第二十二話 燃やされた真実
「ただ今の証言は、いずれも事実ではありません。」
レイモンドの一言に、法廷は大きくどよめいた。
「何だと……。」
「今の証言が虚偽だというのか。」
アンナは表情を崩さない。
(落ち着きなさい。)
(証拠などあるはずがない。)
隣では、セシリアが不安そうに母を見つめていた。
裁判長が木槌を打つ。
「静粛に。」
ざわめきが収まると、裁判長はレイモンドへ視線を向けた。
「申立人、反証を述べよ。」
「ありがとうございます。」
レイモンドは一礼した。
「まずは、一人目の証人をお願いいたします。」
「
証人を入廷させよ。」
法廷の扉が開き、一人の女性が姿を現した。
「アルディス公爵家元侍女、マリーです。」
マリーは緊張した面持ちで証言台へ立つ。
「偽証は許されぬ。見聞きした事実のみを述べよ。」
「はい。」
マリーは小さく息を吸い、ゆっくりと口を開いた。
「王宮から届いた招待状やお手紙は、奥様――アンナ様がお受け取りになっていました。」
法廷がざわめく。
「エレノアお嬢様宛のお手紙は、すべて奥様へお渡しするよう命じられておりました。」
マリーは一度目を伏せる。
「私は、王宮から届いたお手紙を、アンナ様が暖炉へくべられるところを目にしたことがございます。」
法廷の空気が張り詰めた。
「……一度や二度ではございません。」
重苦しい沈黙が流れる。
アンナは静かに一歩前へ出た。
「侍女一人の証言だけでは、事実とは申せません。」
落ち着き払った声が法廷に響く。
「その者は昔からエレノアを殊のほか慕っておりました。主人を思うあまり、記憶を都合よく解釈している可能性もございましょう。当事者に強い私情を抱く者の証言だけで、事実と断じるのは早計ではないでしょうか。」
裁判長はレイモンドへ視線を向けた。
「申立人、この反論に対し、他に示すものはありますか。」
「ございます。」
レイモンドは静かに答えた。
「私も、一人の証言だけで終わらせるつもりはありません。」
従者が木箱を運び、裁判長の前へ置く。
蓋が開かれると、中には焦げた羊皮紙、砕けた封蝋、焼け残った手紙の切れ端が丁寧に収められていた。
法廷中の視線が、その箱へ集まる。
「これは……。」
裁判長が息を呑む。
レイモンドは静かに告げた。
「暖炉から回収したものです。」
アンナの瞳が、初めてわずかに揺れた。
「王宮からエレノアへ送られた手紙は、届かなかったのではありません。」
一拍置き、法廷全体を見渡す。
「届く前に、アンナによって焼き捨てられていたのです。」
焦げた羊皮紙を見つめたまま、アレクシスは掠れた声を漏らした。
「では……私がエレノアへ送った手紙は、一通たりとも届いていなかったということか。」
少しずつ読んでくださる方が増えて嬉しいです
次回さらに真実が明らかにされます!




