第五十二話 アーク師匠と大御所の限界
書生語の、古風な、佇まい。
アークデーモン・アーク師匠。
アーク師匠
「儂は」
「大御所芸人と、呼ばれておる」
「……」
「長年の、経験と、実績がある」
四郎
「ベテランって感じだな」
アーク師匠
「うむ」
「……」
「だが」
少し、声が、重くなる。
「大御所であり続けることに」
「正直」
「限界を、感じておるのじゃ」
ドゴォォォォォォン!!
【大御所重圧結界】
発動。
世界中で。
「実績がある人ほど、衰えを見せられない」というプレッシャーが、強まる。
『ベテランは、いつまでも、すごくなければいけない』
『過去の実績が、今のプレッシャーになる』
『若い頃のようには、いかないことを、認められない』
四郎の心にも、そのプレッシャーが、染み込む。
HP
40000000
↓
24000000
アーク師匠
「儂はな」
「……」
「若い頃は」
「何でもできた」
「……」
「だが」
「年を重ねるごとに」
「体力も、瞬発力も」
「衰えていく」
「……」
「それを」
「認めるのが」
「怖かった」
四郎は、考えた。
これは。
「過去の自分」と「今の自分」の、ギャップへの恐怖だった。
四郎
「アーク師匠」
「……」
「衰えることは」
「悪いことじゃないと思う」
アーク師匠
「……」
「だが、儂は、大御所じゃぞ」
四郎
「大御所だからこそ」
「……」
「『今の自分』を、見せることに、価値があると思う」
「……」
「若い頃の自分じゃなくて」
「今の自分にしか、できないことが」
「あるんじゃないか」
静寂。
アーク師匠の、古風な佇まいに、わずかな、柔らかさが、滲んだ。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第五十二奥義。
湿拳・今の自分拳
効果。
『過去の実績への執着を、今の自分の価値への気づきに変える』
『衰えを、恐れではなく、変化として受け入れさせる』
四郎
「行くぞ!」
アーク師匠
「儂は、衰えを、見せられぬのじゃ!」
四郎
「今の自分にしかできないこと、あるだろぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
アーク師匠の、重々しい佇まいが、ふっと、軽くなる。
アーク師匠
「儂……」
「……」
「今の儂で、いいのじゃな」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【アーク師匠を浄化した】
経験値+440
笑石のかけら獲得
称号獲得
『今の自分を生きる者』
四郎
「五十二体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、もう、悪魔区も、終盤じゃ」
四郎
「あと、二十四体……」
ビジネス敬語の、丁寧な声が、響いた。
デーモンロード・ロード社長
「お世話になっております」
「事務所社長芸人の、ロードと申します」
「……正直、社員全員の人生を背負っていると思うと、夜も眠れないのです」




