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巻き込まれたアラフォー20歳若返る  作者: 虎太郎


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13/21

エドワードさんに感謝と報告

本邸へ戻ると、使用人がちょうど夕食の支度が整ったところだと教えてくれた。


 愛菜は軽く身なりを整えてから、食堂へ向かう。


 中にはすでに、エドワードとリベットが席についていた。


「おや、戻ったね」 「はい。遅くなってしまってすみません」 「いや、気にしなくていいよ。熱中していたんだろう」 「……はい」


 少し照れながら頷くと、リベットがくすりと笑う。


「そんな顔をしているもの。よほど楽しかったのね」 「すごく楽しかったです」


 席につくと、料理が順に運ばれてくる。


 温かなスープ。

 焼いた魚。

 やわらかく煮た野菜。

 そしてパン。


 見た目にも丁寧な食事だったが、やはり味つけは淡白だった。

 ひとくち食べて、愛菜は心の中でやっぱり今日も薄味だな、と思う。


 おいしくないわけではない。

 でも少しだけ物足りない。


 けれど、今日は昼間の達成感のほうがずっと大きかった。




 食事がひと段落したころ、愛菜は姿勢を正した。


「あの、エドワードさん」


「うん?」


「今日、工房兼住居のほうをいろいろ整えてみたんです」


「ほう」


「まだ全部ではないんですけど、ある程度は住めるようになりました」


 そう言うと、エドワードが少し目を見開く。


「もう、そこまでやったのかい」 「はい。掃除をして、使える家具も少し手を入れて、ひとまず生活できるくらいには」 「早いねえ」


 感心したように言われて、愛菜は少しだけ笑った。


「こういうの、好きなんです」 「見ていればわかるよ」


 エドワードは楽しそうに笑い、リベットもやさしく目を細める。


「それで」 「はい」 「何かお願いがあるのかしら」


 リベットの言葉に、愛菜は小さく息を吸ってから、きちんと二人を見た。


「明日から、あの工房で暮らそうと思います」


 食卓に、ほんの短い静けさが落ちる。


 けれど重たいものではなく、ただ愛菜の言葉を受け止めるための間だった。


「本気なんだね」 「はい」


 愛菜はしっかりと頷く。


「工房としても使いやすそうでしたし、住む場所としても落ち着けそうで。まだ手を入れたいところはありますけど、もう暮らし始められると思いました」


 エドワードはその言葉を聞いて、ゆっくり頷いた。


「そうか。気に入ったならよかった」 「ありがとうございます」


 リベットも微笑む。


「自分で整えた場所なら、きっと落ち着くわね」 「はい。すでにかなり好きです」


 そう答えると、リベットが楽しそうに笑った。




「もちろん、明日から使うといいよ」


 エドワードのそのひと言に、愛菜の胸がふっと軽くなる。


「本当にいいんですか」 「昨日も言っただろう。あそこは好きに使っていい」 「でも、住むとなるとまた別かなって思って」 「別じゃないよ」


 エドワードは穏やかな口調のまま続けた。


「自分の居場所だと思えるなら、そのほうがいい。遠慮ばかりしていても落ち着かないだろう」 「……はい」


 その言葉が、愛菜にはとてもありがたかった。


 まだこの世界に来て二日目だ。

 わからないことは多いし、不安もある。

 話していないことも、まだたくさんある。


 それでも、自分で整えた場所で暮らしていいと受け入れてもらえることが、思っていた以上にうれしい。


「ありがとうございます。ご迷惑にならないように気をつけます」 「そんなにかしこまらなくていいわ」 と、リベットがやわらかく言う。


「あなたが楽しく過ごしてくれるなら、それが一番よ」 「はい」


 愛菜は素直に頷いた。




 夕食はやっぱり少し薄味だった。

 けれど今夜の愛菜は、それを気にする余裕もないくらい明日が楽しみだった。


 明日からあの小さな工房兼住居で暮らせる。


 朝起きて、すぐに作業台へ向かえて、好きなように棚を整えて、必要なものを少しずつ増やしていける。


 そう思うだけで胸が弾む。


「明日、荷物を少し運びたいんですが」 「必要なら人を出そうか」 「いえ、大丈夫です。そんなに多くないので」


 とっさにそう答えながら、愛菜は内心で少しだけひやりとした。


 もちろん本当に人手を借りるわけにはいかない。

 見られたくないものがある。


 けれど二人は特に気にした様子もなく、エドワードは気軽に頷いた。


「そうか。無理だけはしないように」 「はい」


 その返事をしながら、愛菜は心の中で明日の段取りを考える。


 人のいない時間を見て、少しずつ整えよう。

 急ぎすぎず、目立ちすぎず、自然に。


 本邸へ戻ってきてからの夕食の席で、明日からの暮らしを口にしたことで、愛菜の中でもようやく実感が湧いてきた。


 明日から、あの場所が自分の家になる。


 そのことがうれしくて、愛菜は食後のお茶を飲みながら、そっと頬をゆるめた。

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