第32話「ドラゴン探しに来たんだけど、なんで鏡?」
本当にドラゴンに会いに行くのがいい作戦なのかを疑問に思いつつ、山の方に向かってた。俺は時々、まだ方向が間違っていないか確認するために、空へ浮かんで偵察してみた。
「悠真さんが空高く飛べるって知らなかった」
「最初にこの世界に来た時も、空から、リアナさんと出会ったあの神殿を見つけた」
「なるほど、そうだったね。悠真さんと出会えたのが本当に奇跡みたいなものだったわね」 照れた顔で俺に向かって笑っていた。
(いや、俺の方はリアナさんに出会えたのが奇跡みたいなものだった。リアナさんは俺と出会ったことで、仕事が増えただけじゃないの?)ちょっと皮肉なことを考えたが、それでも自然とリアナさんの笑顔を返した。
山に近づくにつれ、地形は次第に急勾配になって、足元の険しさも増していった。リアナさんは旅に慣れていたから、文句一つ言わなかったが、汗がだらだら流れていた。
「いや、こんな時幽霊のありがたみも感じますね。苦労もせずにどこにでも移動できるし」
「はあ、はあ…いや、エネルギーなくして、いかなる運動も生じ得ない。悠真さんは幽霊でも、生きていた時から持っていたエネルギーで存在しているはずです。だから普通の幽霊はすぐに消えてしまうし…悠真さんがこうしていつまでも行動できるのが不思議…まあ、今は集まった残滓の力も足しているけど…」
「いきなり怖い話言うな!それって、力を使ったらまたウィスプ姿に戻るってこと?それが続いたら俺も消えるかも?!」
「それはそうですが…その前に悠真さんを復活させますから、大丈夫です!もしもの時のために、また残滓のエネルギーを集めておけるといいですし」 リアナさんがちょっと空元気な感じで答えた。先のリアナさんが言った言葉は自分の不安を口にした結果だったらしい。
「じゃ、今のところ大丈夫そう!気にせずに、探検を続けましょう!」俺が気にするとリアナさんがもっと心配しそうと思って会話を現在のワーム探しの方に戻した。
夕暮れになったころ、森が夕日の光を浴びてキラキラしていて、眩しかった。その美しさに、俺もリアナさんも思わず足を止めて眺めていた。リアナさんはハンカチを顔に当てて、汗を拭いた。彼女の動きで俺はリアナさんの顔の方を見てた。
「綺麗だね」
「本当に綺麗な夕日ですね」
俺は夕陽について言ってたわけでもないけど、ちょっと恥ずかしくなって、それを指摘することをやめた。地上から見上げても、岩肌をむき出しにした山がよく見えるようになっていた。俺は照れくさくなって、そちらへ目を逸らした。
「あれ、夕日の光が反射しているところがあるみたい」
「どこですか?」
「ほら、山の左下の方に…」 俺は指さしてみたが、リアナさんがその先を見つめようとして目を細めていた。
「うーん、見えないけど、あそこに行ってみよう!」
暗くなった後も、山を登り続けた。ドラゴンを見たのも夜だったから、夜行性の可能性もあると考えて、あの反射を見たところまで移動したいところだった。リアナさんは旅慣れていたから、まだ大丈夫そうに見えた。時々両手を使う必要があって、リアナさんは松明を持てなかったので、俺はまたエスコート役を務めていた。意外と道らしい道があったから、すんなり登ることができた。山の左下の方だったので、それほど遠くもなく、だいたい光が見えた場所まで来ることができた。問題は、月もまだ昇っていないほど暗くて、さっき光が反射していた場所を特定するのが難しいことだった。俺は時々、偵察のためにリアナさんから離れて、道の先や遠くから山を見に行ったりもしていた。
「この辺だったと思うけどな……」
「仕方ないわ。今日はここで一夜を過ごしましょう。朝日が昇る前に起きて、朝日の光で反射した場所が特定できるかも」
(今日はここまでか。リアナさんには無理させたくないし)
そう考えて、リアナさんのところへ戻ろうとした。すると、岩壁の方で何かが動くのが見えた。
「気を付けて、何かいる!」
リアナさんは俺の報告に反応して、立ち上がった。俺はさっき動きが見えた岩場の裂け目に移動してみた。
「やっぱり、この中に何か動いている。よく見えないけど…俺が中に入ってみるね」
「気を付けてね!」
俺は裂け目に入った。何が待ち構えているのか、想像もできなかった。やっぱり、この中で何かが動いていた。俺の前には幽霊がいた…だがその幽霊は俺だった。
「鏡?」
「その中に鏡があるの?」
「そうみたいだけど…裂け目の前の岩をどかして、入ってみて」
リアナさんは俺の指示に従って、なんとか俺の隣に入れることができた。だけど、その鏡の中にはリアナさんが写っていなかった。
「悠真さんだけ?これは幽霊だけが映す鏡なの?」
その鏡のサイズはわりと大きかったが、リアナさんでも持ち上がらない程でもなかった。彼女はそれを持ち上げてみた。
「これを調べましょう!」
リアナさんが鏡を大事そうに抱えたままキャンプの方に戻ろうとした。俺は隣で岩をすり抜けて出た。だけど、外にはもうキャンプも空も何も見えなかった。
俺の前には、大きなドラゴンが立っていた。リアナさんが止まっていた俺を見て、顔を覗き込んだ。俺の驚いた顔を見るとリアナさんが首を傾げた。 鏡の方に向いたらドラゴンの大きな口が自分の前に開いているのが映っていた。
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