第三十五話 ゾン太と繰り返しの虚無
地面から、ずるりと、這い出る、ゾンビ。
京言葉の、独特な声。
ゾンビ・ゾン太。
ゾン太
「うちのネタは」
「同じことを、しつこく、繰り返すんどす」
「……」
「最初は、ウケてましたんやけど」
「……」
「最近、自分でも」
「何のために、繰り返してるんか」
「分からんようになってきましたわ」
ドゴォォォォォォン!!
【虚無の繰り返し結界】
発動。
世界中で。
「同じことの繰り返しに、意味を見出せない」という虚無感が、広がる。
『毎日、同じことの繰り返し』
『この作業、何のためにやってるんだろう』
『習慣が、ただの惰性になっている』
四郎の足取りも、急に、重くなる。
HP
35000000
↓
20000000
ゾン太
「うち、最初は」
「みんなを、笑わせたくて」
「同じネタ、繰り返してましたんや」
「……」
「でも」
「いつしか」
「『繰り返すこと』自体が、目的になってもうて」
「……」
「中身が、空っぽになってもうたんどす」
四郎は、考えた。
これは。
属人化将軍ブラックボックスとは、また違う種類の、虚しさだった。
繰り返すこと自体が、意味を失う瞬間。
四郎
「ゾン太」
「……」
「繰り返すたびに」
「ちょっとずつ、変えてみたら、どうかな」
ゾン太
「変える?」
四郎
「うん」
「……」
「全く同じじゃなくて」
「毎回、少しだけ、新しい何かを、足してみる」
「……」
「それなら」
「繰り返しも、意味を持つんじゃないか」
静寂。
ゾン太の動きが、わずかに、変わった。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第三十五奥義。
湿拳・少し変える拳
効果。
『繰り返しの虚無を、小さな変化の積み重ねに変える』
『習慣に、新しい意味を吹き込む』
四郎
「行くぞ!」
ゾン太
「うち、繰り返すしか、できへんのどす!」
四郎
「ちょっとずつ、変えればいいんだぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ゾン太の動きが、少しずつ、新しい表情を、見せ始める。
ゾン太
「うち……」
「……」
「同じことの中にも、新しいもん、見つけられそうどす」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【ゾン太を浄化した】
経験値+410
笑石のかけら獲得
称号獲得
『繰り返しに意味を見出した者』
四郎
「三十五体目……!」
その時。
地面の奥から。
カタカタと、骨の音が、響いてきた。
鹿児島弁の、軽快な声。
スケルトン・ホネ吉
「おいどん、骨だけ企画専門でごわす」
「……でも、中身がないことに、ちっと、悩んどりますたい」




