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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第5話:連続励起!? 暴走する零号!

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第1節:フリード・コントローラー

 

 装技研の救護室前で待っていたコウは、救護室から出てきたケイカに尋ねた。

 トウガとジンも、ケイカと一緒に出て来るのを見て、コウは二人に声を掛けた。


「ミカミさんは……?」

「今は落ち着いているわ。意識もあるし、このまま何もなければ良いんだけど……」

「何で急に倒れはったんですか?」


 歯切れの悪いケイカに、次にミツキが質問した。


「そう言うと思って、ミカミに話していいか聞いたわ。彼女の個人的な事情になるし……リリスも、いい?」


 コウらと共に待っていたリリスに、ケイカが問うと、彼女は静かにうなずいた。


「構わない。……良くはないかもしれないけど」


 リリスも彼女にしては珍しく、何か躊躇いがありそうな口調だった。


「ミカミはね」


 ケイカは、少し間を置いてから告げる。


「人体改造型装殻者であり、同時に不良装殻者(ベイルダー)なの」

「人体改造型……!?」

「ミカミさんも《黒の装殻》なんですか!?」

「違う。人体改造型ではあるが、彼女は《黒の装殻》ではない」


 コウらの驚きは、花立によって即座に否定された。


「でも……人体改造型は《黒の装殻》以外には存在しないと」

「表向きはな。しかし実際には居る。PL社の三人に加えて、ミカミ、リリス。他にもまだ、数名」

「【黒殻】以外に、その技術を持つ者が……?」


 世界に、人体改造型は五人だけ。

 それが世の中の共通認識だ。

 人体改造に関する技術を秘匿したから、【黒殻】は危険な組織とされたのではなかったか。


「情報操作は、民衆を扇動、操作するための常套手段だよ。実際、大阪隕石の再活性化は秘匿されただろ。逆にフラスコル・シティの時は逆に民衆を煽られてあんな事になった。真実を告げてパニックを誘うよりも、隠しておいた方が都合が良い場合が、世の中にはあるんだよ」


 壁にもたれたジンが口を挟み、花立はコウを見た。


「【黒殻】以外の人体改造型は、君にも覚えがあるんじゃないのか。フラスコル・シティで君が対峙した連中は、一体何者だった?」

「あ……」


 言われて、コウは納得した。

 かつて黒の一号によって壊滅させられた組織『飛来鉱石研究所』は、黒の一号へ対抗する手段として、彼と同型の人体改造型を量産していた。


 その生き残りが起こしたのが、コウが黒の一号と出会うキッカケとなった、フラスコル・シティの事件だったのだ。


 《黒の装殻》以外にも、人体改造型は存在する。


 ジンが、再度コウに向けて言った。


「パイル、エータ、ラムダの三名は、自分たちを、《白の装殻(クルセイダー)》と呼んでいる。奴等は俺達から分離した訳じゃない。別のルートから作られた人体改造型だ。ミカミとリリスもな」

「リリスはラムダと同型の装殻だけど」


 次はケイカが説明する。


「ミカミの装殻は、パイルの試験機にあたるものよ。でも、装殻制御が不完全で、暴走の危険があるの」

「暴走するとどうなるんです?」


 コウの問いかけに、ケイカは重い声音で言った。


「……意図せずに液化が起こる。そして、制御に失敗すれば、彼女の存在ごと消滅する」


 装殻の液化を操る代償。

 それはコウ自身が、つい先程実感した事だった。


 人間として、在るべき姿に戻れなくなるかもしれない。

 しかも、自分の意思に関係なく、それは起こる。


 その恐怖は、装殻を解除出来ない不良装殻者以上のものだろう。


「ミカミの装殻に採用されている外殻は、水中行動型装殻の電磁流体外殻(エレネット・フリード)を発展させて液化をシステム的に可能にした、フリード・ハイクラスと呼ばれるものよ」


 ケイカが言うには、その安定のためにフリードコントローラーと呼ばれる補助心核が必要だという。


「ミカミの〝パイル・イプシロン〟は、常時コアエネルギーを取られているせいで、稼働時間も著しく低いわ。そして、コントローラーを持っているのはパイルだけ。……だから彼女は、パイルが現れた時に、暴走の危険を冒してまであの場に行ったの」

「作ることは出来ないんですか?」

「時間を掛ければ、あるいは。でも、電磁流体外殻はPL社の独自技術で、解析は上手く行っていない。そこからさらに補助心核の開発をしようと思ったら、今から全てが上手くいっても最低半年は必要でしょう」

「そういうことかいな……」


 ミツキはうなずき。

 コウは、さらに質問を重ねる。


「対処法は、他にないんですか?」

「今のところは。彼女は、いつ爆発するかもしれない時限爆弾を抱えて生きているの」


 コウは疑問を覚えた。


「自身がそんな危険な状態で、何故ミカミさんはこちらに付いたんですか?」


 パイルの態度から、ミカミが廃棄されたようには見えなかった。


「理由は、私たちが」


 と、リリスがケイカの言葉を引き継ごうとして。


「ミカミが相手側をフリードコントローラー搭載前に離反した理由は、《白の装殻》側で【黒殻】と衝突するかどうかで揉めたせいだ」


 まるで遮るように、花立が言った。

 ジンの目が一瞬だけ鋭く細められ、ケイカが咎めるように花立を見る。


 ……その態度から察するに、なにか他に理由があるのだろう。

 だが、それをコウに明かすことは出来ない、と花立は判断した。


 『仲間と認められない』。


 リリスが告げた言葉が耳に甦る。

 何故か、という解答を、未だにコウは手に出来ていないのだろう。


 いいさ、と内心で思う。


 仲間と認められていないなら、いないなりにやりようはある。


「装殻の制御……」


 小さく、誰にも聞かれないほど微かな呟きを漏らして、コウはそれ以上突っ込まなかった。


 

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