第二十三話 ゴブ太と下積みの無力感
霧の中。
小柄な、緑色の体。
沖縄語の、元気な声。
ゴブリン・ゴブ太。
だが。
その声の奥に。
少し、焦りが滲んでいた。
ゴブ太
「俺、まだ、下積みなんスよ」
「……」
「先輩方は、もう、活躍してるのに」
「俺だけ、ずっと、同じ場所にいる気がして」
ドゴォォォォォォン!!
【無力感結界】
発動。
世界中で。
「自分だけ、取り残されている」という焦りが、広がる。
『同期は、もう活躍してる』
『自分だけ、進歩がない』
『いつまで、この下積みが続くんだろう』
四郎自身も、社会人一年目の頃の、焦りを思い出す。
HP
35000000
↓
18000000
ゴブ太
「俺、頑張ってるつもりなんスけど」
「……」
「結果が、出なくて」
「……」
「みんなに、置いていかれてる気がして」
四郎は、ゴブ太の、小さな体を見つめた。
四郎
「ゴブ太」
「……」
「下積みって、無駄じゃないと思う」
ゴブ太
「でも、結果、出てないっス」
四郎
「結果が出てなくても」
「……」
「積み重ねてるものは、絶対あるよ」
「……」
「焦らなくても、いい」
静寂。
ゴブ太の体が、わずかに、力を抜いた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第二十三奥義。
湿拳・積み重ね拳
効果。
『焦りを、地道な積み重ねへの信頼に変える』
『今、結果が出なくても、無駄ではないと示す』
四郎
「行くぞ!」
ゴブ太
「俺、置いていかれそうなんスよ!」
四郎
「今の積み重ね、絶対無駄じゃないぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ゴブ太の表情から、焦りが、少しずつ、消えていく。
ゴブ太
「俺……」
「……」
「もう少し、頑張ってみます」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【ゴブ太を浄化した】
経験値+360
笑石のかけら獲得
称号獲得
『焦らず積む者』
四郎
「二十三体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、西洋区も、順調じゃのう」
四郎
「ここからは、まだまだ長いんだよな……」
霧の奥に。
無数の気配が、揺らめいている。
四郎は、改めて、拳を握り直した。




