第二十八話 ワイ太と見栄の代償
空から、ふわりと、舞い降りる。
山梨方言の、明るい声。
ワイバーン・ワイ太。
ワイ太
「俺、空中ロケ、得意なんさ」
「いつも、SNSで、すげー反応もらうだよ」
四郎
「映えそうだもんな」
ワイ太
「だらー?」
「……」
「でも」
少し、声が、小さくなる。
「実は、撮影の裏で」
「何度も、失敗してて」
「……」
「うまくいったところだけ、見せてるんさ」
ドゴォォォォォォン!!
【見栄結界】
発動。
世界中で。
「うまくいっているように見せたい」という見栄が、強まる。
『失敗は、見せたくない』
『成功している自分だけを、発信したい』
『裏側の苦労は、隠したい』
四郎自身も、SNS的な見栄を、意識し始める。
HP
36000000
↓
19000000
ワイ太
「俺、すごいって、言われたいんさ」
「……」
「でも」
「実際の俺は」
「全然、すごくないんさ」
「……」
「ギャップが、苦しいんさ」
四郎は、考えた。
これは。
比較魔神コンペアに、少し似ている。
だが。
今回は、他人との比較ではなく、自分自身の「見せ方」への悩みだった。
四郎
「ワイ太」
「……」
「失敗してるところも、見せてみたら」
「……」
「もっと、近づける気がするけどな」
ワイ太
「失敗、見せても、いいんかい?」
四郎
「うん」
「……」
「うまくいった結果より」
「頑張ってる過程の方が」
「実は、応援したくなるもんだよ」
静寂。
ワイ太の羽が、わずかに、力を抜いた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第二十八奥義。
湿拳・過程公開拳
効果。
『見栄による「成功だけの発信」を、過程も含めた発信に変える』
『失敗を見せる勇気が、信頼を生むことを示す』
四郎
「行くぞ!」
ワイ太
「俺、すごいところしか、見せたくないんさ!」
四郎
「失敗してる過程も、ちゃんとカッコいいぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ワイ太の飛び方が、少し不格好になりながらも、自然になっていく。
ワイ太
「俺……」
「……」
「失敗込みで、撮ってみるだよ」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【ワイ太を浄化した】
経験値+380
笑石のかけら獲得
称号獲得
『過程を見せる者』
四郎
「二十八体目……!」
その時。
霧の中から、優雅な、混成の獣が、現れた。
標準語の、落ち着いた声。
グリフォン・グリ
「次は、わたし」
「ハイブリッド漫才師、グリと申します」
「ただ、半分ずつの自分に、悩んでまして」




