第三十二話 キマ子と内なる対立
三つの頭を持つ、奇妙な獣。
広島弁の、賑やかな声。
キマイラ・キマ子。
キマ子
「うちはな」
「多役一人コントが、得意なんよ」
「ライオンの頭、ヤギの頭、蛇の頭」
「三つで、それぞれ、別のキャラ、演じるんよ」
四郎
「器用だな」
キマ子
「ばってん」
「最近、三つの頭の意見が」
「バラバラで、まとまらんのよ」
ドゴォォォォォォン!!
【内なる対立結界】
発動。
世界中で。
「自分の中の、複数の気持ちが、対立する」という葛藤が、強まる。
『頭では分かってるのに、心が納得しない』
『やりたいことと、やるべきことが、ぶつかる』
『自分の中に、矛盾した気持ちが、いくつもある』
四郎の中にも、その葛藤が、生まれる。
HP
39000000
↓
22000000
キマ子
「ライオンの頭は」
「『前に進め』言うし」
「……」
「ヤギの頭は」
「『慎重にせえ』言うし」
「……」
「蛇の頭は」
「『どっちでもええ』言うんよ」
「もう、うち、どうしたらええか、分からんのよ」
四郎は、考えた。
これは。
タマモの「多面性」とは、少し違う問題だった。
タマモは、複数の自分を、認めることで、解決した。
だが。
キマ子の場合は。
複数の自分が、対立している。
四郎
「キマ子」
「……」
「三つの意見、全部、聞いてみたか?」
キマ子
「聞いとるよ、いつも」
四郎
「でも」
「対話は、してないんじゃないか」
「……」
「三つの頭で、ちゃんと、話し合ってみたら」
「どうかな」
静寂。
キマ子の三つの頭が、お互いを、見つめ合った。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第三十二奥義。
湿拳・内なる対話拳
効果。
『心の中の対立する気持ちを、対話によって調和させる』
『矛盾を、無理に統一せず、話し合わせることで、納得を生む』
四郎
「行くぞ!」
キマ子
「三つの頭が、バラバラなんよ!」
四郎
「お互いに、話してみればいいだろぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ライオンの頭と、ヤギの頭と、蛇の頭が、初めて、ゆっくりと、話し始めた。
「前に進みたいんよ、わし」
「分かった、ほな、慎重に進もうや」
「うち、それでええよ」
キマ子
「あら……」
「……」
「ちゃんと、話したら、まとまるもんなんね」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【キマ子を浄化した】
経験値+450
笑石のかけら獲得
称号獲得
『心の中で対話した者』
四郎
「三十二体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、もう、半分近いのう」
四郎
「あと、四十四体……」
霧の奥から。
牛の頭を持つ、巨大な影が、ゆっくりと、現れた。
土佐弁の、低い声。
ミノタウロス・ミノ
「あんた、うちの、迷路から」
「ちゃんと、抜け出せるかね」




