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第27話「生き返った!と思ったらまだただの幽霊でした」

 目の前にたしかに手がある。俺の手。姿形は俺が知ってる手そのものだった。


「俺、本当に生き返った?」

 驚いた俺は、聞くのが何故か怖くて、リアナさんに小声で尋ねた。


 リアナさんもまた驚いた顔で、呆然と俺を眺めた。


「へ、へ、部屋に男の人がいる!」

 リアナさんが叫びだした。


「俺だよ!俺!悠真!」

 そう叫んだけど、その瞬間いやな思いが浮かんだ。


「俺、服着てる?」

 俺の姿を確認した。

「なんだ!ちゃんと死んだ時着てた服じゃない!それに血も付いてない!」

 裸だったら恥ずかしいし、リアナさんに失礼でしょうから、ちゃんと服着てたのが素直に嬉しかった。血まみれの服だった場合、洗濯とかも面倒そう。


 リアナさんは息を吐き出して、俺を見つめ直した。

「本当に悠真さんですね!いや、理性的には男だと知ってたが、目の前に男が現れて、現実なんだと痛感しました。」

 少し落ち着いた様子で、彼女は俺に微笑んだ。

「やっぱり異世界の服ですね。」


「やっぱり目立つかな?それなら、明日一緒に服を買いに行く?」

 俺の質問にリアナさんはちょっと戸惑ったようだった。


「あの、言いにくいんですけど……悠真さんは透けている。生き返ったわけでもないですよ」

 申し訳なさそうな返事を受けた俺は、もう一度目の前に手を振ってみた。確かに透けていた。


「よく考えたら、この場合、心が躍るはずなのに、心臓のドキドキが一切感じないな」

 俺はリアナさんに苦笑いをして、手を胸に当ててみた。胸の位置に当たるのに、手はその中に簡単に入ってしまいそうな感じがした。実体がなかった。

 生き返ったと思ったが、死んだままの現実に凄く落ち込んでいた。それでも、リアナさんに向けて無理にいつもの調子で向き直した。


「ごめんなさい」

 リアナさんは俺の普段の表情なんか見えた事もなかったが、俺が無理していたのが見抜かれていたようだった。リアナさんもまた悲しそうな顔でこっちを見つめた。


(やばい、そんな顔したら俺がもっと落ち込むじゃない!)


 俺は頑張って気を取り直した。

「まあ、俺が姿を取り戻したのも凄いね!これなら復活までの時間も、そんなに長くないでしょうね!」

 リアナさんは俺を見て、首を横に振り、テーブルの前の椅子に腰を下ろした。


「あの力では悠真さんの魂は元の姿を思い出すことはできたが、普通ならそれに合わせて肉体を呼び出す。私の仮説では悠真さんの身体は元の世界にいるままで簡単にはこの世界に来られない。残滓の怨念の力だけでは、それに対抗出来ません。」

 それを言いながらリアナさんはどこか遠くを眺めながら耳に付けていたピアスを撫でた。撫でるのをやめた後、リアナさんは決意したような顔で俺に向いた。


「私は絶対に悠真さんを蘇生するって言ってた!だから安心して!」

 俺はまだ不安だったので、策もなにもなさそうな雰囲気で安心できるはずもなかったが、彼女が本気で俺を励ましてくれていたことが素直に嬉しかった。


(俺をまだ見捨てる気がなさそう)

 それを考えながら自然とリアナさんに向かって微笑んだ。

「頼りにしているぞ」


 その言葉にリアナさんが大きく後ろにジャンプして、顔が真っ赤になった。


「あのね、反則です!男の子が私の部屋でそんな顔で私を見ないでください!恥ずかしい!」

 目を俺から逸らして髪をいじった。

「はあ…アンさんにはもう悠真さんを見せられないよね。偶然にでも見えたら困るし。明日は市場で必要な物を買って、準備が終わったらこの町を出ますね」


 リアナさんの可愛い仕草に目が奪われたから、言葉の方は聞き流してしまった。

「え?もう出るの?」


「そうですよ。だって、アンさんは悠真さんを男として意識してなかったでしょう?」


「いや、俺達が駆け落ちしたと勘違いしたんだね、俺が男だということはちゃんと知ってたはずだし…」

 それを聞いたリアナさんがまた顔を赤くしていた。髪の毛の先で小さな三つ編みを作り始めた。


「それも、この状態で言われると恥ずかしいですよ!でもね、アンさんの場合は絶対男と分かったが、全然認識してなかった!ヴェールを悠真さんの前に外したでしょう?」


「うん、綺麗なおばさんだったね」


「綺麗とか美人とかはシスターには必要ないものと思われているからね。結婚は禁止されていて、大人の男性には顔を見せることも許されていない。だから彼女は、私が教会から逃げ出して悠真さんと付き合っていると勘違いしてた。禁忌を破ったものには罰が与えられる。私は教会と無関係な人間だからいいけど、アンさんはそうはいかないはず。」


「なるほど、固い連中だね」


「そうなのよ。アンさんは可哀そうね。子供の時からシスターだったから初めから敵わない恋って知ってたでしょう」

 そう呟いたから窓に目を向けた。

「悠真さんを男と認識したというよりも、私の事を自分の幼い頃の夢と重ねてたと思います。テオさんと町を逃げ出したかったでしょう」


「なるほど、でもテオさんは今の人生で幸せになりましたね」


「うん、アンさんもそれを分かっているみたいだから、駆け落ちしなかったことには後悔してないと思うが、それでも駆け落ちカップルを応援したいようです」


「アンジェリカさんも何かの形で幸せになって欲しいね。」

 俺の言葉にリアナさんが優しく微笑んだ。だけど、すぐに大きく息を吐きだした。


「あ、もう本当に困る」


「何が?」


「男の人をタンスに閉めておくわけにはいかないでしょう?!今夜はどう寝るべきか?!」

第27話、いかがでしたか?


第28話は都合によって、7月13日になります。


応援よろしくお願いします!


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