第四十六話 アスミと知識だけの恋
古代貴族のような、優美な、佇まい。
古代貴族語の、艶やかな声。
アスモデウス・アスミ。
アスミ
「わたくし」
「恋愛トーク担当ですの」
「……」
「みなさんに」
「恋愛の助言、いつもしておりますわ」
四郎
「モテそうだもんな」
アスミ
「ふふ」
「……」
「でも」
少し、声が、揺れる。
「わたくし」
「本当の恋を」
「したことが、ありませんの」
ドゴォォォォォォン!!
【机上の恋結界】
発動。
世界中で。
「知識はあるのに、実体験が伴っていない」という空虚感が、広がる。
『理論は分かるのに、実践できない』
『アドバイスはできるのに、自分はできない』
『誰かを助けられるのに、自分は救われていない』
四郎の心にも、その空虚さが、染み込む。
HP
36000000
↓
20000000
アスミ
「わたくし」
「……」
「たくさんの恋愛論を、学びましたわ」
「……」
「どうすれば、相手の心が動くか」
「どう伝えれば、誤解されないか」
「……」
「全部、知っておりますの」
「……」
「でも」
「自分が、本気で、誰かを好きになる」
「その勇気だけは」
「持てませんでしたの」
四郎は、考えた。
これは。
知識と、実践の、ギャップだった。
四郎
「アスミ」
「……」
「知識があるのは、すごいことだと思う」
「……」
「でも」
「知識は、勇気の代わりには、ならないんだろうな」
アスミ
「……」
「ええ」
四郎
「一回だけ」
「知識を、全部、忘れて」
「本気で、誰かに、気持ちを伝えてみないか」
静寂。
アスミの表情に、わずかな、迷いと、覚悟が、浮かんだ。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第四十六奥義。
湿拳・知識超え拳
効果。
『知識への依存を、本気の行動への勇気に変える』
『理論ではなく、実体験の価値を示す』
四郎
「行くぞ!」
アスミ
「わたくし、本気になる勇気が、ありませんの!」
四郎
「知識より、本気の方が、ちゃんと伝わるぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
アスミの優美な表情に、初めて、人間らしい、緊張と、期待が、浮かぶ。
アスミ
「わたくし……」
「……」
「今度、本気で、伝えてみますわ」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【アスミを浄化した】
経験値+420
笑石のかけら獲得
称号獲得
『知識を超えた者』
四郎
「四十六体目……!」
その時。
職人らしい、無骨な気配が、現れた。
職人口調の、渋い声。
レヴィアタン・レヴ蔵
「俺は、海ロケ専門の、レヴ蔵だ」
「……だが、正直、もう、新しい景色に、感動できなくなっちまった」




