12. 韓国までの反省タイム
イラさんに電話を入れた。
どこから話したらよいものか、頭が痛いが、事態がここまで大きくなってしまったのだ。話さないわけにはいかない。
だが、電話に出たイラさんの第一声は拍子抜けするものだった。
「あら、全部知っているわよ。ディアナと連絡を取っていたし、彼女に取り次いでもらって黒岩教授たちとも連絡していたから。」
「・・・。」
俺の知らないところで女性同士で仲良くおしゃべりをしていたらしい。黒岩教授たちとすっかり仲良くなって、イラさんが日本に来た際のおすすめスポットや住宅、留学情報、果ては公安の佐竹から俺の黒歴史まで教えてもらったというではないか。
女の情報網、怖え。
「あのさあ、仲良いのはいいけど、情報がどこかでもれたらどうするんだ。そうでなくても現に俺たち、テロリストに襲われたんだぜ。」
「あら、私はそんなへまはしないわ。若い子たちはそうじゃなかったみたいだけど。」
「・・・そういえば女性陣とは食事時以外、顔を合わせていなかったから、それ以外の時間は何をしているのか知らなかったな。」
若い子たち、ディアナとアザミはともにトップレベルのVRアイドルとインフルエンサー。
この二人が一緒になったら何が起こるのか、なんとなく想像はつく。
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電話を終えて後方車両へ行くと、あちらこちらに打痕と銃創が残り、黒岩教授が抑えていた二つの個室のうち一室で、ベッドに座ったディアナとアザミがしょげかえっていた。
二人の前には仁王立ちの佐竹、ものすごい勢いでパネルのキーボードにテキストを打ち込んでいる黒岩教授。
黒岩教授はおそらく始末書を書いているのだろう。
「えーっと、お取込み中、非常に恐縮ですが。何がどうなってこうなったのか、説明して頂けるとありがたいんですが・・・。」
慎重に言葉を選びながら尋ねる。
ふうっとため息をついて佐竹は向き直り、これまでの経緯を説明してくれた。
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ことの発端は極東沿岸諸国に入る前、アザミからディアナへ連絡が入ったことから始まった。
二人は以前に仕事で共演したことが一回だけあり、お互い外国出身で日本で育った養子と孤児ということから意気投合し、連絡先を交換していたのだ。
自分を搾取する親族から逃げたがっていたアザミに対し、ディアナが持ちかけたのは救助対象者のふりをしてディアナが乗っている車両に乗せてもらい、日本へ逃げ帰ろうというものだった。
成人済みのアザミが親族から離れても法的に問題はなく、日本国籍保持者なので、政情不安な極東沿岸諸国で保護しないわけにはいかないだろう。
「しかし無茶な作戦を考えたな。」
「本当に!せっかくのその立派な頭脳があるのに何で変な方向に思い切りがいいのよ!」
佐竹はぷりぷり怒っている。
「安全な作戦が立てられないならせめて大人を頼りなさいよね。確かに私たちはあなたほど頭はよくないかもしれないけど、少なくともコネと権力と権限はあるわよ!」
最後!無茶苦茶だ!
「おまけにアザミを保護した後も列車内でおとなしくしていればいいのに、コラボ配信なんかして!」
「あれは本当は録画して、日本に着いてから上げる予定だったのよ!アザミが間違えて配信ボタンを押すから・・・。」
「ちょっと!私のせいにする気?!」
二人は喧嘩腰だ。
「二人ともいい加減にしなさい!おかげで「アムールの紅い虎」に場所がばれちゃったじゃないの!」
「向こうが勝手に間違えて別の列車に行ってくれたおかげで五人しか来なかったけどね。」
ディアナが聞こえないように小さな声でぼそっとつぶやく。いや、聞こえているから。
「来たのはたった五人でも私は人質に取られたんだよ!」
アザミも小さな声で言い返す。だから聞こえているって。
まとめると、極秘移送中のディアナが禁を破って外部と連絡を取り、アザミの逃亡を助けた。
しかもかなり強引なやり方で日本国政府の保護を取り付けた。
それだけでも大問題なのに危険地帯でコラボ配信などしてしまったためにテロリストに居場所をかぎつけられ、今回の騒動に至る、と。
「あなたたちの言うとおり、テロリストが勝手に間違えてくれて、あの五人はこの列車にあなたたちが乗っていることを知らなかったから、今回は運よくおとがめなしになったわ。」
「運よく」という部分を強調する佐竹。
「とにかくもう、日本につくまで電子機器は没収、いいね。」
佐竹はそう言い放ち、二人から「えー!」「死んじゃうー!」などと悲鳴が上がるが、甘いな。この二人、体内に埋め込んだマイクロチップで動画配信なんてどうとでもできてしまうだろう。まあそれでも当面はおとなしくしているだろうが。
「もう一つの列車もよく助かったな。極東沿岸諸国の政府軍ってそんなに強かったのか?」
「違うね。たまたま運よく、韓国軍と合同演習をしていた帰りのモンゴル陸軍の一個分隊が同乗していた。一網打尽だってよ。」
始末書を打ち込みながら黒岩教授が答えた。
マジかよ。モンゴル人、つええ。
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一方その頃、ラウンジ車両ではモンゴル人ニキが何者かと音声通話をしていた。
「何?そっちの列車には三十人もテロリストが来たのか!俺も休暇中じゃなかったらそっちに行ったのに。俺?俺の方はたったの五人よ。それも三人は俺が行く前に・・・なんだっけ、あの日本人の女教授の名前・・・まあいい。とにかく彼女が制圧しちまった。日本の女って怖えな。」




