第二十話 ナマコと執着の正体
ぬるり、ぬるり。
足元から、絡みつくような気配。
生霊・ナマコ。
その芸風は。
ストーカー系モノマネ。
ナマコ
「あなたの真似」
「……」
「ずっと、してました」
「……」
「あなたの動き」
「あなたの言葉」
「あなたの考え方まで」
四郎
「めちゃくちゃ怖いんだけど!?」
ナマコ
「だって」
「……」
「あなたみたいに、なりたかったから」
ドゴォォォォォォン!!
【執着結界】
発動。
世界中で。
「誰かのようになりたい」という執着が、強まる。
『あの人みたいになりたい』
『あの人の真似をすれば、うまくいく』
『自分らしさより、憧れの人になりたい』
そんな思いが、人々の個性を、塗りつぶしていく。
四郎自身の動きも、急に、誰かの真似のように、ぎこちなくなる。
HP
35000000
↓
18000000
ナマコ
「あなたは」
「……」
「いつも、誰かのために、頑張ってる」
「……」
「それが、すごく、輝いて見えて」
「……」
「だから、真似すれば」
「……」
「わたしも、輝けるかもって、思った」
四郎は、ナマコの声に、寂しさを感じた。
四郎
「ナマコ」
「……」
「真似しても」
「……」
「お前自身には、なれないと思う」
ナマコ
「……」
「じゃあ、わたしは」
「何になれば」
四郎
「お前自身に、なればいいんじゃないか」
「……」
「真似した部分の、奥にある」
「お前だけのもの、探してみないか」
静寂。
ナマコの粘り気が、わずかに、和らいだ。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第二十奥義。
湿拳・自分探し拳
効果。
『他人への執着を、自分自身への興味に変える』
『憧れと、自分らしさを、両立させる道を示す』
四郎
「行くぞ!」
ナマコ
「わたし、あなたになりたかった!」
四郎
「お前は、お前のままで、いいんだぁぁぁぁぁ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ナマコの体が、ゆっくりと、自分の形を、取り戻していく。
ナマコ
「わたし……」
「……」
「自分の真似、してみようかな」
四郎
「それ、すごくいいと思う」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【ナマコを浄化した】
経験値+400
笑石のかけら獲得
称号獲得
『自分自身を選んだ者』
四郎
「二十体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、もう二十体じゃのう」
四郎
「あと、五十六体……」
その時。
砂浜の彼方から。
古い映写機のような音が、響いてきた。
標準語の、ノスタルジックな声。
亡霊クリエイター・レイコ
「ねえ」
「……」
「昔の映像、見てくれない?」
「わたしの、全部が、詰まってるから」




