十三話
食堂でバルツさん特製の焼き魚定食をつついているとユリウスさんが真っ直ぐやって来た
「お早うございますユズキ様」
「おはようユリウスさん。」
「此方、宜しいですか?」
そう言って私の前の席を指すユリウスさんに頷けば一礼して座った
ふと、ユリウスさんとは食堂で一緒になることが多いなあと思う
顔に出ていたのか、ユリウスさんが微笑む
「恥ずかしい話ながら、我が迷いなく辿り着くのは食堂のみなのですよ」
「え・・・」
「匂いを辿って何とか此処だけは。あとは、バルツがいるからですね」
「バルツさん?」
「えぇ。アイツは我の一族なのです。
大方の魔族は同族の気配に敏感ですよ」
「そう、なんですか。」
「因みにバルツは鬼族の中の青鬼と呼ばれる種で、戦闘力が高いのが特徴です」
「えっと、じゃあユリウスさんは?」
「我は闘鬼という種ですね。鬼族の中で最も魔力が高く戦闘力も高い種にあたります」
表情が余り動かないユリウスさんだが、自分の種に思い入れがあるのか少し口角をあげた
「(表情変わったー。ちょっとだけど初めて見た!やっぱり眼に毒な美形っぷり!)」
「ユズキ様?」
「あ、ごめんなさい・・・」
「いいえ。
そろそろ魔国内の語学、地理の基礎は終わりましたか?」
「なんとか、ですね。鋭意勉強中です」
「そうですか・・・では今日は何故か使い物にならないエルンストに代わって我が六貴族についてお教え致しましょう」
「使い物にならない・・・?」
「えぇ。何やら身悶えており、お目を汚しますので自室に軟禁しております」
さらりと告げられた内容に聞き覚えがありすぎた
私が原因な気がひしひしと
「ユズキ様の責ではありませぬ。アレが感情を抑えきれていないせいです」
又もや表情読まれたらしい
「さて、六貴族についてですがこれは正確には六大種族といいまして、鬼族・蛇族・獅子族・魔龍族・婬魔族・巨人族からなります
六大種族を六貴族と呼ぶようになったのは三代前の魔王陛下で、人族の国を見物に行き気紛れでそう呼び変えたそうです」
「気紛れで・・・」
「魔族は自由奔放な種族ですから
特にそれに当たるのが歴代魔王陛下です。
まぁ呼び名は大して魔族に影響するものではないですから、今に至るまで呼び名を変える動きはありませんね」
「へー」
やる気がないのではなく、なにをコメントすれば良いのか分からないのだ
「では身近な所から行きましょう
エルンストは蛇族で種名は八岐の大蛇です。本性は巨体に八に別れた頭を持つ大蛇です
ラースは獅子族のケルベロスですね彼の本性は御覧になった筈なので省略致します
筆頭侍官のヒューブは婬魔族ですね。美しくその容姿にフラフラ近寄ってきた獲物の精や魔力を糧にします
筆頭侍女のアリスは魔龍族で、蛟という種ですね。龍族の中では弱い筈ですが彼女は生まれもって魔力が高いので、この城で筆頭侍女になることが出来たようです
それから、ユズキ様自ら名を与えられたサラマンダーも龍族です。種として不器用で人型になれない欠点がありますね
」
「ソレ、欠点?」
「魔族は人型になることができる方が魔力使用に幅が生まれます。同じ種族でも人型になることができる方が高位にあたるのです」
正直言って、分かりやすい
というか授業の度に悶えるエルンストさんが異常なのだ
次からはユリウスさんに頼もうか
「光栄ですが、アレでも筆頭なので・・・」
「余り疎かにしたらユリウスさんにトバッチリが行く?」
「下手したら闘いになります。最も筆頭とはいっても同位ですから簡単に負ける気はありませんが」
「わかりました。当面二人に同じようにお願いします」
平和な日本大好きな私としては喧嘩も闘いも対岸の火事状態だったのだ
知りあって、話して、仲良くなった二人が争うなんて、しかも命懸けで・・・見たくないししてほしくない!