第十四話 タマモと本当の自分
九つの、ふさふさした尾。
優雅な、たたずまい。
九尾の狐・タマモ。
タマモ
「わたくし」
「……」
「九つの人格を、同時に演じられますの」
四郎
「すごい特技だな」
タマモ
「ええ」
「……」
「でも」
少し、影が差す。
「最近」
「……」
「どれが、本当のわたくしか」
「……」
「分からなくなってきましたの」
ドゴォォォォォォン!!
【多重人格結界】
発動。
世界中で。
「本当の自分」が、見えなくなる。
『職場での自分』
『家族の前の自分』
『友達といるときの自分』
『SNS上の自分』
どれが本物なのか。
分からなくなる。
四郎自身も。
少し、混乱する。
HP
40000000
↓
22000000
四郎
「これ、結構、現代的な悩みだ……」
タマモ
「わたくし」
「……」
「九つの役を、完璧に演じてきましたの」
「……」
「でも」
「演じれば演じるほど」
「……」
「素のわたくしが、どこにいるのか」
「分からなくなって」
四郎は、考えた。
これは。
合わせ面(笑界漂流記前の作品にあった敵)にも、似ている悩みだった。
だが。
タマモの場合は。
仮面ではなく。
すべてが、本当の自分の一部だった。
四郎
「タマモ」
「……」
「九つとも」
「……」
「全部、お前なんじゃないか」
タマモ
「え?」
四郎
「一つに絞らなくても」
「……」
「九つ全部、お前だってことで、いいんじゃないか」
静寂。
タマモの九つの尾が、ふわりと、揺れた。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第十四奥義。
湿拳・多面肯定拳
効果。
『複数の自分を、矛盾としてではなく、豊かさとして認めさせる』
『「本当の自分は一つ」という思い込みをほどく』
四郎
「行くぞ!」
タマモ
「わたくし、どれが本物か分からないの!」
四郎
「全部本物だぁぁぁぁぁ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
タマモの九つの尾が、それぞれ、別の色に輝き始める。
それは。
矛盾ではなく。
調和だった。
タマモ
「わたくし……」
「……」
「九つとも、わたくしで、よかったのね」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【タマモを浄化した】
経験値+450
笑石のかけら獲得
称号獲得
『多面性を受け入れた者』
四郎
「十四体目……!」
ヌラリ翁
「お前さん、もう折り返しが見えてきたのう」
四郎
「いや、まだ六十二体残ってる……」
その時。
砂浜の奥から。
ぽてぽてと、小さな狸が、歩いてきた。
標準語の、変装芸人。
タヌ吉
「よっ、兄ちゃん」
「次はおいらの番だぜ」
「ただし」
「おいら、本当の姿、見せたことないんだ」




