第三十一話 バジと圧の後の沈黙
標準語の、低い声。
寡黙な、蛇のような姿。
バジリスク・バジ。
バジ
「俺は」
「一目で、相手を黙らせる」
「それが、芸だ」
四郎
「強烈そうだな」
バジ
「……」
「だが」
少し、間がある。
「黙らせた後」
「俺は、何も、話せない」
「……」
「圧をかけることしか、できないんだ」
ドゴォォォォォォン!!
【沈黙の後結界】
発動。
世界中で。
「強い印象を与えた後、どう続けていいか分からない」という戸惑いが、広がる。
『第一印象は強いのに、その後、関係が深まらない』
『圧倒した後、何を話せばいいか分からない』
『場を支配する力はあるのに、心を開く方法を知らない』
四郎自身も、人との距離の詰め方に、少し、悩むことがあった。
HP
34000000
↓
18000000
バジ
「俺は」
「……」
「強さで、関わってきた」
「……」
「でも」
「強さだけじゃ」
「誰とも、本当には、繋がれない」
四郎は、考えた。
バジは。
人を遠ざける力は、強い。
だが。
近づく力は、持っていなかった。
四郎
「バジ」
「……」
「圧をかけた後」
「『なあ』って、一言、声をかけてみたらどうだ」
バジ
「『なあ』……?」
四郎
「うん」
「……」
「それだけで、十分、始まる気がする」
静寂。
バジの体から、緊張が、わずかに、緩んだ。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第三十一奥義。
湿拳・一言から拳
効果。
『圧倒した後の沈黙を、小さな一言で、繋がりに変える』
『強さの後に、優しさを添える術を示す』
四郎
「行くぞ!」
バジ
「俺、黙らせた後、何も言えない!」
四郎
「『なあ』の一言から、始めればいいぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
バジの口が、ゆっくりと、動き始める。
バジ
「な、なあ……」
四郎
「お、ちゃんと言えたじゃん」
バジ
「……」
「これだけで、いいのか」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【バジを浄化した】
経験値+370
笑石のかけら獲得
称号獲得
『一言から始める者』
四郎
「三十一体目……!」
その時。
霧の中から、複数の頭を持つ、奇妙な獣が、現れた。
広島弁の、賑やかな声。
キマイラ・キマ子
「あんた、なかなかやるねぇ」
「うちは、三つの頭で、三役同時にやるんよ」
「……でも」
「三つとも、本音がバラバラで、困っとるんよ」




