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第29話「幽霊限定、神話級モンスター発見」

 リアナさんがさっき大声を出したせいで、隣のテーブルに座っていたカップルが不思議そうな顔でこちらを見ていた。周りから見れば、彼女は一人なのに二人席に座っている。その時点で、少し変な目で見られていた。さっきの大声で、その視線はいっそう鋭くなっていた。俺がその様子に気を取られていたところでリアナさんは自分の過ちを自覚して、恥ずかしそうに視線を落とした。 俺は考えもせずに、そんなリアナさんの方に顔を近づけて小声で囁いてみた。


「びっくりさせてごめんね。そんなにレアな存在だなんて知らなかったよ。」


「いや、こんな風に悠真さんの顔も見える状態だから、みんなには悠真さんが見えないっていう自覚が足りなかったみたいです。まあ、レストランで大声をだしたのが恥ずかしいね。」

 彼女が言いながら、ピアスの方をいじった。

「お母さまが知ってたら怒るでしょう…」


 その言葉を口にした途端、リアナさんの表情には、恥ずかしさの奥に寂しさが浮かんだ。その時、ウェートレスが紅茶の小さなポットとカップを運んでくれた。リアナさんは礼儀正しく礼を言った。そのやり取りのおかげか、周囲もようやくこちらへの興味を失ったようだった。ウェートレスが紅茶をカップの方に入れてからまた別のテーブルの方に移動した。リアナさんはカップの紅茶を眺めながら小声で語りだした。


「古い神話によるとヘカテーさまがこの世に来た時、蛇に引かれた馬車に乗ってた。その時、その蛇を放ち、後に大きなドラゴンへと育てた。それがワーム。」


(またギリシャ神話の登場人物の話な…)


 リアナさんは紅茶から俺の方へ視線を移して、話を続けた。


「ワームは特別な生物みたい。知性があるし、昔のことも知ってるらしい。でも、それだけじゃないです。普通の人には見えない。人の前で運良く現れることはあるが、普段は幽霊みたいに普通の人の目には映らないそうです…」


「幽霊みたいに?」


「そうです!私はわざとその表現を使いました。さっきの会話で私がこう考えました...ワームは魂に近い存在、だから同じ魂の存在...幽霊なら普段でも見える!だから悠真さんがこの世界に来た時、ワームが見えたと推測している。」


 その時、ウェートレスがテーブルに近づいてたからリアナさんはまた黙ってた。テーブルにホットケーキが乗ったお皿がリアナさんの前に置かれた。目の前のご馳走で彼女の目がキラキラした。


「これが食べたかった!」

 小さな声で俺に囁いたから、嬉しそうにホットケーキを切り始めた。一口食べると、本当に嬉しそうに思わず顔いっぱいに笑みが広がった。ごくりとその一口を飲み込んだら上目遣いで俺に向いた。

「本当にごめんね、食べさせたいのに…」


「いや、大丈夫。餓鬼じゃないから、別にお腹が空いているわけでもない」

 美味しそうに見えた食事なのに、身体がなにと食欲が湧かなかった。


「ガキ?」

 リアナさんが不思議そうに聞き返した。


「この世にはいない幽霊の種類かな。お腹が常に空いているって言い伝えが…」

 俺が説明しようとしたが、文化の違いから説明が長くなりそうだったので、話を切り替えた。

「嬉しく食べているリアナさんを見られるだけでお腹がいっぱいになりそう」

 そう言って、彼女に笑顔を見せた。彼女はその視線を避けてホットケーキの方に移ってた。


「お、おう…」


「ワームは俺が蘇生できる鍵になるかもって言ってたが、同じ魂だからか?」


「それもあるかもしれませんが、ワームは英知ある生き物です。神話の時代から生きてきた。ヘカテーの移動にも使われたから、世界を渡る術なら分かるはず。それで悠真さんの身体をこっちにも呼び出して蘇る方法が分かるはず」

 リアナさんは本当に礼儀正しく食事をしながら俺と会話をしていた。


「なるほど…日本から俺の身体がこっちにか…」


「この町を出たら、神殿の方に行ってからその周りにまだワームがいるかどうか探しましょう」


「リアナさんはワームが見えない?」


「いや、見たことないから詳しく分からないよ。私の推測が正しければ、何か特別な修行を積めば見えやすくなるかも知らない。多分、ワームは幽霊とちょっと異なっているから、霊能力者だけの力では見えないと思う」

 そう語った彼女は最後のホットケーキのスライスを口に運んで、また幸福そうな顔をみせた。

「いや、本当においしい物を食べると生きて良かったと痛感しますね。悠真さんも絶対また美味しいものが食べれるようにするから落ち込めないでね!」


 その言葉を聞いて、リアナさんは復活できなかったことを励ますためにカフェに誘ったと悟った。リアナさんは本当にあのアクセサリーで俺が完全に復活できたと期待してた。本当に落ち込んでいたのがリアナさんの方だった。俺は初めから半分諦めている気持ちでここまできたから、可能性があるだけで嬉しかった。だからそれほど気にしてなかった。でも、リアナさんは生きているからか、道を失って不安になってた。俺にその不安を感じさせたくなかったんだろう。


 彼女の気遣いでちょっと嬉しくなって口が緩んだ。俺の顔を見て、リアナさんはまた目を逸らしてまた少し紅茶の残ったカップに視線を移した。それを一気に飲んだら、ポケットから財布を取って、いくつかキラキラしたコインをテーブルに置いて立ち上がった。


「じゃ、旅の支度の買い物に出ましょう」

 周りに気がつかれないように俺に伝えた。


 カフェの方は貴族が多い土地だったから、二人でもっと平民向けの市場へ向かった。リアナさんはそこで生き生きして買い物をしていた。お願いしたように俺の服も探してくれた。サイズを確かめるように、俺の幽体に服を当てていた。他人から見れば、リアナさんが空想の恋人に服を合わせているように見えたはずだ。ちょっと面白い光景だった。


「やっぱり霊能力者の手伝いをするならローブが似合うかもね」

 ちょっと上質な布で作られた青いローブを露店から引っ張って俺に合わせてみながらリアナさんが独り言みたいに語った。


「ローブはちょっと恥ずかしいかな」


「いや、絶対似合うはずなんだから」

 リアナさんは俺の反論を無視して金を店員さんに渡した。


 そんな調子で買い物を続けていたら、宿へ戻って支度をする頃には、もう昼頃になっていた。


「今夜は野宿になるでしょうが、出発!」

 リアナさんの元気な声でまた旅に出た。




第29話、いかがでしたか?


応援よろしくお願いします!


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