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第28話「人生初のデート!いいえ、もう俺の人生は終わっています」

(いや、俺だってもうタンスで寝るのが限界だった。実体がない以上、姿が戻ったからといってタンスに入れなくなったわけでもない、でも、ぬいぐるみじゃあるまいし、もう遠慮する)

 そう思ったが、さすがにリアナさんにその愚痴を言う必要を感じなかったから、柔らかい笑顔を彼女に向けて騎士気取りをしていた。


「それなら、お嬢さん、今日は部屋の外で護衛をしてみます。」

 彼女に向いてウインクするとドアをすり抜けて廊下に出た。出る前にリアナさんの頬が赤くなっているのが見えた。やっぱり姿がある分俺は男として意識しやすくなったと感じた。


(まあ、リアナさんは俺のことをペットとして扱っているんじゃないかと思う時もあるな)


 廊下に出た俺は手を眺めた。本当に俺の手がまた見えると思わなかった。高校生の頃、バイト代を貯めて買った高いスマートウォッチもちゃんと腕に着けていたまま。事故で壊れたのか、幽体だからか、電源が切れた画面から動かせそうになかった。この姿のままで復活できるなら、スマートウォッチも異世界で使えるようになるのかと一瞬期待した自分もいたが、その力で別に凄い事もできないでしょうし、充電する方法もないからそこも諦めた。


(解体して、パーツを売る方が金になるかも)


 蘇ってなかったが、やっぱり自分の姿が戻ったことでも嬉しかった。そんな想いだったから、夜はそんなに長く感じなかった。


「おはよう!悠真さん!」

 リアナさんが元気よく部屋へのドアを開いて俺に挨拶をした。彼女はもう着替えてた。何故か町娘のスタイルに似ていたが、もう少し上品で、貴族でも着られそうなドレスだった。やっぱりかわいい。やっぱりちょっとまだ俺の姿に慣れてなくって、顔がいつもより赤く染まっていた。やっぱりリアナさんと冒険できて俺はラッキーだと再び感じた。でも、よくあんな高そうな服が買えると感心した。


「おはよう、リアナさん!今日の服も可愛いね。今日も部屋で朝ご飯をとる?」

 俺が返した挨拶でリアナさんがまた髪の毛をいじって、恥ずかしがっていた。


「きょ、今日はここが最後なので、せっかくなんだから二人でカフェに行こうかな~と思っているんですが?」


 リアナさんが話した時俺を直視せずに、廊下の方に目を向いたが、最後の質問で顔の向きを変えずに目で俺の反応を確認してみた。


「いや、俺はやっぱりこの姿でも食べそうにないから、どこでも構わないけど…」

 俺が言い出すとリアナさんがちょっとがっかりしているのが目で見えたから続きで言い直した…

「でも、カフェは見てみたいね!一緒に食べるのが蘇生した後のお楽しみ!」

 やっぱりリアナさんを困らせたくないから笑顔で言葉を返した。


「そうね!もう支度をしたから、一緒に行きましょう!」


 リアナさんは俺と一緒に宿を出て、一緒に道を歩いた。いや、俺はまだ浮いてたが、身体の形があったから一応足を動かして浮いてた。ちょっと不思議な気持ちだった。身体は動かせるのに、その動きも何も感じなかった。ちゃんと道路を見つめないと歩く振りが出来なかったため、そこに注意することで頭がいっぱいだった。


「こうして、悠真さんと出かけるのって逢瀬みたいで恥ずかしいね」


 突然そう呟いたリアナさんの言葉にびっくりした。


「オウセ?あ!デートみたいなやつか!…お、おう…そうだね」

 そんなことを言われたら、どう返すべきか分からなかった。リアナさんはやっぱりその反応に困ってた。なんとか会話を作れないと不味い雰囲気が続きそうだった。


「一晩考えたけど、俺が蘇生された時のために、今日の旅の支度の買い物と共に俺の服も買いましょうか?」


「え?」

 驚いたかのようにリアナさんが返事した。


「この服のままで生き返ったとしても、服足りないでしょう?最悪の場合、裸で蘇ってたら困るし」

 リアナさんがその言葉で真っ赤になってしまった。いや、デートで女の子に言うべき会話じゃなかった。でも、大学まで、必死に勉強した俺は彼女を作る時間がなかったから、家族以外の女の子と、こんな感じで出かける経験がなかった。そう、俺は勉強頑張ってただけで、決して内気で告白も出来なかったからじゃないからね!


