第十二話 ユキとスベることへの恐怖
冷たい、白い気配。
雪女・ユキ。
標準語。
静かな声。
ユキ
「わたし、スベり芸専門なの」
「……」
「でも」
「最近、本当にスベるだけになってきて」
「……」
「ウケなくて、つらい」
四郎
「自虐ネタ的な感じ?」
ユキ
「違う」
「……」
「本当に、スベってるの」
四郎
「ガチなのか!」
ドゴォォォォォォン!!
【失敗恐怖結界】
発動。
世界中で。
「失敗したらどうしよう」という恐怖が、人々の動きを止める。
『また失敗するかもしれない』
『また笑われるかもしれない』
『もう挑戦したくない』
四郎の動きも、急に、慎重になりすぎる。
HP
35000000
↓
20000000
四郎
「うっ……動きが、固くなる……」
ユキは、静かに、語り始めた。
ユキ
「わたし、昔は」
「……」
「本気で、笑いを取りに行ってた」
「……」
「でも、何度もスベって」
「……」
「いつしか、挑戦すること自体が、怖くなった」
「……」
「今は、スベることを、芸にしてる」
「……」
「失敗する前に、自分から失敗してみせれば」
「……」
「傷つかなくて、済むから」
四郎は、その言葉に、何かを感じた。
四郎
「ユキ」
「……」
「それ、オレも分かるよ」
「……」
「先に失敗しとけば、安心っていう気持ち」
ユキ
「……分かるの?」
四郎
「うん」
「……」
「でも」
「本気で挑戦して、本気でスベった方が」
「……」
「実は、ちゃんと笑いになるんじゃないかな」
静寂。
ユキの周りの冷気が、少しだけ、和らいだ。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第十二奥義。
湿拳・本気の失敗拳
効果。
『失敗を先取りする防御姿勢を、本気の挑戦に変える』
『傷つく覚悟を持つことの強さを示す』
四郎
「行くぞ!」
ユキ
「わたし、また、スベるかもしれない」
四郎
「スベってもいい、本気でやればぁぁぁぁぁ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ユキの冷気が、ゆっくりと、雪のように、優しく降り注ぐ。
ユキ
「わたし……」
「……」
「もう一回、本気で、挑戦してみる」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
辺りに、薄く、白い結晶が舞った。
【ユキを浄化した】
経験値+400
笑石のかけら獲得
称号獲得
『本気で挑む者』
四郎
「十二体目……!」
その時。
砂の中から。
しなやかに、何かが現れた。
土佐弁の。
化け猫。
バケコ
「あんた、なかなかやるねや」
「うちと、勝負せん?」




