第三十八話 ドロ子とゆるさの代償
ぷるぷると、震える、半透明の体。
標準語の、ゆるい声。
スライム・ドロ子。
ドロ子
「あたしね」
「ゆるふわボケ、得意なの」
「いつも、ふんわり、笑わせるの」
四郎
「癒し系って感じだな」
ドロ子
「うん」
「……」
「でも」
少し、震えが、止まる。
「ゆるすぎて」
「『真剣に話を聞いてもらえない』って」
「思うことが、多いの」
ドゴォォォォォォン!!
【軽視結界】
発動。
世界中で。
「優しい・柔らかい人は、軽く見られる」という思い込みが、広がる。
『穏やかな人は、なめられやすい』
『優しさは、弱さだと思われる』
『真剣な相談をしても、軽く流されてしまう』
四郎自身も、その軽視の空気を、感じる。
HP
33000000
↓
17000000
ドロ子
「あたし」
「……」
「本当は」
「すごく、いろんなこと、考えてるの」
「……」
「でも」
「ゆるい見た目だから」
「『どうせ、深く考えてないでしょ』って」
「思われちゃうの」
四郎は、ドロ子の、柔らかい体を、見つめた。
四郎
「ドロ子」
「……」
「ゆるいのと」
「考えてないのは、違うと思う」
ドロ子
「……」
「分かってくれるの?」
四郎
「うん」
「……」
「柔らかいからこそ」
「いろんな形に、なれるんだろ」
「……」
「それ、すごく、しなやかな強さだと思う」
静寂。
ドロ子の震えが、わずかに、落ち着いた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第三十八奥義。
湿拳・しなやか肯定拳
効果。
『「ゆるい=軽い」という誤解を解く』
『柔らかさを、しなやかな強さとして、認めさせる』
四郎
「行くぞ!」
ドロ子
「あたし、ゆるいから、軽く見られちゃうの!」
四郎
「ゆるさは、しなやかな強さだぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ドロ子の体が、嬉しそうに、ぷるんと、揺れた。
ドロ子
「あたし……」
「……」
「このままの、ゆるさで、いいんだね」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【ドロ子を浄化した】
経験値+400
笑石のかけら獲得
称号獲得
『しなやかさを認めた者』
四郎
「三十八体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、これで」
「西洋区も、あと少しじゃのう」
四郎
「あと、何体だ?」
ヌラリ翁
「ゴーレム、シャドウ、フェアリーの」
「三体じゃ」
「それで、西洋モンスター区は、終わりじゃ」
霧の奥から。
土の塊が、ゆっくりと、動き出した。
福島弁の、無機質な声。
ゴーレム・ゴレ男
「……俺は、誰かに、作られた存在だ」
「……自分の意思って、あるんだろうか」