 リアナさんはその俺から目をそらした。


「そうね。この場合、悠真さんはどんな形で生き返るか分からないですね。方法も分からないし…」


「買った服の金は生き返ったら返しますね。まだこの世界で何の仕事ができるか分からないけどね…」


 リアナさんは俺の目を見て、くすくすと笑った。

「そんなこと気にしなくっていいから。普通なら蘇生料金の方がずっと高いですよ」


「やっぱり高いね。普通の人には手が届かない術ってことはこの町に来て実感した」


 俺の言葉で彼女の顔がちょっと暗くなった。

「仕方ないね、使える人、道具、時間には限りがある…人の人生はかけがえのないものなのに…でも、悠真さんはそんなこと考えなくっていいから…」

 その言葉が出た途端、また黙り込んだ。俺は気まずくなった空気をどう直すべきか考え込んだが、リアナさんの方からまた話の続きが出た。


「まあ、悠真さんはどうしても払いたいって言うなら、一生私のお世話係にでもなれるわよ」


「へへ、それよりリアナさんの護衛の方になりたい。ちゃんと鍛えないといけないでしょうけど…」

 リアナさんの方を向いてみたら、ちょっと赤めな顔で黙り込んだ。彼女が何を考えているのか想像もできなかった。彼女から目を逸らして目の前の町を見渡した。


「そっちの方にちょっとオシャレなカフェが開いてるみたい」

 右の道を指差した。やっぱり手があるのがありがたい。


 二人でそっちに向かうと店の前に待っているカップルが中に案内しているところが見えた。


「さっきの二人は貴族みたいです。この店は高いでしょう。だけど、悠真さんが人間形になったお祝いみたいなものだから、ちょっと高くても気にしない。どうせ、食べるのが私だけですし…」

 俺に向かって笑って言った。


「そうね、生き返った時のお祝いでもまたこんな場所に行こう!その時、絶対俺が奢るからね!」

 俺がまだろくでなしじゃないとアピールしてみた。彼女はその言葉で小さく頷いた。その途端、店の前にたどり着いた。男性のウェイターがリアナさんを出迎えに来た。


「お一人様ですか?それとも誰かとお待ち合わせでしょう?」

 彼が尋ねた。


「待ち合わせじゃないけど、二人席のテーブルでお願いします。」

 リアナさんは上手く嘘をつかずに、一人ではないことを誤魔化せた。そのお願いに従って、ウェイターはリアナさんを中に案内してくれた。ちょっと厨房に近すぎる二人席のテーブルで一つの椅子をリアナさんが座りやすいように移動してくれた。俺はその向かいの席に勝手に座った。いや、まだ浮いた状態だけど、リアナさんから見れば座ったように見えたはず。ウェイターはリアナさんにメニューを渡すと、ドアの方に戻った。彼女は興味深い目でメニューを見ている間、俺は店の中を見てた。これは男一人で入れそうにない、女受けのカフェのようだった。俺はこんなの嫌いじゃないが、やっぱり恥ずかしい。周りもカップルばかりか女性だけのテーブル。身体の形があったが、俺には血が流れてないから顔は赤くなれないはずが、それでもうずうずした。


「メニューを見ますか?」

 リアナさんが俺だけが聞こえるように聞いた。


「いや、読めない字でしょう」


 俺の言葉で彼女はメニューを閉じるとすぐ、メイド服のウェートレスが注文を受けに来た。


「ホットケーキセットで、飲み物は紅茶でお願いします」

 彼女の注文を受けると、ウェートレスは厨房に向かった。


「異世界なのに、知ってる食べ物と飲み物が多いのが不思議だな。味が同じか気になるところだけどね…この世には日本食があるといいな」

 会話を作り出してみた。


「そうね、私もその日本食って言うのが分からないから答えられないけど、生き返ったら二人で探してみたいね」

 彼女は俺に微笑んだ。

「同じのが多いのが本当に凄いね。逆のはどうですか?違う世界と感じるものはなんですか?」

 更に俺に聞いた。


「そういえば、この世に来た時、二つの月があったのが凄かった。俺の世界は一つだけだ。それと、空にドラゴンがいたから、すぐに異世界だと分かった」

 その言葉でリアナさんは固まった。


「ドラゴン?ワームを見たの?!」

 彼女がびっくりして、大声で聞いてた。


「レア?」


「そうよ。蘇生の鍵にもなるかも」


第28話、いかがでしたか?


応援よろしくお願いします!


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