第八話 ヒトメ兄と視野の狭さ・再び
「僕は」
一つ目の青年が、ぺこりと頭を下げた。
「兄の、一徹と申します」
四郎
「弟のヒトメとは違うのか」
一徹
「弟は『それじゃない』が口癖でしたが」
「……」
「僕は逆に」
静寂。
一徹
「『これしかない』が口癖です」
四郎
「似たような感じか!?」
一徹
「いえ、真逆です」
「弟は正解を探しすぎて、すべてを否定した」
「……」
「僕は、一つに決めすぎて」
「他の可能性を、見られなくなりました」
ドゴォォォォォォン!!
【視野固定結界】
発動。
世界中で。
人々の選択肢が、急激に狭まる。
『この道しかない』
『他の生き方なんて考えられない』
『もう後戻りできない』
そんな思考が、人々を縛り始める。
四郎
「うっ……これも、視野系か……」
HP
38000000
↓
20000000
一徹
「僕はずっと」
「……」
「『これしかない』と思って、芸を磨いてきました」
「……」
「でも」
「気づいたら」
「他のやり方が、見えなくなっていた」
四郎は、考えた。
ヒトメ(弟)とは、確かに正反対だった。
だが。
根っこは、同じだった。
「視野が狭い」
ことへの。
恐怖。
四郎
「なあ、一徹」
「……」
「弟と話してみたか?」
一徹
「いえ」
「……」
「正直、苦手です」
「あいつ、何でも否定してくるので」
四郎
「お前も、何でも一つに決めすぎるから」
「……」
「お互い、ちょうどいいんじゃないか」
一徹の、一つの目が、揺れる。
四郎の胸の七つの傷が輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第八奥義。
湿拳・視野共有拳
効果。
『一つの視点に固執する心を、ほどく』
『対極にいる存在と組むことで、バランスを取らせる』
四郎
「行くぞ!」
一徹
「これしかないんです!」
四郎
「他にもあるかもしれないだろぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
一徹の一つの目が、ゆっくりと、周囲を見渡し始めた。
今までは、一点しか見ていなかった目が。
少しずつ。
広がっていく。
一徹
「僕は……」
「……」
「一つに決めることが、安心だったんです」
「……」
「でも」
「決めすぎて、苦しくなっていたのかもしれません」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【一徹を浄化した】
経験値+390
笑石のかけら獲得
称号獲得
『視野を広げた者』
四郎
「八体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、順調じゃのう」
四郎
「順調すぎて、逆に怖いんだよな……」
その時。
浜辺の奥から。
ゆっくりと。
大きな、壁のような存在が、近づいてきた。
四角い体。
無表情。
福井弁。
ぬりかべ・カベヤ
「おい、おはん」
「儂を、越えられるんかいの」




