第六話 テングザブロウと上から目線
空中。
天狗が、悠然と羽ばたいていた。
仙台弁の口調。
赤ら顔。
長い鼻。
そして。
常に。
見下ろすような視線。
テングザブロウ
「いんやぁ、坊主」
「五体倒したくれぇで、調子乗ってんでねぇべ」
四郎
「いや、別に調子乗ってない」
テングザブロウ
「儂から見れば」
「お前なんて、まだまだだぁ」
ドゴォォォォォォン!!
【上から目線結界】
発動。
世界中で。
人の意見が、急に小さく見え始める。
『お前の頑張りなんて、たいしたことない』
『もっとすごい人を知ってる』
『そんなことも知らないのか』
そんな空気が、漂い始める。
四郎
「うっ……」
HP
40000000
↓
25000000
テングザブロウ
「儂は、千年見てきたんだぁ」
「お前なんかの悩み」
「ちっぽけだべ」
四郎は、少しムカついた。
四郎
「それ、悩みの大きさ比べる意味あるか?」
テングザブロウ
「あぁ?」
四郎
「お前にとってちっぽけでも」
「……」
「オレにとっては、ちっぽけじゃないんだよ」
静寂。
テングザブロウの羽ばたきが、わずかに止まった。
四郎
「上から見るのは、別にいいよ」
「……」
「でも、それで誰かの悩みを小さくする権利は、ないだろ」
テングザブロウは、少し沈黙した。
そして。
ゆっくりと、地面に降りてきた。
テングザブロウ
「儂はな」
「……」
「昔、後輩に、こう言われたんだ」
「『天狗さんの言葉、いつも見下されてる気がします』ってな」
「……」
「儂は、励ましてるつもりだったんだげんちょ」
四郎の胸が、わずかに疼く。
四郎
「励ましって、目線合わせないと、届かないと思う」
テングザブロウ
「目線……」
「合わせる、か」
その瞬間。
四郎の七つの傷が輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第六奥義。
湿拳・同じ目線拳
効果。
『見下ろす視線を、隣に立つ視線に変える』
『経験の多さを、威圧ではなく寄り添いに変換する』
四郎
「行くぞ!」
テングザブロウ
「儂は千年生きてんだぞ!」
四郎
「だったら、千年分、隣にいてくれよぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
テングザブロウの身体が、地面と同じ高さまで降りてくる。
「儂は……」
「……」
「ずっと、上にいることが、強さだと思っとった」
四郎
「分かるよ」
「……」
「でも、横にいる方が、頼られると思う」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【テングザブロウを浄化した】
経験値+420
笑石のかけら獲得
称号獲得
『隣に立つ者』
四郎
「六体目……!」
その時。
地面の奥から。
無言の気配が、すっと現れた。
座敷童子。
ザシ子。
何も言わず。
ただ。
にこにこと。
四郎を見ている。
四郎
「お前は……敵じゃない気がする」
ザシ子は、こくりと頷いた。
ヌラリ翁
「ザシ子は福の神じゃ」
「戦いには、来ん」
四郎
「じゃあ何しに?」
ザシ子は、無言で、四郎の頭を、ぽんぽんと撫でた。
そして。
すっと、消えていった。
四郎
「……今の、なんだったんだ」
ヌラリ翁
「お前さんを、応援しに来たんじゃろ」
「あの子なりにな」
四郎の胸が、少しだけ、温かくなった。




