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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第7話:人格消滅!? 二人の零号の行方

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第17節:俺にゃ理解できねーな。


「何なのよアンタは!」


 アヤが、これまで見たこともないような形相でゴウキを睨み付けていた。


「ユナが戻ってきたと思ったら、カオリさんもいなくなったのに! この上、お兄ちゃんが別の奴に入れ替わったって言われて、誰が納得するのよ!」

「別に納得しよーがしなかろーがどうでも良いが、解除薬は作れ」

「なら、お兄ちゃんを返しなさいよ! 今すぐ!」


 ゴウキは部屋の入り口に立ち、布団の上で枕を抱えるアヤを呆れたように見ながら頭を掻いた。


「あのな。コウが引き篭もってんのは自分の意思だ。確かに最初は主導権を奪ったが、俺はその後一切コイツを拘束してねぇ。戻ろうと思やいつでも戻れるんだ。コウが出てこねーのは、コウ自身の問題だよ」

「え……」

「コイツは、ミツキを殺しかけた。力に意識を呑まれて暴走したんだ。敵の介入があったのは事実だが、コイツは自分の意思の弱さに打ちのめされてんのさ。力を得て、舞い上がっていた自分の弱さにな」


 ミツキは驚き、アヤは言葉を失っていた。


「うそ……」

「そうなんすか?」


 彼の問いかけに、ゴウキはうなずく。


「大体、コウが出てこねー事は、てめーが解除薬の開発をしねー理由にはなんねーだろうが」


 ゴウキは、容赦無くアヤに事実を告げる。


「もし仮に、俺がコウを拘束してたところで、だ。そもそもこうなったのは誰のせいだと思ってんだよ」

「……どういう意味?」

「コウが零号に覚醒したのは」


 ゴウキが、アヤに指を突きつけた。


「てめーのせいだろうが。忘れたのか? ハジメちゃんが最初にフラスコル・シティに姿を現したのは、何でなのか」


 アヤがしばらく押し黙った後、極限まで目を見開いた。

 ひゅ、と彼女の喉が鳴る。


「……ハジメさんが、フラスコル・シティに行った理由?」

「EX.gの大元を追ってたんだったね、確か」

「そうなん?」


 ミツキも勿論、黒の一号がフラスコル・シティに現れた、というニュースは知っていた。

 あの事件のニュースは、全国規模で報道されていたのだ。

 しかし、そもそもフラスコル・シティに向かった理由までは聞いていなかった。


 ヤヨイが言った答えに、ゴウキはさらに言葉を被せる。


「そう。あのクスリさえなきゃ、コウとハジメちゃんはあの時に出会う事はなかった。ハジメちゃんはコウを、俺の転生者を探していたからいずれは出会ったかも知れねーが、直接のキッカケを作ったのはてめーだ、アヤ」

「EX.gは、あんたが理論を立てたんだったよね。それを【サイクロン】が悪用した」

「お前はコウに力を与えようとした。非適合者だったコウを自分勝手に救おうとして、逆に今の状況に追い込んだのは誰だ? コウがハジメちゃんと出会い、コウが零号になり、そして俺が出て来たのは」


 アヤの顔色は、青を通り越して真っ白だった。


「……私、が」

「そう、元凶はお前だ。ハジメちゃんたちは優しかっただろうが、俺は違う。元々てめーは罪人なんだ。てめーのせいで新たな寄生殻は生まれ、姉貴のシュリも死んだんだろうが。それを償うために、解除薬を開発してんじゃねーのかよ。責任転嫁も大概にしろよ」


 ゴウキはアヤに歩み寄ると、その左肩を蹴って足の裏で壁に向かって押さえつけた。


「っ……!」

「今、この時に。解除薬は必要とされてるんだ。色んな人間が力を合わせる為にな」


 体を折って眼前でアヤの顔を覗き込みながら、苛烈な目でゴウキは睨みつける。


「良いか。ハジメちゃんが解除薬を必要とするなら、その為に過労死しようが解除薬を作り出すのが、てめーの役目だ。お門違いの文句言ってる暇があったら、さっさと貧乳と装技研へ行け」


 ゴウキは自分の胸を右手で握りしめて、足を退けた。


「てめーはただ守られるお姫様じゃねぇ事を、ちったぁ自覚しろや」


 張り詰めた空気。

 それが引きちぎれて爆発する前に、ヤヨイとミツキの背後から声が掛かった。


「あー、取り込み中に済まんがね」


 振り向くと、そこにミツキにとって懐かしい人物が立っていた。


 初老の男だ。

 くたびれたスーツに、柔和な顔。


 しかし意思の強さを示すように、眉間にもくっきりとシワを刻んだその男は。


「え……おやっさん?」

「鯉幟(こいのぼり)さん……」

「おう、ミッちゃん、それにヤヨイも。久しぶりだな」


 軽くミツキの肩に手を置いて二人の間を素通りすると、おやっさんはゴウキに声を掛けた。


「あー、ゴウキさん、でしたかな? 初めまして」

「司法局の刑事か。フラスコル・シティから遥々と何の用だ?」

「ああ、コウくんの記憶があるんでしたな。いえ、坊(マサト)の事で、トウガくんとハジメに呼ばれましてね。何やら揉めているようなので、少しお節介を、と思いまして」


 おやっさんは、複雑な色を浮かべた笑みを作り、首をかしげる。


「アヤさんに法の裁きを受けさせるための手錠を掛けたのは……彼女を罪人にしたのは、私ですからな」

「はん。流石ハジメちゃんのお仲間だ。身内に甘い」

「そう、責任がありますのでね。尤も、彼女が私の事をどう思っているかは分かりませんが……あなたのやり方ばかりが、人を動かす為に正しい訳ではないのですよ。発破を掛けて動けるのは、強い人間だけです」

「俺にゃ理解出来ねーな」

「でしょうね。あなたは、0号ですから。……少し、二人で話をさせていただいても?」

「好きにしろよ。俺は、言いたいことは言った」


 おやっさんはうなずいて、ゴウキと入れ替わりに部屋に入ると。


 ゴウキが出るのを見て、襖を閉めた。

 

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