第十九話 シズカと存在感のなさ
薄く、透き通った、人影。
幽霊・シズカ。
その声は、ほとんど、聞こえない。
四郎
「えっ、ごめん、何か言った?」
シズカ
「……」
「やっぱり、聞こえてないですよね」
四郎
「いや、聞こえなかっただけで!」
シズカ
「……」
「いつも、そうなんです」
「わたしの芸は」
「間芸って、いうんですけど」
「……」
「間を、大事にしすぎて」
「……」
「気づいたら、誰にも、気づかれなくなってて」
ドゴォォォォォォン……
弱々しく。
結界が、発動する。
【存在感消失結界】
発動。
世界中で。
「自分の存在が、薄い」と感じる人が、増える。
『誰にも気づかれない』
『輪に入れない』
『いてもいなくても、同じ』
そんな寂しさが、静かに、広がっていく。
四郎の輪郭も、わずかに、薄くなる。
HP
30000000
↓
15000000
四郎
「(おれの体、薄くなってる……?)」
シズカ
「ごめんなさい」
「……」
「こんな、弱い攻撃で」
「……」
「強く出ることすら、できなくて」
四郎は、その声に、耳を、すませた。
小さな、小さな声。
でも。
確かに、そこにあった。
四郎
「シズカ」
「……」
「聞こえてるよ」
「……」
「ちゃんと」
シズカ
「……」
「本当に?」
四郎
「うん」
「……」
「声が小さくても、ちゃんと、届いてる」
「……」
「存在感は、声の大きさじゃないと思う」
静寂。
シズカの輪郭が、わずかに、はっきりし始めた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第十九奥義。
湿拳・気づく拳
効果。
『目立たない存在に、気づく心を育てる』
『静かな声にも、ちゃんと耳を傾ける姿勢を示す』
四郎
「行くぞ!」
シズカ
「……わたし、いますか」
四郎
「いるよ、ちゃんと見えてるぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
シズカの姿が、はっきりと、輪郭を取り戻していく。
シズカ
「わたし……」
「……」
「見てもらえたの、久しぶりです」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【シズカを浄化した】
経験値+350
笑石のかけら獲得
称号獲得
『気づかれた者』
四郎
「十九体目……!」
その時。
足元の砂が、ぬるりと、動いた。
標準語の、粘り気のある声。
生霊・ナマコ
「あなたのこと」
「……」
「ずっと、見てました」
四郎
「ストーカー系じゃん!」




