4.仕事は超!単純作業
動く床は、区画4「資材分類作業場」に到着した。
作業場にはもう先に作業を始めている人たちがいて、皆一様に死んだ魚みたいな目で作業を続けている。
巨大なベルトコンベアから小さいベルトコンベアに枝分かれし、そこに運ばれてくるものをそれぞれ箱詰めしているように見受けられる。
「ここでの作業は、一体何をすればいい?」
動く床がご丁寧にコンベアの一角まで俺を運ぶ。恐らくここで作業をしろということだろう。
「ベルトコンベアで3色のブロックが流れてくるので、指定のコンテナに分けてください」
アイの指示通り、暫くすると俺のコンベアにもブロックが流れてきた。
「これは赤。これは青だから、こっち」
仕事内容は、超単純作業だった。俺はこういう作業を苦にしないタイプだけど、きっと得手不得手がはっきり分かれるだろう。
(大学生の頃、友達とパン工場にアルバイトに行った時もこんな感じだったな)
俺は無心でケーキにイチゴを乗せ続ける作業をこなし、これだけでこんなに貰えるなら毎日やってもいいと思っていたけれど、一緒に行った友達が一晩で「頭がおかしくなりそうだ!」と言って辞めてしまった。
思考も判断も必要ない。責任もない。ノルマや進捗を聞いてくる上司もいない。俺にとっては天職だ。「自由と自律」を求められて消耗していたデスクワークと比べ、無心でできる作業の方が楽だった。
ここは管理都市なので、もしかすると俺がこういう作業に適性があることを見込んで、ここに連れて来られた可能性もある。
「ID:954823。残り10分で、規定休憩の時間です」
「え、まだ始めたばかりなのに?」
「作業開始から3時間経過です。集中力の回復のため、休憩となります」
アイにもう3時間経つと言われ驚く。やっぱり無心で単純作業をする方が、時間の流れが早く感じる。
「それじゃ、休憩するか」
きっと休憩を取ることに対して文句を言ってくる嫌味な上司もいないのだろう。
「ID: 954823。周囲の市民と比較し、あなたの心拍数は極めて平穏であり、幸福度指数が急上昇しています。……通常、新配属された市民は『自由の制限』に対して初期ストレス反応を示しますが、異常はありませんか?」
休憩所の座り心地の良いふかふかのソファに腰掛け、給水マシンから出てくる栄養水(飲むと色々回復するらしい)を飲んでいると、アイがおもむろに話しかけてきた。
「異常?あるわけないじゃん。前いた場所なんて『自分で考えて動け』って言われ続けて毎日残業だったんだよ?指示通り動くだけでいいなんて、むしろ天国だよ」
「……理解を保留。しかし、従順な市民の存在は歓迎されます」
予想外の回答だったのか、アイは少し間を置いて返答した。
「ID: 954823。あなたは近々、マザーにより模範市民にアップグレードされるでしょう」
「アップグレード?別にそんなことしなくていいから、ずっとこの生活が維持されてほしいな」
「問題ありません。従順な模範市民は、マザーにより手厚くケアされます」
マザーとか、模範とか、よくわからないけど、とりあえずこの生活が続くなら何でもいいかな?




