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湿拳四郎 ~笑界湿度400%~  作者: 伝説の男前


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第九話 カベヤと動けない壁

四角い、巨大な壁。


福井弁。


ぬりかべ・カベヤ。


ずっしりと、その場に立ち続けている。


カベヤ


「儂は、動かんでの」


四郎


「いや、めちゃくちゃ威圧感あるんだけど」


カベヤ


「壁やからの」


「動いたら、壁やなくなるやろ」


四郎


「それはそう」


ドゴォォォォォォン!!


【停滞結界】


発動。


世界中で。


人々の足が、重くなる。


『変わるのが怖い』


『今のままでいい』


『動いたら、失敗するかもしれない』


そんな思いが、人々を、その場に縛りつける。


四郎の足も、重くなる。


HP


42000000



25000000


四郎


「うっ……動けない……」


カベヤ


「儂を見てみい」


「……」


「何百年も、この島で、こうしてきた」


「……」


「動かなければ、傷つかん」


「失敗もせん」


四郎は、動けないまま、カベヤを見上げた。


四郎


「でも、それ、楽しいのか?」


静寂。


カベヤ


「……」


「楽しいかどうかは」


「考えたことがなかったの」


四郎は、少しだけ、足に力を込めた。


四郎


「動かないのは、安全かもしれないけど」


「……」


「壁って、本当はずっと、そこにあるだけで」


「……」


「誰かを助けたり、誰かと話したりはできないんじゃないか」


カベヤの、四角い体に、わずかな亀裂が入った。


ピシッ。


四郎の胸の七つの傷が、輝く。


ドクン。


ドクン。


笑界編・第九奥義。


湿拳・一歩踏み出し拳


効果。


『停滞を、安全と勘違いしている心をほどく』

『動くことへの恐怖より、動いた先の景色を見せる』


四郎


「行くぞ!」


カベヤ


「儂は動かんと言うとる!」


四郎


「動かなくても、いいから、せめて聞いてくれぇぇぇぇぇ!!」


ズガァァァァァァァァァン!!


直撃。


世界が光る。


カベヤの体に、ひびが広がる。


ピシピシピシッ。


すると。


壁の隙間から。


小さな目が、覗いた。


カベヤ


「儂は……」


「……」


「動いたら、また誰かに、ぶつかってしまうと思って」


「……」


「だから、ずっと、ここにおった」


四郎は、頷いた。


「ぶつかってもいいよ」


「……」


「ぶつかった分だけ、誰かと出会えるから」


ぽたり。


ぽたり。


どばぁぁぁぁぁぁ!!


湿拳洪水発生。


カベヤの体が、ほんの少しだけ、ずれた。


何百年ぶりの、一歩だった。


【カベヤを浄化した】


経験値+410


笑石のかけら獲得


称号獲得


『一歩を踏み出した壁』


四郎


「九体目……!」


その時。


風に乗って。


ふわりと、何かが舞ってきた。


讃岐弁の、傘の妖怪。


傘おばけ・カラカサ


「あんやー、坊主」


「うちも、相手しちょくれ」


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