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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第4話:覚醒! 零号装殻者!
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第14節:裏切りの理由


「エータ」


 マサトは彼らを後ろに庇うように立ち、声を掛けた。


「潜水艦は既に安全圏へ抜けた。撤退だ」

「ああ」


 エータがうなずいて踵を返そうとするのに、リリスが反応した。


「ダメ。逃がさない」


 言いながら、リリスは腕を前に振り出してブレードスラスターを一直線に射出した。

 対応したのは、ラムダだ。

 こちらは両腕を鋭く交差させるように前に振るって、弾幕のようにブレードを展開する。


「させないわよ!」


 お互いのブレードが複数、宙で軌道を変えながらぶつかり合う。

 パイルは、迎撃に集中するラムダを抱えてエータの後を追おうとして、一瞬ミカミに目を向けた。


「待ちなさい!」


 ミカミが声をかけるが、パイルは答えずにラムダを抱えて走り去る。

 リリスに合わせて飛び出した参式とコウ、それにミツキは、マサトが牽制した。


「手を出すな。お前たちには、もう打つ手はない」


 参式の拳を振動刃の腹で受け、コウとミツキに対してはフェザースラスターで出端を挫く。


「マサト……何故、お前が?」

「こっち側についた、と言うよりは、本来、俺はこっち側らしくてね」

「目的は何だ? ただ裏切った訳ではあるまい」


 参式は拳を弾かれると、体を捻って回し蹴りを放った。

 それを軽く頭を逸らして避けるマサトの前髪を、風圧が揺らす。

 特にまばたきもしないで、彼は目の前を過ぎ去る足を見つめていた。


「……アイリの体の事は知っているだろう? 目的は、コアの移植だ」

「本当の人体改造型になる気か。だがユナに秘められたコアは移植するだけで力を発揮する類いのものではない。仮に移植しても」

「それが問題ないんだよ。花立トウガ。……俺が、いや、正確にはアイリがあのコアの『器』だ。それが分かったから、俺は取引に応じた」


 参式が動きを止めた。

 マサトも攻撃しないが、フェザースラスターが周囲を威嚇するように飛び回っていて、コウたちは手が出せない。


「まさか……」

「知らなかったんだろう? だから、あなたを恨んではいない。でも、知った以上は俺はこっちに付く」

「……アイリは、それを承諾したのか?」


 低い参式の問いかけに、マサトは悲しそうに目を伏せた。


「いいや。だから、今は眠ってもらっている。全てが終わるまで」

「勝手な奴だ」


 マサトが、烈しい目で参式を睨みつけた。


「勝手だと? ……そうかもな。でも俺にとっては、アイリが全てだ。お前らでは、アイリを救えなかった」


 マサトの物言いに、誰かが反論する前に、彼は畳み掛ける。


「あいつは、表面上はなんでもない振りをしていても、自分の死を恐れていた。知ってるか? あいつが何度、それに耐えられなくて一人で泣いたか。それでも自分の運命を受け入れて、戦い続けていたあいつを」


 ギリ、とマサトが歯を噛み締める。


「……あいつを救うなと、お前はそう言うのか!?」


 人工的に作られた存在とは思えないほどの感情の込もった、マサトの言葉に。

 コウは彼の必死さを感じ取った。

 さっきまで、あれほど敵を倒せと騒ぎ立てていた零号装殻までもが、彼の言葉を聞いて鎮まる。

 しかし参式は、それでも黙らなかった。


「それがアイリの意思なら、俺は何も言わない。だが、違うんだろう? 死を恐れていたのは、事実なんだろう。それでも、人を……幼い子どもを犠牲にしてまで生きたくはないと、あいつならそう言う筈だ」


 どちらの側も、正しいのだろう。

 マサトも参式も、どちらもアイリの心を思いやり、考え。

 しかし、道を違えたのだ。


「アイリにはもう……待てるだけの時間がないんだ」


 それは、アイリをどちらが大切に思っているか、という問題ではない。

 どんな犠牲を払ってでも、アイリに生きていて欲しいと願うマサトと。

 生き残った後の、アイリの心を案ずる参式と。


「あの子を犠牲にしない、努力はするさ。アイリを悲しませるのは、俺だって本意じゃない。それでも、俺は」


 二人はお互いの言葉を理解している。

 理解している故に、分かり合えないのだ。


「俺は、俺自身が恨まれても憎まれても、あいつに生きていて欲しいんだ。馬鹿で、抜けてて、辛い目に遭って。そんなあいつを、俺はずっと、誰よりも間近で見てきた」

「……マサト」

「あんなに人のために必死になれるのに、見返りを求めないあいつが、俺は一番大事だ。でも、俺が一番大事に思うあいつは、自分自身の気持ちは、ちっとも大切にしないんだ……!」


 マサトは。

 怒りにその顔を染めながら、まるで泣いているように見えた。


「だから俺がやる。俺が、あいつ自身を救う。……無駄話は、これで終わりだ」


 言って、マサトは参式に背を向けた。


「俺も帰還する。追うなよ。参式、コウ。それにミツキ。……特にコウ。お前も、ラムダは殺せてもアイリは殺せないだろう?」


 図星を突かれて、コウはフルフェイスの下で顔を歪めた。

 コウには、マサトを無傷で捕らえる事は出来ない。


 参式ならばあるいは可能かも知れないが、彼自身も心が揺らいでいるだろう。

 迷いのないマサトと迷っている参式では、おそらくはマサトに分がある。


 今、マサトと逃がすことはユナを危険に晒すのと同義だ。

 だが彼を捕らえたとしても、今度はアイリが死ぬかもしれないのだ。


 結局、飛び去るマサトを。

 コウたちは、見送る事しか出来なかった。

 重い沈黙が、コウたちを包み込む。


「……ミカミ?」


 呟いたのは、リリスだった。

 コウが、黙ったままだったミカミに目をやると。


 そこには、装殻を解除して倒れ、苦しんでいるミカミの姿があった。


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