表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
湿拳四郎 ~笑界湿度400%~  作者: 伝説の男前


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/7

第二話 御霊Brosと終わらない恨み

浜辺。


四郎の周りに。


ぞろぞろと集まってきた。


着物の幽霊。


津軽弁の河童。


無言の死霊。


四郎


「うわ、本当に七十六体おるんだ……」


七海(電話越し)


「四郎、状況は」


四郎


「妖怪の歓迎会みたいになってる」


七海


「のどかだな」


四郎


「のどかでいいのか、これ」


その時。


人混みの奥から。


二つの気配が、ずいっと前に出た。


烏帽子をかぶった、平安貴族風の幽霊。


二体。


しかも。


明らかに、お互いを意識し合っている。


「ちょっと待たんね」


「新参者の相手は、うちらがすっと」


四郎


「博多弁?」


ヌラリ翁


「御霊Brosじゃな」


「平安の頃から、ずっと一緒に怨霊やっとる兄弟分じゃ」


御霊1号


「おう、よう来たね、兄ちゃん」


御霊2号


「歓迎するったい」


四郎


「あ、意外と優しい」


御霊1号


「ばってん」


御霊2号


「ばってん?」


御霊1号


「お前、笑わせられるとや?」


四郎


「いや、さっきヒトメってのを浄化してきたんだけど」


御霊1号


「は?」


「ヒトメなんか目玉一個やろもん」


御霊2号


「うちらは怨念二人分やけんね」


「そう簡単にゃいかんばい」


ドゴォォォォォォン!!


突然。


空気が変わった。


御霊Brosの背後に。


巨大な、平安時代の絵巻物が広がる。


そこには。


無数の名前。


無数の出来事。


すべて。


千年以上前のもの。


御霊1号


「お前、知っとうや」


「うちら、千年恨んどう」


御霊2号


「千年やけんね」


「もう誰も覚えとらん恨みば」


「うちらだけが覚えとうとよ」


四郎


「重い! 千年は重い!」


【千年恨み結界】


発動。


世界中で。


過去の恨みが、急に蘇る。


『あの時、ああ言われた』


『あの時、無視された』


『もう昔のことなのに』


『なぜか忘れられない』


HP


60000000



30000000


四郎


「やばい、これ後悔魔神リグレットに似てる!」


御霊1号


「リグレットなんか可愛いもんたい」


御霊2号


「あいつはせいぜい十年、二十年やろ」


「うちらは」


御霊1号・2号(同時)


「千年!!」


四郎


「スケールで殴ってくる!」


その時。


四郎は気づいた。


御霊1号と2号。


二人の言葉が。


微妙に、ずれている。


御霊1号


「うちはな」


「殺された恨みば、晴らしたかとよ」


御霊2号


「いや、うちは殺された恨みやのうて」


「忘れられた恨みったい」


御霊1号


「は? お前、そげんこと言いよったか?」


御霊2号


「言いよったよ、ずっと」


御霊1号


「初耳ばい」


四郎


「あれ、二人で言ってること違くない?」


その瞬間。


御霊Brosが、お互いを見た。


千年、ずっと並んでいたはずの二人が。


初めて。


向き合った。


御霊1号


「お前、ほんなこつ何ば恨んどると?」


御霊2号


「お前こそ」


「ずっと一緒に怒っとったばってん」


「何に怒っとうとか、ちゃんと聞いたことなかったね」


静寂。


千年分の。


長い、長い静寂。


四郎は、その様子を見ていた。


何かが。


ほどけかけている。


四郎


「ヌラリ翁」


ヌラリ翁


「うむ」


「あの二人、何が起きてるんだ?」


ヌラリ翁


「千年連れ添うとな」


「……」


「相手のことを分かった気になる」


「……」


「でも」


「分かった気になるのと」


「分かっとるのは、違うんじゃよ」


四郎の胸の傷が、わずかに光る。


ドクン。


四郎は前に出た。


「なあ、二人とも」


御霊1号


「なんね」


御霊2号


「邪魔せんでくれんね、今大事な話しよっと」


四郎


「いや、それでいいんだよ、続けて」


「……」


「ただ、ひとつだけ聞きたい」


「なんで二人とも、博多弁なんだ?」


静寂。


御霊1号


「は?」


御霊2号


「は?」


四郎


「だって千年、ずっと一緒にいたんだろ」


「……」


「なら」


「恨みより先に」


「もう、相棒になってるんじゃないか」


世界が、静かになった。


御霊1号の表情が、わずかに緩む。


御霊2号も、同じだった。


御霊1号


「……お前」


御霊2号


「言うやんね」


四郎


「いや、博多弁ツッコまれただけなんだけど」


その時。


四郎の七つの傷が。


強く輝いた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


笑界編・第二奥義。


湿拳・相方拳


ヌラリ翁


「ほう、ええ拳じゃ」


効果。


『恨みの中にある"一緒にいた時間"を思い出させる』

『敵対ではなく、共犯にする』

『一人の恨みを、二人の漫才に変える』


四郎


「行くぞ!」


御霊1号


「うちら、千年恨んどう!」


御霊2号


「忘れられんったい!」


四郎


「忘れなくていい、笑いに変えればいいだろぉぉぉぉ!!」


ズガァァァァァァァァァン!!


直撃。


世界が光る。


すると。


御霊Brosの背後の絵巻物が。


ゆっくりと、形を変えていく。


恨みの記録だったものが。


二人の、千年分の漫才ネタ帳に。


御霊1号


「あー、そういえば」


「あんとき、お前に先に成仏されかけたったい」


御霊2号


「あー、あれね」


「あんとき、お前が先に化けて出ようとして」


「結局、間に合わんやったやつね」


御霊1号


「そうそう、あれ」


二人が。


同時に。


吹き出した。


「ぎゃはははは!!」


千年ぶりの。


二人での。


大笑いだった。


御霊1号


「うち……」


「……」


「恨みじゃのうて」


「お前と笑いたかっただけかもしれん」


御霊2号


「うちも」


「……」


「同じったい」


ぽたり。


ぽたり。


涙が、こぼれた。


どばぁぁぁぁぁぁぁ!!


湿拳洪水発生。


千年分の涙が、一気に放出された。


浜辺の砂浜が、軽く洪水になった。


ヌラリ翁の着物が、また濡れた。


ヌラリ翁


「これで二回目じゃが」


「……儂、着替え持ってきとらんのう」


四郎


「すまん」


【御霊Brosを浄化した】


経験値+300


笑石のかけら獲得


称号獲得


『恨みを相方にした者』


四郎


「やった……二体目!」


御霊1号


「兄ちゃん、なかなかやるね」


御霊2号


「うちらのツッコミ、引き継いでくれんね」


四郎


「いや、それは無理」


御霊1号


「博多弁、教えちゃろうか」


四郎


「いや、それも無理」


御霊Brosは笑った。


千年分の重さが、少しだけ軽くなった顔で。


その時。


人混みの中から。


別の声がした。


「ほう、おもしれぇことしてんな」


四郎が振り返る。


そこにいたのは。


大阪弁の、鬼のような芸人と。


無言の死霊。


二体組。


鬼芸人


「ワイはキンタ言うんや」


「お前、力加減できるんか?」


四郎


「は?」


キンタは、にやりと笑った。


「お前のその拳」


「……」


「受け止めたろか」


四郎の胸の傷が、再び疼く。


ドクン。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