第十五話 タヌ吉と嘘をつき続ける疲れ
ぽてぽてと、歩く狸。
タヌ吉。
標準語。
人懐っこい顔。
だが。
その顔さえも。
本物かどうか、分からない。
タヌ吉
「おいら、変装ドッキリ専門なんだ」
「いろんな姿に化けて、みんなを驚かせるのが仕事さ」
四郎
「楽しそうじゃん」
タヌ吉
「うん」
「……」
「でも、最近」
「……」
「素の自分が、どんな顔だったか」
「忘れちゃってさ」
ドゴォォォォォォン!!
【仮面疲労結界】
発動。
世界中で。
「素を出すこと」が、できなくなる。
『場に合わせたキャラを演じる』
『本音を隠して、求められる自分でいる』
『気づいたら、いつも誰かのための顔をしている』
四郎の表情も、急に、ぎこちなくなる。
HP
37000000
↓
20000000
タヌ吉
「おいら、最初は」
「……」
「みんなを楽しませたくて、化けてたんだ」
「……」
「でも」
「いつしか」
「化けてないと、嫌われる気がして」
「……」
「ずっと、誰かになり続けてる」
四郎は、自分にも、似たような経験があったことを思い出した。
正解を求めて。
期待に応えて。
ずっと、誰かのための自分を、演じてきた時期があった。
四郎
「タヌ吉」
「……」
「化けるの、楽しいか?」
タヌ吉
「……」
「最初は、楽しかった」
「……」
「今は」
「分からない」
四郎
「だったら」
「……」
「一回、素のまま、立ってみないか」
静寂。
タヌ吉の体が、わずかに、震えた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第十五奥義。
湿拳・素のまま拳
効果。
『演じ続ける疲れを、素のままでいる安心に変える』
『「化けなくても、受け入れられる」と示す』
四郎
「行くぞ!」
タヌ吉
「おいら、化けてないと、何者でもない気がするんだ!」
四郎
「化けなくても、お前は、お前だぁぁぁぁぁ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
タヌ吉の姿が、ゆっくりと、ぼやけて、もとの姿に戻っていく。
それは。
少し、不格好で。
でも。
確かに。
タヌ吉自身の姿だった。
タヌ吉
「おいら……」
「……」
「こんな顔、してたんだな」
四郎
「いい顔だよ」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【タヌ吉を浄化した】
経験値+370
笑石のかけら獲得
称号獲得
『素のままを選んだ者』
四郎
「十五体目……!」
その時。
海の方から。
低く、響く声がした。
与那国語風の。
海坊主。
ウミボ
「ンー……次は、ワン」
「ただし」
「ワンの相手、見えないかもしれないさー」




