第十八話 カマイと衝動への後悔
鋭い風。
標準語の、低い声。
鎌鼬・カマイ。
姿は、ほとんど見えない。
ただ。
風だけが、四郎の周りを、切り裂くように、駆け抜ける。
カマイ
「俺は、瞬発ネタ専門だ」
「考える前に、決める」
「それが、俺の芸だ」
四郎
「速そうだな」
カマイ
「速い」
「……」
「だが」
「速すぎて」
「……」
「後で、後悔することが、多い」
ドゴォォォォォォン!!
【衝動結界】
発動。
世界中で。
考える前に、行動してしまう衝動が、強まる。
『カッとなって、言い返してしまう』
『勢いで、決めてしまう』
『後から、しまったと思う』
四郎の体も、急に、突き動かされそうになる。
HP
38000000
↓
21000000
カマイ
「俺はな」
「……」
「昔、一瞬の判断で」
「……」
「大事な人を、傷つけたことがある」
「……」
「あの時、もう少し、考えていれば」
「……」
「違ったかもしれない」
「……」
「でも」
「俺は、止まれなかった」
四郎は、風の中で、必死に、声を絞り出した。
四郎
「カマイ」
「……」
「速いのは、悪いことじゃないと思う」
「……」
「でも」
「一瞬、立ち止まる時間を、自分に許してもいいんじゃないか」
静寂。
風の勢いが、わずかに、弱まった。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第十八奥義。
湿拳・一拍置き拳
効果。
『衝動的な行動の前に、一拍の間を置く力を育てる』
『速さを否定せず、コントロールする術を示す』
四郎
「行くぞ!」
カマイ
「俺は、止まれない!」
四郎
「一拍だけでいい、待ってみろぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
風が、ゆっくりと、穏やかになっていく。
カマイ
「俺……」
「……」
「少しだけ、待てそうだ」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【カマイを浄化した】
経験値+390
笑石のかけら獲得
称号獲得
『一拍を学んだ者』
四郎
「十八体目……!」
その時。
すうっと。
何もないはずの空間に。
薄い、人影が浮かんだ。
標準語。
ほとんど、聞き取れないほど、小さな声。
幽霊・シズカ
「……あの」
「わたし、いますか」




