第四十五話 ベル兄と味のしない毎日
武士のような、佇まい。
武士語の、低い声。
ベルゼブブ・ベル兄。
ベル兄
「拙者、食レポ担当でござる」
「……」
「どんな料理も」
「美味しそうに、語るのが、仕事でござる」
四郎
「グルメ番組の人みたいだな」
ベル兄
「うむ」
「……」
「だが」
少し、声が、沈む。
「最近」
「何を食べても」
「味が、せぬのだ」
ドゴォォォォォォン!!
【無感動結界】
発動。
世界中で。
「何をやっても、感動できない」という無感動が、広がる。
『前は楽しかったことが、楽しくない』
『美味しいものを食べても、心が動かない』
『感動が、麻痺してしまった』
四郎の心にも、その無感動が、染み込む。
HP
38000000
↓
21000000
ベル兄
「拙者」
「……」
「毎日、何十品も」
「『美味しい』と、言い続けてきた」
「……」
「だが」
「言葉が、空回りして」
「自分でも、何が美味しいのか」
「分からなくなった」
四郎は、考えた。
これは。
「感動の仕事化」とでも言うべき、悩みだった。
四郎
「ベル兄」
「……」
「今日、一番、ちゃんと味わって、食べたものは、何だ?」
ベル兄
「……」
「考えたことも、なかったでござる」
四郎
「じゃあ、今、一緒に、何か食べてみないか」
「……」
「仕事じゃなくて、ただ、味わうために」
静寂。
ベル兄が、ゆっくりと、頷いた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第四十五奥義。
湿拳・味わい直し拳
効果。
『感動の麻痺を、丁寧に味わうことで、取り戻す』
『仕事としての感動と、本物の感動を、区別する』
四郎
「行くぞ!」
ベル兄
「拙者、何を食べても、味がせぬのだ!」
四郎
「一口だけ、ゆっくり味わってみろぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ベル兄が、しずくのプリンを、一口、ゆっくりと、食べた。
ベル兄
「これは……」
「……」
「美味い」
「久しぶりに、本当に、そう思ったでござる」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【ベル兄を浄化した】
経験値+410
笑石のかけら獲得
称号獲得
『味わいを取り戻した者』
四郎
「四十五体目……!」
その時。
古代貴族のような、優美な気配が、現れた。
古代貴族語の、艶やかな声。
アスモデウス・アスミ
「あら」
「恋愛トーク担当のアスミですわ」
「……でも、わたくし、本当の恋を、したことがありませんの」




