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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第6話:甦る死者!? 黒の0号!

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第1節:絶望の足音


 ケイカが崖下にたどり着くと、ジンを肩に担ぎ上げた参式が目の前に降り立った。


「花立さん!」

「あぁ、跳ぶぞ!」


 参式は呼び掛けただけでケイカの意図を理解し、崖の上へと移動する。

 その参式に、マサトが崖に沿って飛行しながら追従した。


 崖の上へ行くと、そこには惨状が広がっていた。


 無傷のシープが崖に背を向けて立ち、彼の左手側には、先行したパイルが立っている。

 そして彼のすぐ側にはボロボロになって倒れ伏すエータ。


 パイルの右手側にはケイカらが居て、崖の外には滞空するマサト。

 ケイカらの背後には、倒れたラムダとミツキ、そして呆然と立ち尽くすコウ。


「ミツキくん!」


 参式から離れたケイカが走り寄るが、ミツキには反応がなかった。

 そこで、笑い声が響き渡った。


「くく……くくく……ひゃは、げひゃひゃ……ひゃぁはははは!」


 昂っていく笑い声は、顔を醜悪な笑みに歪めたシープから放たれていた。


「滑稽ですねぇ、装殻者ども! ひゃははは!」


 道化のように芝居がかった仕草で両手を広げ、シープが言葉を吐き出す。


「いやぁ、実に面白いっっ! 貴様らは実に滑稽でしたぁあああははっはァ! 憎むべき仇敵に、仲間が成り代わっているとも知らずに踊らされェ!」


 シープの言葉に応えて、エータがむくりと体を起こした。

 明らかに生命の危機とも思えるほどの損傷にも関わらず、まるでダメージを受けていないかのような動きだ。


「やっぱりか……! テメェ、エータじゃねぇな……!?」


 パイルがグレイヴを構えるのも意に介さず、エータが無言で正十字を切ると。


『認証(インストール)』


 補助頭脳のそれに似た歪んだ音声が響き、エータの損傷箇所からボコボコと鉱物のような岩が湧き出し、損傷を埋めて無傷の状態へと戻る。


「げひ、まんまとハメられ、お互いに争いあってネェ! へひゃ、実に実に実にいい気味だァ! 特に北野コウォ、そして黒の伍号ォ!」


 コウは反応せず、ジンは参式に抱えられたまま頭だけをシープに向けた。


「ニヒルの洗脳は、じぃつぅにぃ楽でしたよかひゃひゃ! 無防備にその体を晒して眠ってましたからねェ! お仲間を奪われて、そいつに痛めつけられるのはどうでしたかぁ、伍号ォ! そしてぇ!」


 シープは、動かないコウに指を突き付けた。


「0号同士のコア共鳴でェエ! 敵に踊らされて暴れまわったあげくにぃ、ひゃは、仲間を手に掛けた気持ちはどんなものですかァ、北野コウォ!」

「何ですって……!?」


 コウの暴走を仕組まれたものだと言うシープに、ケイカは怒りを覚えた。

 ミツキを、傷つけさせた黒幕が自身だと告白したシープは、天を振り仰いで愉快でたまらない様子で叫び続ける。


「がひゃひゃ、私を殺してくれたお前らの無様な喜劇はぁ! あひゃ、最高の見世物でしたよぉ! 笑いを堪えるのにどれほど苦労した事かぁひゃーっひゃっひゃ!」


 狂気。

 ケイカは、シープから感じる圧倒的な狂気の気配に、嫌悪感を覚えた。


 完全に壊れている。

 何故、こんな奴が世の中に存在するのか。


 ―――捨て置くわけにはいかない。


 でも。

 ケイカは状況を見る。


 こちらで戦えるのは、参式だけ。

 ジンとミツキは怪我で。

 コウは、心が折れたように立ち尽くしている。


 自分を纏える者がいないケイカは、この場では役に立たない。


 パイルがどう出るかは分からないが……。


 相手には〝ニヒル〟である操られたマサトと。

 無傷のエータ、それに未だ装殻すら纏っていないシープ。


「……さすがに、分が悪いな」


 そう、ぽつりと聞こえた参式の厳しい声音が、現状を物語っていた。

 しかも。


「げひひ、分が悪い!? そもそもお前らに勝ち目なんか最初からないんだよォ! げひゃ、母なる者は遂にこの地に至ったァああ!! 絶望を知れェ!! ゴミクズ共ォ!」


 天から。

 赤い塊が、轟音を立てて崖の上に一列に落下した。

 丁度、ケイカたちが立つ場所を、シープを中心とした半円で囲むような布陣。

 大きさは、人一人分程度の隕石の欠片が、十個。


「……まさか」


 その鉱物に、ケイカは忌まわしい記憶を甦らせる。

 血管が浮き出たような脈が走る、その隕石は―――!


「さぁ……真の宴の始まりだァ!!」


 ぎゅるり、と捻れるように全ての鉱物が粘土の如く形を変えて。

 瞬きする程の間に、人に似た姿を形作る。


「……母体複製体(コア・コピー)が10体、か。《星喰使》とやらは、襲来体よりも骨がある相手のようだな」


 花立と違い、ケイカには言葉を発する事すら出来なかった。 

 本来なら、三体以上は同時に出現しない筈の母体複製体。

 しかも現れたそれらの姿は、さらに衝撃的だった。


「あれは……俺たちの……!」


 パイルが見ているのは、隕石が変質したのっぺりとしたシルエットの青い装殻。


 〝神威の槍〟パイル・イプシロン。


「そんな……何で」


 座り込んだまま、震える声で言ったのは、ラムダ。


 ライムとグリーンの外殻を持つ瓜二つの装殻は。

 〝神威の両翼〟ロッカス・ラムダ、そしてプサイ。


「俺の、装殻まで……!?」


 参式から地面に降ろされて膝を付いたジンの近くには、黄色の外殻を持つ一本角の装殻……〝憤怒の雷神〟黒の伍号が。


「ケイカと、俺も、か」


 赤、青、黒、緑。

 その四種の色合いを持つ四体は。

 炎撃(フレイム)、水撃(アクア)、地撃(グランド)、風撃(ストーム)の纏殻形態(ライドフォーム)。

 〝偽る魔性〟―――黒の肆号。


 横には、マッシブな深紅の外殻を持つ装殻者。

 〝王鬼〟たる参式。


「何で……『対抗者(アンチボディ)』であるあの人は、襲来体には模倣出来ないって……」


 喘ぐように言うケイカの視線の先。

 左右に立ち並ぶ赤い参式の横に立つのは、艶のない黒の外殻を持つ装殻者。

 ケイカらの総帥にして最初の人体改造型装殻(シェルベイル)。


 〝正義を騙る修羅〟―――黒の一号。


 ただでさえ絶望的な状況の中。

 抗いがたい脅威が、ケイカらの目の前に広がっていた。 

 

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