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ふつうのディストピア〜転生先は、俺にとっては楽園〜  作者: 藤花


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5/12

5.ノーストレスな休日の朝

ピピッ…と耳元でアラームが鳴る。

「おはようございます、ID: 954823。本日の起床予定時刻です。心拍数・睡眠の質ともに問題ありません」

アイの無機質な声とともに目覚める。

突然管理都市での生活が始まって数日。こういう時、「新生活にも慣れて…」なんて言葉を使うのかもしれないけれど、俺は初日からここでの生活に馴染んでしまっていた。というより、元いた世界よりもこちらの方がよっぽど俺に合っている。

「おはようアイ。今日の作業はどこ?」

「本日はリフレッシュデイです」

「お、休みか」

そう言えば元の世界での最後の記憶は虚無感の強い休日だったな、と思い出す。休日になっても「せっかくの休みだし何か有意義なことをしなきゃ」という謎の焦りや、溜まった家事の圧迫感で不完全燃焼に終わっていた。焦燥感だけはあるけれど、何がしたいかと言われると何もない。予定を立てるのも人に会うのも面倒だったからだ。

「もしかして、休日の予定も全部アイが決めてくれるのか?」

俺の問いかけにアイはピピピ…と一瞬思考し、

「本日の推奨タイムスケジュールを提示します」

と言って目の前にホログラム文字を映してきた。


08:00 起床

08:10 朝食

08:40 健康散歩

09:20 自由時間

12:00 昼食

13:00 趣味活動

15:00 休憩

17:00 入浴

18:00 夕食

19:00 娯楽

22:30 就寝


「完璧じゃん」

画面にズラリと並ぶ過密すぎず緩すぎない予定表。

「何時に起きようか」「昼何食べようか」「何して過ごそうか」という決断のストレスが一切存在しない。

(やっぱりこの世界、俺にとっては天国なんじゃないか?)

考えること、悩むこと、選ぶことが億劫な俺にとっては、全て面倒見てもらっている至れり尽くせりの世界。

「そろそろ朝食の時間です。起床し、供給口へ」

アイに促されて、俺は殺風景な寝室を後にした。


今日のパウチは優しいお粥のような味がする。

食事にもあまりこだわりが無く、前の世界でも何日も同じカップラーメンを食べ続けていたことがあるけれど、さすがの俺もたまには味変がしたくなる。

毎日コンソメスープ味のパウチと緑色の固形物だったら飽きるかも…と思っていたがそれすら杞憂に終わった。毎日異なる味の食事が、準備や片付けの労力なしで提供される生活。

「質問です。『休日くらいは自分の意思で自由に過ごしたい』という要望は出さないのですか?」

アイは時折、こんな質問を投げかけてくる。やけに人間臭いことを聞いてくる、変なシステムだ。

「え? 好きなことしていいよって言われるのが一番困るんだよ。結局スマホダラダラ見て一日終わっちゃうし、こうやって管理される方が楽」

「……意思決定に伴う脳の疲労コストを回避する思考、極めて合理的です」

これが人間相手だったら、「勿体無い」とか「自分の事を自分で決めろ」とか説教されるのかもしれないが、アイはAIだからなのか、すんなり納得してくれた。

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