第十七話 ハンニャと怒りに隠れた悲しみ
般若の面。
栃木弁。
その表情は。
怒っているように、見える。
だが。
四郎は、何か、違和感を覚えた。
ハンニャ
「わだしの芸はね」
「表情圧、言うんだわ」
「睨むだけで、相手を黙らせる」
四郎
「強そうだ」
ハンニャ
「ばってん」
「実はね」
「これ」
「怒ってるんじゃ、ねぇんだわ」
ドゴォォォォォォン!!
【表情誤解結界】
発動。
世界中で。
「怒っているように見える人」への、誤解が広がる。
『あの人、いつも怒ってる』
『近寄りがたい』
『機嫌が悪いんだろう』
そんな決めつけが、人と人の間に、壁を作っていく。
四郎自身も、ハンニャの顔を見て、最初、怖がってしまったことを思い出した。
HP
36000000
↓
19000000
ハンニャ
「わだしのこの顔ね」
「……」
「本当は」
「悲しい時の顔、なんだわ」
四郎
「えっ」
ハンニャ
「昔から、悲しいと」
「……」
「こういう顔に、なっちまうんだわ」
「……」
「だから、みんな、わだしのこと」
「怒ってると、誤解するんだわ」
「……」
「それが、もっと、悲しいんだわ」
四郎は、ハンニャの顔を、もう一度、よく見た。
確かに。
睨んでいるように見える、その目の奥に。
何か、湿った光があった。
四郎
「ハンニャ」
「……」
「お前、本当は、すごく繊細なんだな」
ハンニャ
「……」
「わかってくれるんけ」
四郎
「うん」
「……」
「顔だけ見て、決めつけてごめん」
静寂。
ハンニャの面が、わずかに、緩んだ。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第十七奥義。
湿拳・表情の奥拳
効果。
『見た目の表情ではなく、その奥にある感情を見ようとする心を育てる』
『誤解されてきた孤独を、理解で包む』
四郎
「行くぞ!」
ハンニャ
「わだし、怒ってるんじゃ、ねぇんだわ!」
四郎
「分かってる、悲しかったんだろぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ハンニャの面の表情が、少しずつ、和らいでいく。
ハンニャ
「わだし……」
「……」
「初めて、分かってもらえたんだわ」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【ハンニャを浄化した】
経験値+400
笑石のかけら獲得
称号獲得
『表情の奥を見た者』
四郎
「十七体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、だいぶ、慣れてきたのう」
四郎
「慣れと、疲れが、同時に来てる感じだ」
その時。
風が、急に、鋭く吹いた。
標準語の、低い声。
鎌鼬・カマイ
「次は、俺だ」
「瞬発勝負だ」
「考える前に、決着をつけるぞ」




