第五話 カッパ太郎と場違いの不安
津軽弁の河童。
カッパ太郎。
水かきの手を、ぴたぴたと鳴らしながら。
四郎の周りを、ぐるぐる回っている。
四郎
「あの、近い」
カッパ太郎
「おらこういう性質だべ」
「水中スタント、得意なんだ」
四郎
「ここ、浜辺なんだけど」
カッパ太郎
「だがら、困ってんだ」
静寂。
カッパ太郎
「おら、水の中でしか芸できねぇ」
「……」
「なのに、この島さ、乾いた場所多いべ」
「……」
「いっつも、場違いな感じすんだ」
四郎の胸が、少し痛む。
それは。
理解できる感情だった。
カッパ太郎
「みんな、陸で楽しそうに芸やってる」
「……」
「おらだけ、水たまり探して、こそこそやってる」
「……」
「なんか、おら、ここにいちゃいけねぇ気がして」
ドゴォォォォォォン!!
【場違い結界】
発動。
世界中で。
「ここにいていいのかな」
という不安が、広がる。
新しい職場。
新しい学校。
新しいコミュニティ。
誰もが、一度は感じる。
自分だけ、浮いている気がする。
その感覚。
四郎
「これ、結構刺さる……」
七海(電話越し)
「四郎も新人の時、似たようなこと言ってたな」
四郎
「うるさい」
HP
35000000
↓
15000000
カッパ太郎が、水かきの手を振る。
ピシャッ。
水しぶきが飛ぶ。
「おら、ずっと考えてたんだ」
「……」
「水場じゃないと、おらは、おらじゃねぇんじゃねぇかって」
四郎は、少し考えた。
そして。
ふと、気づいた。
四郎
「なあ、カッパ太郎」
「うん?」
「お前、今、水たまりもないのに、芸できてるじゃん」
カッパ太郎
「え?」
四郎
「さっきから、おれの周りぐるぐる回ってるの」
「……」
「それ、結構面白いよ」
静寂。
カッパ太郎
「……これ、芸になってんのか?」
四郎
「なってる、なってる」
「乾いた場所での河童芸、新しいよ」
カッパ太郎の目が、揺れる。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第五奥義。
湿拳・場違い肯定拳
効果。
『「いつもの自分」じゃなくても、今ここでやれることを認めさせる』
『場所が変わっても、自分の芸は続けられると思い出させる』
四郎
「行くぞ!」
カッパ太郎
「おら、水場じゃないと無理だべ!」
四郎
「乾いてても、お前の芸はお前のもんだろぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
カッパ太郎の動きが、変わる。
ぴたぴた、ぴたぴた。
水かきの手で、リズムを刻む。
陸の上でも。
ちゃんと。
河童だった。
カッパ太郎
「おら……」
「……」
「場所、関係なかったんだな」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
水たまりが、ようやくできた。
カッパ太郎が、嬉しそうに飛び込んだ。
【カッパ太郎を浄化した】
経験値+380
笑石のかけら獲得
称号獲得
『どこでも自分でいられる者』
四郎
「五体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、なかなか筋がいいのう」
四郎
「褒められても、まだ七十一体残ってるんだよな……」
その時。
人混みの中から。
仙台弁の声が、上から響いた。
「おい、坊主」
「次は儂が相手だ」
天狗が、空中で羽ばたいていた。
天狗MC・テングザブロウ
「上から、よーく見させてもらうぞ」




