も仕事⋯⋯か⋯⋯」
カレンダーを見ると、5月4日。世間ではGW真っ只中だというのに、護は仕事がある。職業柄、それは仕方がないのだが。
「たまには大きな休みでも取るか⋯⋯」
シャツに袖を通し、護は大きくため息をつく。そして《窓口》を何処かに連れ出そうか、そう考えた。でも、何処に行こうか、それが問題だ。
「⋯⋯アイツに行きたい場所なんて、そうそうなさそうだしな」
もう一度ため息をついて、着替えを終えると、護は寝室を出た。
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出勤すると、相変わらず三月が護に絡んでくる。鬱陶しいと思いながらも、なんかこの光景も見慣れたというか、何故か前にも見たような気がする。そんな護の様子に、さすがの三月もどうしたのかと思ったらしい。
「何だ?護、体調悪いのか?」
「いや⋯⋯何だろうな?体調が悪いっていうか⋯⋯なんかさ、変な感覚なんだよ」
「んー?なんか変か?」
「うーん⋯⋯デジャヴっての?何となくだけど⋯⋯この光景を前にも見たことがある、気がする」
護は三月に説明をしたいが、上手く説明できないので、モヤモヤしている。
「それならさ、仕事が終わったら《窓口》さんにでも相談してみたら?」
「アイツがわかるのかよ、医者じゃねーのに?」
「もしかしたらって事もあるだろ?」
それもそうかと、護は《窓口》にメールを送った。ダメ元ではあったのだが、意外にも彼女から返事があった。
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夕方。突如、護は事故現場に向かわなくてはいけなくなった。通報の内容は、突然、路上に停まっていた車が爆発したとの事。そして、その事故に男子高校生が巻き込まれたらしい。事故現場に着くと、見知った二人の少年を護は見付けた。
「あれ?智志くんと水月くん?」
「あ、護さん⋯⋯お仕事お疲れ様です」
「どうして二人はここにいるんだ?」
「えっと⋯⋯その、明日は、リオの誕生日だから」
「それでプレゼントを買いに」
「そういう事か」
確かに水月が綺麗に包装された荷物を持っていた。中身は学生が買えるモノだろうから、そんなに大きなモノではなかったが。
「突然、車が爆発するから驚きましたよ」
「この辺りはまだ人通りが多いから、通報とかは大人がやってくれたんだけど」
「後で二人にも状況の詳細を聞きたいんだけど」
「なら、オレ達は終わるまでここで待ってますよ」
「悪いな」
巻き込まれたという男子高校生は、すでに病院に搬送されているようだが、死亡したらしい。だが、他の同僚の話では、駆けつけた時にはまだ息があったのだという。一通り現場検証を終え、護は智志達が待つ場所へ。
~♪~♪
「ん?⋯⋯姉さんからだ」
ちょうど、智志のバッグの中から携帯の着信音が鳴る。多分、智志達が心配で《窓口》が電話をかけてきたようだ。
「もしもし?どうしたの?」
智志はすぐに出る。どうやら、彼女はニュースを観ていたようで。今、現場には遠巻きではあるが、マスコミの集団がある。
「⋯⋯あ、そうなんだ⋯⋯オレ達は大丈夫だよ⋯⋯それでさ、姉さん⋯⋯今、護さんも一緒にいるんだ」
智志は、護が事故の状況の詳細を聞きたいということを、伝えようと思ったのだろう。
「一応、オレ達の用事は終わってるんだけど⋯⋯あ、でもね、姉さん⋯⋯うん、そうなるね」
護と一緒にいることで、彼女は何となく察していたらしい。さすがは《窓口》といったところか。
「遅くなることを亜夢姉さんとかにも言っておいて、じゃ」
最後に必用なことを伝えて、智志は電話を切った。
「智志くん、水月くん、君達から事情を聞いたら帰りは俺が送ってくよ⋯⋯アイツに会う予定もあったし」
「えっと、そうだったんですか?ありがとうございます」
そして三人は協会の建物へ向かった。
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《窓口》の家の応接室。護は智志と水月に事情を聞いたあと、二人を家まで送った。ついでに彼女に会うためにも。
