魔王城へ
この後、イレーナはウルスラとエリスに声をかけ、勇者パーティへの参加を呼びかけた。
「久しぶりの勇者パーティだね。数十年ぶりか。
イレーナは参加しないのかい?」
「私は腰痛があって、参加できないの。
残念だわ。今度こそ魔王を倒してきて!」
「腰痛ね。時の流れを感じるね。」
ウルスラがニヤッと笑う。
「あなたやエリスがうらやましいわ。
前回のメンバーだった騎士のオリビエもずいぶん前に引退したの。
今度の勇者は、私が選んだから大丈夫よ。
聖女チェルシーも私が鍛えたから、十分戦力になるわ。」
「そうか。期待している。」
エリスも参加に異存はないようだ。
こうして勇者パーティのメンバーは決まった。
今回の魔王城の旅は、順調だった。
前回メンバーのウルスラ、エリスの実力は衰えを知らず、むしろ前回よりも強くなっている。
本来なら聖女は後衛だが、「撲殺聖女」の異名を持つチェルシーだ。
前衛でも問題ない。
レオナードの剣術も平凡だと言われているが、前回勇者に比べると段違いに強い。
このメンバーと比べると見劣りしてしまうだけだ。
勇者パーティは、襲い来る魔族を倒し、無事魔王城に到達した。
何年も前から魔族国には、そーらーしすてむを使った結界が張られていた。
しかし、パーティが結界に近づくと、なぜか日が陰り、気温の低下とともに結界が消滅した。
「神のご加護ですね!」
チェルシーは喜んでいるが、ウルスラとエリスは警戒した。
「用心しよう。罠かもしれぬ。」
勇者パーティの面々は、警戒しながら魔王城の奥へと進んだ。
魔王がいた。
前回魔王を遠目ながらも見たウルスラとエリスは、気を引き締めた。
前よりも自分たちの力は上がっている。
以前のように魔王の魔力に押されていない。
勇者パーティは魔王と対峙した。
「今回は、以前よりましなメンバーのようだな。
こちらもお前たちにふさわしく、パワーアップして相手をしてやろう。」
魔王は禁呪『性転換魔法』を使った。
みるみるうちに、妖艶な美女がたくましい男性に変わる。
魔王が次の攻撃に移ろうとしたとき、レオナードの声が響いた。
「待ってください!
それは、性転換できる魔法なのですか?」
「そうだ。以前のメンバーより強いお前たちにふさわしいように、
私も女から男に代わって、相手をしてやろうと思ってな。」
「その魔法、私にもかけてください!」
ウルスラとエリスはイヤーな予感がした。
前のパターンとちょっと似ている。
レオナードを見ると、いつの間にか魔王の足元にひざまずいている。
「お願いです、魔王様。
私にその魔法をかけてください。
ずっと女に戻りたかったのです。
私、元々は聖女だったのですから。
ここで下働きでも何でもしますから。」
レオナードは、必死だ。
ウルスラやエリスのあきれ顔も目に入らない。
「撤退するよ。馬鹿らしくてやってられない。
エリス、行こう。
チェルシー、あんたはどうするんだい?」
悩まし気に魔王を見ていたチェルシーは、
「私も撤退します。
一人では、あの魔王に勝てません。
......お師匠様を裏切るわけにはいかないので、戻ります。」
こうしてウルスラとエリス、チェルシーは帰還した。
今回も勇者の寝返りで、魔王討伐は失敗した。




