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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第6話:甦る死者!? 黒の0号!
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第7節:目覚めよ、その魂。


 天から降る母体だった欠片が、黒の一号の外殻を叩き、細かい音を立てた。

 ゆっくりと立ち上がる黒の一号に、エータ・マザーが感嘆の声を漏らした。


「凄まじいな……その複製体は、オリジナルと同等の能力と知性を持っていたのだが」

「状況が違えば戦況も変わる。いかに襲来体母体であろうと、我ら全員を一人で相手にして、そう易々と勝利を得られるとは思わないことだ」

「そうだな、見くびっていたのは認めよう」


 しかし、エータ・マザーは少しも焦った様子は見せない。


「だが、貴様にはこいつらを殺すことは出来まい。ここから先はどうするのかな?」


 最早完全に意識を奪われている様子のマサトと、体を乗っ取られているエータ。


「試してみるか?」


 黒の一号が問うのに、戦況を見定めていたパイルは言った。


「殺せないと思うのか? マザー……お前はこちらにいるという事は、向こう側は安全だという事だ。ーーーここで、お前諸共ニヒルとエータを殺したところで……」

「ほう、何故安全と言い切れるのかな?」


 笑みを含んで、エータはパイルに顔を向けた。


「ここにいる私は、マザーのカケラだ。エータについてこちらに来て力を蓄えはしたが、私の本体は依然として向こう側にあるとは思わないのか? ここでニヒルを殺せば、輪廻の円環は閉じる事出来なくなる。つまり、こちらの私が仮に負けても、向こう側の私は勝利を手に出来る訳だ」

「っ……戯言を」

「そう思うなら、やればいい」


 パイルは、エータ・マザーの言葉を内心で否定仕切れなかった。

 向こう側の状況を知る術は、パイルにはない。

 本当にそうである可能性もあるのだ。


 手詰まり。


 そんな言葉がパイルの頭を過る。

 反論を口に出来ないパイルを置いて、エータ・マザーは黒の一号に問い掛けた。


「貴様はどうする、黒の一号。私を呼び寄せた修羅よ。他の世界を見捨ててでも、私を滅してみるかね?」


 黒の一号は。

 まるで迷いのない様子で、両拳を握り込んだ。


「言っただろう。ーーー邪悪は、滅ぼす」


 ゆら、と黒の一号の姿が揺らいだかと思うと、赤い双眼を輝かせて、エータ・マザーに肉薄した。


「その為に、いかなる犠牲を払おうとも、だ」

「っやめろ!」


 パイルの叫びを無視してエータ・マザーに殴りかかった黒の一号だが、エータ・マザーはあっさりと一撃を躱す。

 その背中を急降下したマサトが襲うが、即座のフォローするように回り込んだ参式がナイフで刃を受けた。


「ははは! 言葉の力強さの割には動きにキレがないな!」


 エータ・マザーが両手に構えた二門の殻弾機関銃で無造作に弾丸をばら撒くと、黒の一号と参式が散開した。


 後退した参式を、マサトが追おうとする。

 が、そこで。


 びくん、とマサトの動きが止まった。


「? どうした?」


 エータ・マザーの問いかけに答えず、マサトは崖の上に視線を動かした。

 つられて全員がそちらに目を向けると。


 そこに、コウが立っていた。


 彼は。

 今まで見せたことがないような、自信に満ち溢れた傲慢な笑みを口元に浮かべて。


「よう、見てらんねぇな、お前ら。揃いも揃ってカスばっかか?」


 耳を疑う暴言を、吐き捨てた。


※※※


 コウは。

 移り変わる状況を、呆然と見ていた。


 襲来体の増援と。

 ミツキの決意、ケイカの想い。

 現れた黒の一号と、力を取り戻したジン、花立。


 ーーー俺は。


 自らの行いを振り返り、コウは自失状態だった。

 守るべき力で。

 仲間を傷つけた。


 ケイカに、言われたのではなかったか。


 力を、制御出来なければ。

 いずれ、その力は大切な人を傷付けると。


 何故忘れてしまっていた。

 過ぎた力を得て、傲慢になり過ぎていた自分に。


 コウは。

 かつての自分同様、仲間を、身内を守ろうとした少女を、殺そうとした自分に。




 コウは……絶望していた。




 ーーーヤレヤレ。


 耳に、囁きが聞こえる。

 それはコウを掻き立てていた、零号装殻の声によく似ていたが。

 本能だけではない意志を、感じさせる声音だった。


 ーーーズット寝テルツモリダッタノニヨォ。オ前チョット、俺ト代ワレ。


 不意に。

 コウの体が、硬直する。


 感覚をすべて失った、その感じは。

 一度ケイカに体を貸した時と、同じ感覚。


 自らを自由に出来ない状態であるにも関わらず。

 コウの体は、勝手に立ち上がった。


「エータ……」


 崖下を見下ろし、戦場を見るラムダの横に立ち。

 驚いたようにこちらを見上げる彼女に、笑みを見せてから。


 コウを操る誰かが、口を開いた。


※※※


「よう、もう一人の〝俺〟。ちょっと無様過ぎねぇか?」


 『コウ』は、自分を見上げるマサトに問い掛ける。


「ゴミに良いように扱われて、情けねぇ。それでも装殻者か」


 嘲る言葉ような、その言葉に。

 無表情に黙ったままのマサトが、ぴくり、と眉を動かした。


「コウ……?」


 ミツキは、彼の様子に違和感を覚えて問い掛ける。

 その疑問を肯定するように、『コウ』は首に手を当てて、ごきりと鳴らしてから答えた。


「コウじゃねぇよ。俺は」


 彼が続けた言葉は。

 ひどく禍々しく、ざらつくような響きをもって、ミツキの耳に届いた。


「俺は、南原(ナンバラ)ゴウキ、だ」


 聞き覚えのないその名前に。


「何……!?」


 ただ一人、黒の一号だけが反応した。


 『コウ』……ゴウキと名乗った男は。


 右の親指で、腹を捌くように横に一線を描き。

 次いで地獄の底まで叩き落とすように、顔の前からまっすぐに親指を振り落とした。


「ひゃはは。―――纏身」


 親指の軌跡で描かれた逆十字(アンチクロス)に反応し。

 零号装殻が、ゴウキの手足のみを装殻化した。


「さぁ、行くぜ?」


 瞬間。

 ゴウキの姿が掻き消えたかと思うと、全く別の場所―――エータ・マザーの立っている位置で打撃音が響いた。

 ミツキが視線を移すと、そこには反応すら出来ないまま顎を蹴り上げられて吹き飛ぶエータ・マザーと。


 軽く足を振り上げた姿勢から、ゆっくりと足を下ろすゴウキの姿があった。





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