十二話
夢を見た
ドロリとした濃密な闇に包まれる何時もの夢ではなく、地球で私が社会人になる前の夢
公立の小中高校を卒業して、大学に入ったのは今時の平成育ちの大半と同じく、そうすることが当たり前だったから
夢はあったけれど、現実は厳しくて
それでも諦められないから自己満足だけど仕事の傍らで追い掛けて
まあ、追い掛けていられたのは入社3ヶ月までだったけど
上司に頭を下げ、走り回り・・・・むしろ駆けずり回り・・・仕事に慣れないといけない事を理由にどんどん夢に費やす時間を削った
仕事を理由に才能の無さを誤魔化して、自分を守りたかった
夢は夢、現実は上手くいかないモノなのだと言い聞かせるようにして結局逃げていた
「・・・なんて、まあ暗い夢を・・・」
逃げたなんてなんて情けないことか
額に手を当て溜め息一つ
まだ暗いが寝れそうにない
ポンと手を叩いて灯りを点ける
「復習でもしとくかー」
言葉に不自由しないが文字は違う
世界の常識や王になりたいと告げてから始めて貰った治世に関する勉強
文字はまだまだ書けないので授業内容は日本語で書き留め、自習の一環として文字の見本を見ながら日本語から書き写す
これがかなり大変なのたが、いい勉強になる
「ん?」
ふと花を植えた鉢の置かれた棚を見ると花のつぼみが倍以上になっている
「何事・・・」
「ふむ・・・これは大変羨まし・・・・いえ、ごほん
どうやらこの花、魔王様がお休みの間無意識に放出している魔力を吸い取っているようです」
夜が明け一番にエルンストさんを呼べば、酷く嬉しそうに部屋にやってきた・・・何がそんなに嬉しいのか甚だ謎だが、それより更に謎なこの花の成長っぷりを見せる
「花が魔力を吸い取るの?」
「そのようですね。興味深いことです」
「今まで無かったことなの?」
「えぇ。というか歴代の魔王様は花を愛でるような方が殆どいらっしゃいませんでしたからね
このようにお傍に置かれる事もありませんでしたので初めて知った次第です」
「へーーー」
じいっと花を見れば蕾が震える
「(そういえば見つめても駄目なんだっけ)」
ふいっと視線を外してエルンストさんを見れば此方を彼もまたじいっと見つめてきていた
破裂破裂と頭の中で呪文のように繰り返し視線をずらせばなにやら悔しそう
「あぁ・・・見詰めて頂きたいのにぃ」
「破裂したいんですか・・・」
「魔王様からいただけるものならばどんなものだって!!」
なんだそのM発言は・・・最初の眩しい美形はどこに行ったんだ
溜息を吐いて、これ以上エルンストさんに構っても埒が明かないしと空腹を訴えるお腹に従順に食堂に足を向けた




