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夢現の箱庭  作者: 星咲 美夜
繰り返し
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巻き戻す時間と違う行動

目覚まし時計が鳴り響き、護は目を覚ます。これはいつも通りの事。


「今日も仕事⋯⋯か⋯⋯」


カレンダーを見ると、5月4日。世間ではGW真っ只中だというのに、護は仕事がある。職業柄、それは仕方がないのだが。


「たまには大きな休みでも取るか⋯⋯」


シャツに袖を通し、護は大きくため息をつく。そして《窓口》を何処かに連れ出そうか、そう考えた。でも、何処に行こうか、それが問題だ。


「⋯⋯アイツに行きたい場所なんて、そうそうなさそうだしな」


もう一度ため息をついて、着替えを終えると、護は寝室を出た。



  ✡



出勤すると、相変わらず三月が護に絡んでくる。鬱陶しいと思いながらも、なんかこの光景も見慣れたというか、何故か前にも見たような気がする。そんな護の様子に、さすがの三月もどうしたのかと思ったらしい。


「何だ?護、体調悪いのか?」

「いや⋯⋯何だろうな?体調が悪いっていうか⋯⋯なんかさ、変な感覚なんだよ」

「んー?なんか変か?」

「うーん⋯⋯デジャヴっての?何となくだけど⋯⋯この光景を前にも見たことがある、気がする」


護は三月に説明をしたいが、上手く説明できないので、モヤモヤしている。


「それならさ、仕事が終わったら《窓口》さんにでも相談してみたら?」

「アイツがわかるのかよ、医者じゃねーのに?」

「もしかしたらって事もあるだろ?」


それもそうかと、護は《窓口》にメールを送った。ダメ元ではあったのだが、意外にも彼女から返事があった。



  ✡



夕方。突如、護は事故現場に向かわなくてはいけなくなった。通報の内容は、突然、路上に停まっていた車が爆発したとの事。そして、その事故に男子高校生が巻き込まれたらしい。事故現場に着くと、見知った二人の少年を護は見付けた。


「あれ?智志くんと水月くん?」

「あ、護さん⋯⋯お仕事お疲れ様です」

「どうして二人はここにいるんだ?」

「えっと⋯⋯その、明日は、リオの誕生日だから」

「それでプレゼントを買いに」

「そういう事か」


確かに水月が綺麗に包装された荷物を持っていた。中身は学生が買えるモノだろうから、そんなに大きなモノではなかったが。


「突然、車が爆発するから驚きましたよ」

「この辺りはまだ人通りが多いから、通報とかは大人がやってくれたんだけど」

「後で二人にも状況の詳細を聞きたいんだけど」

「なら、オレ達は終わるまでここで待ってますよ」

「悪いな」


巻き込まれたという男子高校生は、すでに病院に搬送されているようだが、死亡したらしい。だが、他の同僚の話では、駆けつけた時にはまだ息があったのだという。一通り現場検証を終え、護は智志達が待つ場所へ。


