第十六話 ウミボと見えない不安
海面が、ゆっくりと、盛り上がる。
巨大な、黒い影。
与那国語風の言葉。
海坊主・ウミボ。
その姿は。
はっきりとは、見えない。
常に、霧のように、ぼやけている。
ウミボ
「ワンの芸はさー」
「暗転演出、得意さー」
「真っ暗にして、みんなを驚かせるわけさー」
四郎
「真っ暗、苦手なんだよな……」
ウミボ
「ンー……それ、誰でも苦手さー」
「だってさー」
「見えないものは」
「怖いさー」
ドゴォォォォォォン!!
【見えない不安結界】
発動。
世界中で。
「見えないもの」への不安が、広がる。
『将来が見えない』
『相手の本心が見えない』
『この先、どうなるか分からない』
そんな霧のような不安が、人々を包む。
四郎の視界も、急に、ぼやける。
HP
40000000
↓
23000000
四郎
「(何も見えない……!)」
ウミボ
「ワンも、ずっとそうさー」
「……」
「自分の姿、はっきり見えたことないさー」
「……」
「ぼんやりしてるから、みんな、ワンを怖がるさー」
「……」
「それが、寂しいさー」
四郎は、見えない中で、声の方向に、語りかけた。
四郎
「ウミボ」
「……」
「見えなくても」
「……」
「声、ちゃんと聞こえてるよ」
ウミボ
「……」
「ンー……」
四郎
「全部、見えなくてもさ」
「……」
「分かることも、あるんじゃないか」
静寂。
霧の向こうで。
ウミボの輪郭が、わずかに、はっきりし始めた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第十六奥義。
湿拳・見えなくても拳
効果。
『「見えない」ことへの恐怖を、「分からなくても進める」勇気に変える』
『不確かなものを、受け入れる強さを与える』
四郎
「行くぞ!」
ウミボ
「ワンの姿、誰にも見えないさー!」
四郎
「見えなくても、ちゃんと感じてるぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
霧が、ゆっくりと、晴れていく。
ウミボの姿が、はっきりと、見えるようになる。
それは。
思ったより、優しい顔をしていた。
ウミボ
「ワン……」
「……」
「ちゃんと、見てもらえたさー」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
波が、穏やかに、引いていった。
【ウミボを浄化した】
経験値+380
笑石のかけら獲得
称号獲得
『見えなくても進む者』
四郎
「十六体目……!」
その時。
砂浜の奥から。
ゆらりと、何かが立ち上がった。
栃木弁の、般若の面。
ハンニャ
「次は、わだしね」
「怒ってるみてぇに見えっけど」
「……」
「ちっと、違うんだわ」




