第三話 キンタと力加減の拳
大阪弁の鬼。
キンタ。
その隣に。
無言で立つ死霊。
ネクロ。
四郎
「二体同時か!?」
キンタ
「ワイとネクロは別行動や」
「先にワイがいくで」
ネクロは、黙って後ろに下がった。
口を、一言も開かない。
ただ。
じっと、四郎を見ている。
四郎
「無言、こわい……」
キンタ
「気にすな、あいつはいつもああや」
「それよりワイや」
キンタが、拳を握る。
赤い肌。
角。
筋肉。
見るからに、強そうだった。
キンタ
「ワイのツッコミはな」
「……」
「『なんでやねん』一発で、相手を黙らせる」
四郎
「シンプルだ」
キンタ
「シンプルが一番強いんや」
ドゴォォォォォォン!!
【全力ツッコミ結界】
発動。
キンタの拳が、唸る。
ブォン!!
四郎
「うわっ!」
ギリギリ、避ける。
地面が、陥没した。
四郎
「力、強すぎない!?」
キンタ
「せやろ」
「ワイ、加減でけへんねん」
四郎
「それ、デメリットじゃないか!?」
キンタ
「分かっとる」
「……」
「でもな」
少し、寂しそうに。
キンタは続けた。
「昔、相方おったんや」
四郎
「えっ」
「相方?」
キンタ
「ボケのやつ」
「……」
「ワイ、ツッコミ強すぎて」
「……」
「何回も、本気で殴ってもうた」
静寂。
キンタ
「相方、痛がってな」
「……」
「だんだん、ボケんようなってもうた」
「……」
「最後は」
「コンビ、解散した」
世界が、静かになる。
四郎は気づいた。
キンタの強さは。
誰かを守るためじゃなく。
誰かを傷つけてしまった過去から。
生まれていた。
キンタ
「それからな」
「……」
「ワイ、力加減を覚えようとした」
「……」
「でも」
「覚えるほど」
「弱くなる気がして」
「……」
「怖かった」
四郎の胸の傷が、鈍く光る。
ドクン。
四郎
「キンタ」
キンタ
「なんや」
四郎
「ツッコミって」
「……」
「相手を黙らせるためのもんじゃないと思う」
キンタ
「は?」
四郎
「相手と、もう一回しゃべるための、もんだと思う」
静寂。
キンタの拳から、力が抜けた。
少しだけ。
四郎の七つの傷が輝く。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第三奥義。
湿拳・優しいツッコミ拳
効果。
『強さを、傷つける力から、つなぐ力に変える』
『加減を覚えても、弱くならないことを示す』
四郎
「行くぞ!」
キンタ
「ワイ、加減でけへん!」
四郎
「加減できなくていい、まず謝ろうぜぇぇぇぇ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
キンタの拳から。
赤い光が、ふわりと舞う。
キンタ
「相方、元気にしとるかな」
四郎
「探しに行けばいいじゃん」
キンタ
「……せやな」
「謝りに行くわ」
ぽたり。
涙。
鬼の目から、こぼれた。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【キンタを浄化した】
経験値+350
笑石のかけら獲得
称号獲得
『加減を覚えた鬼』
四郎
「勝った……」
キンタ
「兄ちゃん、おおきにな」
そして。
キンタの後ろから。
ずっと無言だった、ネクロが。
ゆっくりと、前に出た。
ネクロは。
何も言わない。
ただ。
四郎を、じっと見つめる。
四郎
「お前は……話さないのか?」
ネクロは、首を横に振った。
ヌラリ翁
「ネクロは、無言コント師じゃ」
「言葉を、使わん」
四郎
「じゃあ、どうやって戦うんだ?」
ネクロは、ゆっくりと。
両手を広げた。
その瞬間。
辺り一面が、暗転した。
ブツン。




