第三十四話 サイと視野の代償
一つ目の、巨大な影。
岡山弁の、のんびりした声。
サイクロプス・サイ。
サイ
「わしの芸はな」
「一点集中ボケじゃ」
「一つのことに、とことん、こだわるんじゃ」
四郎
「強いこだわりだな」
サイ
「じゃろ?」
「……」
「ばってん」
少し、声が、曇る。
「一点に集中しすぎて」
「……」
「周りが、見えんようになってのう」
ドゴォォォォォォン!!
【視野喪失結界】
発動。
世界中で。
「一つのことに集中しすぎて、他が見えなくなる」という偏りが、強まる。
『仕事ばかりで、家族との時間がない』
『一つの趣味に、のめり込みすぎる』
『大事なことが、視界から消えていく』
四郎自身も、目の前のことだけに、囚われそうになる。
HP
36000000
↓
19000000
サイ
「わしはな」
「……」
「一つのことを、極めるのが、得意なんじゃ」
「……」
「じゃが」
「極めれば極めるほど」
「他のことが、おろそかになってのう」
「……」
「大事な人を」
「見落としてしもうたこともある」
四郎は、考えた。
これは。
ヒトメの「正解探し」とも、少し似ている。
だが。
サイの場合は。
集中することそのものが、悪いわけではなかった。
四郎
「サイ」
「……」
「一点に集中するのは、悪いことじゃないと思う」
「……」
「ただ」
「たまに、目を、ぐるっと、動かしてみないか」
サイ
「ぐるっと?」
四郎
「うん」
「……」
「一つを見たら」
「一回、周りも、見渡してみる」
「……」
「それだけで、いいんじゃないか」
静寂。
サイの、一つ目が、ゆっくりと、動き始めた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第三十四奥義。
湿拳・視野巡らせ拳
効果。
『一点集中による視野の狭まりを、定期的な視野の巡らせで、バランスさせる』
『集中力を否定せず、周囲とのバランスを取る術を示す』
四郎
「行くぞ!」
サイ
「わし、一点しか、見れんのじゃ!」
四郎
「たまに、ぐるっと、見渡せばいいぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
サイの一つ目が、ゆっくりと、周囲を、見渡し始めた。
サイ
「わし……」
「……」
「こんなに、いろんなものが、あったんじゃのう」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【サイを浄化した】
経験値+400
笑石のかけら獲得
称号獲得
『視野を巡らせた者』
四郎
「三十四体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、西洋区も、終盤じゃのう」
四郎
「あと、四十二体……」
その時。
地面の下から。
ずるりと、何かが、這い出てきた。
京言葉の、しつこい声。
ゾンビ・ゾン太
「おおきに」
「……うち、しつこいネタの繰り返しが、得意どすけど」
「……繰り返しすぎて、自分でも、飽きてきましたわ」




