第二十三話 奪われた贈り物
法廷には重苦しい空気が漂っていた。
裁判長は静かに口を開く。
「申立人、引き続き証人尋問を行う。」
「はい。」
レイモンドは一礼した。
「次の証人を。」
入廷したのは、アルディス公爵家の元配膳係だった。
「エレノアお嬢様のお食事は差し替えられ、代わりに質素なスープと硬いパンだけを配膳するよう命じられておりました。」
「誰の命令ですか。」
「奥様――アンナ様でございます。」
法廷が静かにざわめく。
使用人たちの証言は続いた。
王妃教育の課題や教材を焼き捨てていたと証言する者。
公爵の不在時には部屋へ閉じ込められ、外へ出ることを禁じられていたと証言する者。
そして誰もが、同じ名を口にした。
「アンナ様のご命令です。」
法廷の視線が一斉にアンナへ向けられる。
しかし、アンナはなおも表情を崩さなかった。
その隣では、セシリアの顔色だけが見る見るうちに青ざめていく。
レイモンドは静かに告げた。
「最後の証人を。」
証言台へ立ったのは、かつてアルディス公爵家で働いていた使用人だった。
「私は、王宮から届けられた品をお預かりしたことがあります。」
「何が届けられた。」
「髪飾りとドレス、それから一枚のカードです。」
レイモンドは頷く。
「その後、その品はどうなった。」
「以前より、エレノアお嬢様宛の品はすべてアンナ様へお渡しするよう命じられておりました。」
「ですので、この品もアンナ様へお渡ししました。」
使用人は当時を思い返すように続けた。
「『このドレスは私の物よ。』と、セシリアお嬢様がおっしゃっていたのを覚えております。」
「アンナ様は、その言葉をお聞きになっても否定はなさいませんでした。」
「先日の王宮での夜会では、セシリアお嬢様がそのドレスをお召しになっておりました。」
「髪飾りも、セシリアお嬢様のお部屋へ運ばれておりました。」
法廷内に張り詰めた空気が流れる。
レイモンドは静かに問いかけた。
「カードは見たのか。」
「内容までは読んでおりません。」
一拍置いて、使用人はゆっくりと続けた。
「……ただ。」
「セシリアお嬢様がお読みになった途端、それまで見たこともないほど恐ろしいお顔をなさって……カードを強く握り潰されていたことだけは、今でもよく覚えております。」
法廷は、水を打ったように静まり返った。
アレクシスはゆっくりとセシリアへ視線を向ける。
夜会の日。
婚約破棄の日。
セシリアが身につけていた髪飾りとドレスが脳裏によみがえった。
あの日、自分が信じていた光景は、すべて偽りだった。
セシリアは俯いたまま、小刻みに肩を震わせている。
法廷を包む静寂が、誰も反論できない現実を物語っていた。
次回も言及は続きます!
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