「さて、キミの『相談』を聞きましょうか」
相変わらず、彼女は四つ葉の髪飾りを着けている。確か、護は彼女の誕生日に、髪飾りの代わりになるものをあげたはずなのだが。
「キミに会う予定がなければ、貰ったブレスレットを着けているんですけどね」
「⋯⋯たまには違う感じのお前を見たいんだがなぁ」
「何か言いました?」
「何でもねーよ」
小さく漏らした護の言葉を、きっと聞いてなくても《窓口》はわかってる気がする。彼女はそういう人間だ。そして、すぐに仕事モードになっているようだ。
「⋯⋯そういえば、貴方は魔力の影響を受けにくい体質でしたね」
「もう視てたのかよ」
「貴方が感じてる違和感は正しい、でも、完全に自覚している訳ではないのですね」
「どういう事だ?」
護の問いに、彼女は一息ついて再び口を開く。その時の《窓口》はいつも通りの、仕事モードではない《窓口》だった。
「その前に、例えばの話をしましょう⋯⋯キミはゲームとか、特にRPGをしたりするのかしら?」
「多少なら⋯⋯って突然どうした?」
「あくまでもこれは『例えばの話』ですから、あまり深く考えないでね」
深く考えないでねと言われても、突然の話に護は疑問に思う。こうした時には、何かしら異変やらがあるのを護は知っている。しかも例え話だとしても、彼女の言葉には何かしらの意味がある。
「キミは重要なイベントや、固定シンボルのモンスターの捕獲をする前に一度、セーブしますね?」
「そりゃそうだ、失敗したらそこまでの時間が無駄になるからな」
「では⋯⋯そのイベントなどの結果が、キミの望む結果ではなかった場合、どうしますか?」
「一度、電源とか切って、またセーブした所からやり直す、かな?」
護の言葉に《窓口》は満足そうに頷く。どうやら、彼女が望む答えだったようだ。
「それを望む結果になるまで何度も繰り返しますよね?そして、もしも⋯⋯ゲーム内の登場人物の中で、そのプレイヤーによる『繰り返し』を自覚する者がいたとしたら⋯⋯?」
「まさかとは思うが⋯⋯お前は今、その『繰り返し』が起きてるって言いたいのか?」
「わたしは例えばの話だと、言ったはずなんですけれどね?」
護の問いに、彼女は肩をすくめる。護は不安で仕方ない。例えばの話にしては『何か』変な感じがある。それはまるで全部見てきているかのよう。
「でも自覚したところで、その登場人物が何かをできる訳ではないだろ?」
「そうでしょうね、それがもしも村人Aとかストーリーに関わらない登場人物だとしたら、なおさら」
「つまり主人公なら⋯⋯可能性がある、のか?」
「さあ?どうなんでしょうね⋯⋯キミはどちらだと思う?」
《窓口》は護に問う。だが、それに対しての答えが、護は思い付かない。
「では、例えばの話はここまでにして、キミの『相談』に対しての答えを言いましょうか」
「もう答えが言えるのかよ?」
「答えとしては、実際にキミは同じ日に同じ時間、同じ場所で同じ事を見ているよ・・・でも違和感があるのは何処かが違うから」
「え?ちょっと待ってくれ、今日という日は今日しかないし、それを実際に見てるって不可能じゃないか?それこそ、さっきの『繰り返し』でも起きてない限り」
《窓口》はにっこり笑っているが、その言葉は護に確信させるモノだった。だが、そうだとしても《窓口》が『繰り返し』を自覚しているのに、動かないというのは不思議だ。正確には動いているのかもしれないが、効果が出ていないのだろう。
「キミは気付いてる?」
「今日という日をを繰り返していることをか?」
「違う、そうじゃない」
《窓口》はやっぱりという風に首を横に振る。多分、彼女は何かに気付いてる。でも、動かすための理由も確証もないのだろう。
「⋯⋯護くん、今の事は気にしなくていいわ、忘れて」
「人を不安にさせておいて、その言葉かよ」
「大丈夫ですよ、だって⋯⋯キミは完全にこの異変を自覚していないのだから、ね」
護は《窓口》の言葉に、さらに不安になった。




