表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、すべては九年前から始まっていました  作者: 若松りこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/31

第二十二話 燃やされた真実

「ただ今の証言は、いずれも事実ではありません。」


レイモンドの一言に、法廷は大きくどよめいた。


「何だと……。」

「今の証言が虚偽だというのか。」

 

アンナは表情を崩さない。

(落ち着きなさい。)

(証拠などあるはずがない。)

 隣では、セシリアが不安そうに母を見つめていた。

 

裁判長が木槌を打つ。

「静粛に。」

 ざわめきが収まると、裁判長はレイモンドへ視線を向けた。

「申立人、反証を述べよ。」

「ありがとうございます。」

 レイモンドは一礼した。


「まずは、一人目の証人をお願いいたします。」

証人を入廷させよ。」

 法廷の扉が開き、一人の女性が姿を現した。

「アルディス公爵家元侍女、マリーです。」

 マリーは緊張した面持ちで証言台へ立つ。

「偽証は許されぬ。見聞きした事実のみを述べよ。」

「はい。」

 マリーは小さく息を吸い、ゆっくりと口を開いた。

「王宮から届いた招待状やお手紙は、奥様――アンナ様がお受け取りになっていました。」

 法廷がざわめく。

「エレノアお嬢様宛のお手紙は、すべて奥様へお渡しするよう命じられておりました。」

 マリーは一度目を伏せる。

「私は、王宮から届いたお手紙を、アンナ様が暖炉へくべられるところを目にしたことがございます。」

 法廷の空気が張り詰めた。


「……一度や二度ではございません。」


 重苦しい沈黙が流れる。

 アンナは静かに一歩前へ出た。

「侍女一人の証言だけでは、事実とは申せません。」

 落ち着き払った声が法廷に響く。

「その者は昔からエレノアを殊のほか慕っておりました。主人を思うあまり、記憶を都合よく解釈している可能性もございましょう。当事者に強い私情を抱く者の証言だけで、事実と断じるのは早計ではないでしょうか。」

 裁判長はレイモンドへ視線を向けた。

「申立人、この反論に対し、他に示すものはありますか。」

「ございます。」

 レイモンドは静かに答えた。


「私も、一人の証言だけで終わらせるつもりはありません。」


 従者が木箱を運び、裁判長の前へ置く。

 蓋が開かれると、中には焦げた羊皮紙、砕けた封蝋、焼け残った手紙の切れ端が丁寧に収められていた。

 法廷中の視線が、その箱へ集まる。

「これは……。」

 裁判長が息を呑む。

 レイモンドは静かに告げた。

「暖炉から回収したものです。」

 アンナの瞳が、初めてわずかに揺れた。

「王宮からエレノアへ送られた手紙は、届かなかったのではありません。」

 一拍置き、法廷全体を見渡す。

「届く前に、アンナによって焼き捨てられていたのです。」

 焦げた羊皮紙を見つめたまま、アレクシスは掠れた声を漏らした。



「では……私がエレノアへ送った手紙は、一通たりとも届いていなかったということか。」


少しずつ読んでくださる方が増えて嬉しいです

次回さらに真実が明らかにされます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