↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巻き込まれたアラフォー20歳若返る  作者: 虎太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/21

みんなと作ろう

飴を渡した日の昼過ぎ。


 工房兼住居で片づけをしていた愛菜のもとへ、本邸から使用人がやって来た。


「愛菜様、エドワード様がお呼びです」 「私ですか?」 「はい。お時間がありましたら、本邸へとのことです」


 急な呼び出しに愛菜は少し首をかしげたが、断る理由もない。


「わかりました。すぐに行きます」


 軽く身なりを整えてから、本邸へ向かった。




 通された部屋では、エドワードとリベットがそろって愛菜を待っていた。


「ああ、来てくれたね」 「突然ごめんなさいね」 「いえ、大丈夫です。何かありましたか?」


 そう尋ねると、エドワードが機嫌よく笑った。


「君がくれたパウンドケーキが、とてもおいしくてね」 「え」 「料理人にも食べさせてみたんだが、ぜひ作り方を知りたいと言っているんだ」 と、リベットも続けた。


 愛菜はぱちぱちと瞬きをしたあと、小さく笑った。


「そういうことでしたか」 「本邸でも出せたら喜ばれそうだって話になってね」 「もちろん、レシピを教えるのは大丈夫です」 「本当かい?」 「はい」


 自分の作ったものをそこまで気に入ってもらえたことが、愛菜には素直に嬉しかった。




 けれど、すぐに焼けるわけではない。


「ただ、一度で全部というより、何日かに分けたほうがいいと思います」 「何日かに分けて?」 「はい。昨日お渡ししたものは、時短で作ったドライフルーツのラム酒漬けを使ったんです。でも、料理人の方にちゃんとお教えするなら、最初からきちんと作るほうがいいので」


 リベットが興味深そうにうなずく。


「つまり、仕込みから始めるのね」 「そうです。まずはドライフルーツをラム酒に漬けて、それをしっかりなじませてから使います」 「どれくらい時間がかかるんだい?」 「少なくとも一週間は見たほうがいいです」


 その言葉に、エドワードは少し驚いたようだった。


「一週間か」 「でも、そのぶん香りも味もよくなります。教えるなら、そのやり方のほうがいいと思います」 「なるほど。きちんとした作り方をというわけだね」 「はい」


 エドワードは納得したようにうなずいた。


「では料理人にそのように伝えよう」 「明日からでも始められます」 「助かるよ」




 本邸を出たあと、愛菜は工房兼住居へ戻った。


 教える相手が本邸の料理人なら、なおさら準備はしっかりしておきたい。


「焼き型とか、説明しやすいようにそろえておこうかな」


 愛菜はホームセンターで、焼き型や混ぜるための道具を買い足した。


 

 作業を見せながら説明しやすいよう、必要なものをひとつずつ確認していく。


「うん、これなら大丈夫そう」


 材料や道具がそろうと、翌日の流れも考えやすくなった。


 最初に材料を確認する。

 次にドライフルーツを刻む。

 それからラム酒に漬ける。


 初日はまず仕込みだけ。

 そのほうが料理人にも伝わりやすいはずだ。




 翌日。


 愛菜は必要な道具を持って、本邸の厨房へ向かった。


 広い厨房には、すでに本邸の料理人たちが集まっていた。

 いつもの仕事場であるはずなのに、今日はどこか落ち着かない空気がある。


 その中で、一番年長らしい料理人が一歩前へ出た。


「本日はよろしくお願いいたします」 「こちらこそよろしくお願いします」


 愛菜は少し緊張しながらも、きちんと頭を下げた。


 人に教えるのは嫌いではない。

 けれど、相手は毎日厨房に立っている料理人たちだ。

 いい加減なことはできない。


「今日はまず、ドライフルーツのラム酒漬けを作ります」 「昨日の菓子に使われていたものですね」 「はい。でも昨日のものは時短でした。今回はきちんと一から作るので、焼けるのは一週間後になります」 「なるほど」


 料理人たちは真剣な顔で聞いている。




 愛菜は持ってきた材料を並べながら説明を始めた。


「まず、使うドライフルーツの大きさをそろえます。大きすぎると生地の中で偏りやすいので、適度に刻んだほうがなじみやすいです」 「ふむ」 「それから容器に入れて、ラム酒を加えます。全体にしっかり回るようにしてください」


 料理人たちはうなずきながら、手元を見ている。


 愛菜は実際に刻って見せ、それから一緒に作業へ移った。


「こういう感じで大丈夫です」 「思ったより細かくするのですね」 「はい。そのほうが切ったときにもきれいですし、味もなじみやすいです」


 広い厨房で、何人もの料理人と並んでドライフルーツを刻む時間は、愛菜にとって少し不思議なものだった。


 けれど、相手が真剣に聞いてくれるので、自然と説明にも力が入る。


「漬ける酒の量は、少なすぎてもだめです。全体に行き渡るくらいひたひたにしてください」 「保存はどうされますか」 「蓋のできる容器で大丈夫です。あとは置いて、なじむのを待ちます」


 やがて仕込みが終わり、いくつもの容器が並んだ。




 料理人のひとりが、並んだ容器を見ながら感心したように言った。


「これがあの味につながるのですね」 「はい。時間をかけたほうが、香りも落ち着いて生地になじみます」 「勉強になります」


 愛菜は少し照れながら笑った。


「今日はここまでです。ラム酒を置いておくので、ドライフルーツがラム酒から出ていたら継ぎ足してください。次は一週間ほど置いてから、生地に入れるところを一緒にやりましょう」 「よろしくお願いいたします」 「こちらこそです」


 本邸の料理人たちは礼儀正しく頭を下げた。


 工房でひとり好きなものを作っていたはずなのに、いつの間にかこうして人に教える立場になっている。

 そのことが少し不思議で、でも悪くない気分だった。


 愛菜は並んだ容器を見つめながら、一週間後にはまたここで甘い香りが広がるのだろうと思い、そっと目を細めた。

パウンドケーキ焼き型10個 7980ニウム

保存用瓶5個 8800ニウム

ラム酒5本 12900ニウム

ドライフルーツ5袋 3980ニウム


計33,660ニウム



残金

54,763,641ニウム

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いつも更新楽しみにしてます! 前話から残金が1桁少なくなってます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。