~♪~♪


「ん?⋯⋯姉さんからだ」


ちょうど、智志のバッグの中から携帯の着信音が鳴る。多分、智志達が心配で《窓口》が電話をかけてきたようだ。


「もしもし?どうしたの?」


智志はすぐに出る。どうやら、彼女はニュースを観ていたようで。今、現場には遠巻きではあるが、マスコミの集団がある。


「⋯⋯あ、そうなんだ⋯⋯オレ達は大丈夫だよ⋯⋯それでさ、姉さん⋯⋯今、護さんも一緒にいるんだ」


智志は、護が事故の状況の詳細を聞きたいということを、伝えようと思ったのだろう。


「一応、オレ達の用事は終わってるんだけど⋯⋯あ、でもね、姉さん⋯⋯うん、そうなるね」


護と一緒にいることで、彼女は何となく察していたらしい。さすがは《窓口》といったところか。


「遅くなることを亜夢姉さんとかにも言っておいて、じゃ」


最後に必用なことを伝えて、智志は電話を切った。


「智志くん、水月くん、君達から事情を聞いたら帰りは俺が送ってくよ⋯⋯アイツに会う予定もあったし」

「えっと、そうだったんですか?ありがとうございます」


そして三人は協会の建物へ向かった。



  ✡



《窓口》の家の応接室。護は智志と水月に事情を聞いたあと、二人を家まで送った。ついでに彼女に会うためにも。


「さて、キミの『相談』を聞きましょうか」


相変わらず、彼女は四つ葉の髪飾りを着けている。確か、護は彼女の誕生日に、髪飾りの代わりになるものをあげたはずなのだが。


「キミに会う予定がなければ、貰ったブレスレットを着けているんですけどね」

「⋯⋯たまには違う感じのお前を見たいんだがなぁ」

「何か言いました?」

「何でもねーよ」


小さく漏らした護の言葉を、きっと聞いてなくても《窓口》はわかってる気がする。彼女はそういう人間だ。そして、すぐに仕事モードになっているようだ。


「⋯⋯そういえば、貴方は魔力の影響を受けにくい体質でしたね」

「もう視てたのかよ」

「貴方が感じてる違和感は正しい、でも、完全に自覚している訳ではないのですね」

「どういう事だ?」


護の問いに、彼女は一息ついて再び口を開く。その時の《窓口》はいつも通りの、仕事モードではない《窓口》だった。


「その前に、例えばの話をしましょう⋯⋯キミはゲームとか、特にRPGをしたりするのかしら?」

「多少なら⋯⋯って突然どうした?」

「あくまでもこれは『例えばの話』ですから、あまり深く考えないでね」


深く考えないでねと言われても、突然の話に護は疑問に思う。こうした時には、何かしら異変やらがあるのを護は知っている。しかも例え話だとしても、彼女の言葉には何かしらの意味がある。


「キミは重要なイベントや、固定シンボルのモンスターの捕獲をする前に一度、セーブしますね?」

「そりゃそうだ、失敗したらそこまでの時間が無駄になるからな」

「では⋯⋯そのイベントなどの結果が、キミの望む結果ではなかった場合、どうしますか?」

「一度、電源とか切って、またセーブした所からやり直す、かな?」


護の言葉に《窓口》は満足そうに頷く。どうやら、彼女が望む答えだったようだ。


「それを望む結果になるまで何度も繰り返しますよね?そして、もしも⋯⋯ゲーム内の登場人物の中で、そのプレイヤーによる『繰り返し』を自覚する者がいたとしたら⋯⋯?」

「まさかとは思うが⋯⋯お前は今、その『繰り返し』が起きてるって言いたいのか?」

「わたしは例えばの話だと、言ったはずなんですけれどね?」


護の問いに、彼女は肩をすくめる。護は不安で仕方ない。例えばの話にしては『何か』変な感じがある。それはまるで全部見てきているかのよう。


「でも自覚したところで、その登場人物が何かをできる訳ではないだろ?」

「そうでしょうね、それがもしも村人Aとかストーリーに関わらない登場人物だとしたら、なおさら」

「つまり主人公なら⋯⋯可能性がある、のか?」

「さあ?どうなんでしょうね⋯⋯キミはどちらだと思う?」


《窓口》は護に問う。だが、それに対しての答えが、護は思い付かない。


「では、例えばの話はここまでにして、キミの『相談』に対しての答えを言いましょうか」

「もう答えが言えるのかよ?」

「答えとしては、実際にキミは同じ日に同じ時間、同じ場所で同じ事を見ているよ・・・でも違和感があるのは何処かが違うから」

「え?ちょっと待ってくれ、今日という日は今日しかないし、それを実際に見てるって不可能じゃないか?それこそ、さっきの『繰り返し』でも起きてない限り」


《窓口》はにっこり笑っているが、その言葉は護に確信させるモノだった。だが、そうだとしても《窓口》が『繰り返し(それ)』を自覚しているのに、動かないというのは不思議だ。正確には動いているのかもしれないが、効果が出ていないのだろう。


「キミは気付いてる?」

「今日という日をを繰り返していることをか?」

「違う、そうじゃない」


《窓口》はやっぱりという風に首を横に振る。多分、彼女は何かに気付いてる。でも、動かすための理由も確証もないのだろう。


「⋯⋯護くん、今の事は気にしなくていいわ、忘れて」

「人を不安にさせておいて、その言葉かよ」

「大丈夫ですよ、だって⋯⋯キミは完全にこの異変を自覚していないのだから、ね」


護は《窓口》の言葉に、さらに不安になった。

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