十五.「麻婆豆腐・其の参」
「小鳥」
再び麒麟宮へと向かう道中──
「蓮幻さん、どうして此処に?」
「可愛い小鳥がそろそろ来る頃かな~っと、思ってね」
「ス、ストーカー!?。だ、誰かーーーーッ!!!」
「なんでそーなるのっ。麒麟宮へのお供を渡しに来たんだよ」
(は?…お供?)
そう言って手渡されたのは、鶯の文様が施された若草色の箸だった。
「うぐいすの柄だ…可愛いかも───」
「その箸は、小鳥を護ってくれると思うから…、絶対手放さないようにね。」
いつになく真剣な表情をしていた。
普段はヘラヘラしているのに、今日はどうしたのか
「いつもの蓮幻さんじゃないみたいですね…。」
「……本当の僕は、最低な人間だよ。結局───僕も先帝と同じなのかもしれないな……」
蓮幻が消え入るようにぼそりと呟く。どういう事か問いただそうとした瞬間、優しく抱き締められた。
「ちょっ……」
黄榴の為に作った麻婆豆腐が乗った盆を持っていた為突き飛ばす事も出来ず、すずめは立ち尽くすことしか出来なかった。
「小鳥───必ず護るから…」
「レ…蓮幻さん───」
ガンッ!!!!!──────と、股間に足蹴りが命中し、すずめはそのまま麒麟宮に向かって走り出した。
後宮内には蓮幻の悲鳴が響き、夕餉の支度をしていた食婦達は「あらあら、なんかやらかしたのかしら」と、笑っていたそうな。
。。。
麒麟宮へとやってきた───が、なんだか様子がおかしい。
侍女達は何かに怯えるように、黄榴妃の部屋へと案内をする。
「あれ、そういえば夕さんは居ないんですか?」
「………!」
侍女は無言だが、表情は何か言いたそうにしている。
「お……おに……げ───」
「ん?おこげ?」
「ッ!………」
案内をしてくれた侍女は、逃げるように去ってしまった。
まあ、いいか…と、思いながら扉に手をかけた。
「すみませーん!黄榴様ー!お食事をお届けに参りましたーー!」
ガチャリ───……と、開けると、床に倒れた血まみれの夕を見下ろす黄榴の姿があった。
「シ、夕さんッ!!」
「……この世は裏切りで溢れている───此奴もその一人だった。」
「ファ…黄榴様!!、今、藍幻さんを呼んできます!!──」
然し、すずめは身体が動かなかった。
「な…なんで身体が…」
ガシャンッ!!!と、盆が落ちた。
麻婆豆腐が床に飛び散る。
「お前に恨みはないが…───その力は厄介だ。」
「貴方……───誰……」
黄榴妃はすずめの首に手をかける。
「琵琶───」




