第十一話 ロクロナと伸びすぎる不安
長い、長い首。
ぐにゃりと、うねりながら。
四郎を見下ろしている。
北九州弁の。
ロクロナ。
ロクロナ
「うちの芸はな」
「首伸ばしリアクションたい」
「驚かせるのが、仕事ばい」
四郎
「分かりやすい芸だな」
ロクロナ
「ばってん」
「うち、伸ばしすぎて」
「……」
「戻らんようになることが、あるったい」
四郎
「えっ、それ大丈夫なのか?」
ロクロナ
「大丈夫じゃなかけん、悩んどう」
ドゴォォォォォォン!!
【伸びすぎ結界】
発動。
世界中で。
「目立とう」とする心が、暴走する。
『もっと目立たなきゃ』
『もっとアピールしなきゃ』
『普通じゃ、誰も見てくれない』
そんな焦りが、人々を、過剰な行動へ駆り立てる。
四郎の言動も、急に大げさになりかける。
四郎
「うわっ、なんか、声でかくなる……!」
HP
37000000
↓
18000000
ロクロナ
「目立たな、忘れられるったい」
「……」
「うち、ずっとそう思っとった」
「……」
「でも」
「伸ばしすぎて」
「……」
「自分が、どこまでが自分なのか」
「分からんようになったとよ」
四郎は、ロクロナの長い首を見つめた。
四郎
「なあ、ロクロナ」
「……」
「目立つのと、伸びすぎるのは、違うと思う」
ロクロナ
「どう違うとや」
四郎
「目立つのは、自分のまま、輝くことだろ」
「……」
「でも伸びすぎるのは」
「……」
「自分を見失ってまで、誰かの反応を求めることだと思う」
静寂。
ロクロナの首が、わずかに、縮んだ。
四郎の胸の七つの傷が、輝く。
ドクン。
ドクン。
笑界編・第十一奥義。
湿拳・等身大拳
効果。
『過剰なアピールを、等身大の自分に戻す』
『「ありのままでも、見てもらえる」と気づかせる』
四郎
「行くぞ!」
ロクロナ
「うち、伸ばさな、誰も見てくれんとよ!」
四郎
「伸ばさなくても、ちゃんと見てるぞぉぉぉぉぉ!!」
ズガァァァァァァァァァン!!
直撃。
世界が光る。
ロクロナの長い首が、ゆっくりと、もとの長さに戻っていく。
ロクロナ
「うち……」
「……」
「こんくらいの長さでも、よかったとね」
四郎
「うん、十分だよ」
ぽたり。
ぽたり。
どばぁぁぁぁぁぁ!!
湿拳洪水発生。
【ロクロナを浄化した】
経験値+360
笑石のかけら獲得
称号獲得
『等身大を選んだ者』
四郎
「十一体目……!」
その時。
浜辺の波打ち際から。
しんしんと。
冷たい気配が、近づいてきた。
標準語の、静かな声。
雪女・ユキ
「……次は、わたし」
「ただし」
「すべるかもしれないけど」




