小話.槐
ちょっと休憩の槐君視点です。
ほの暗い屋敷の中を進んでいく。
長い廊下を歩き続け、目的の部屋に到着すると障子越しに声をかけた。
「只今戻りました」
中から返事はなく、その代わり音も無く障子が開く。
「失礼致します」
僕は断りをいれ中に入る。
大広間の一番奥に主が座っていた。
外と同様に部屋の中は暗い。
しかし、その中で紅く光る二つの瞳が確かに見える。
そのまま進み、主の3歩前で跪き頭を垂れた。
「荻と椿はどうした」
「はい、無事です。僕が戻って来た時には気配がありましたから、敷地内には居るかと」
ため息が一回聞こえてくる。
「……奈落に自我が宿るのは稀だが――消える恐怖も宿らせておきたいものだな」
「そう、ですね……全ては“存在する為に”ですから」
そうだ……全ては、消えない為。
ここで消える訳にはいかないんだ。
その為に、この仮面も授けて頂いたのだから。
「槐」
「はい」
主が誰を気にしているか、僕にはすぐ分かる。
その人物との出来事が思い出されていく。
(私は、青葉ヒナタっていいます。今日で17歳になりました)
――そんなのどうでもいいし。
(い、いやあああああーっ!)
――ちょっと、いきなり殺されそうになるとかどんだけ?
(ツンデレには、デレも必要なの)
――何それ……僕の何処がツンなのさ。
(あれ? 槐君? 槐君何処に行ったの!?)
――――。
(蛍さん、……痛っ! お願いっ、やめて!)
――何、やってんのさ……。
(……)
――早く行きなよ。人形までこっち見てるだろ。
ヒナタとの会話を思い出し、頭の中で整理する。
――。
――――。
――――――。
何で…何で――――そんなにバカなのさ!?
有り得ないよね!?
初対面にホイホイ付いてく警戒心の無さ!
ちょっとは警戒しなよ!
頭の中に、何とかなるさ的な思考回路入ってんじゃないの!?
しかも、殺されかけたくせに、その相手と言い合いしちゃってるし!?
死にたいの!?
初対面に近いのに“槐君”とか嬉しそうに呼ぶし、僕の事捜そうとするし――。
調子狂うし、イライラするから意味が分からない!!
「それが、ヒナタだ」
「――へっ?」
主の声に、僕の意識は現実に引き戻された。
顔を上げて主を見ると、紅い瞳を細められ、笑っていらっしゃる姿が映った。
何が起こったか悟り、全身から血の気が引く。
僕、今の全部――――――声に出てた!?
「槐」
「は、はい! 申し訳ありません!」
咎められると思い、勢いよく頭を下げる。
しかし主の“クスリ”という笑いが聞こえてきた。
「お前の口癖は“どうでもいい”だったが――この世界で興味をそそる相手が見付かったようだな?」
アイツに興味が有ると思われた!?
「ちがっ! 違います!」
僕は顔を上げ必死に否定する――が、主は楽しそうに笑ってらっしゃる!
もう、穴があったら入りたい……。
「ヒナタは、ヒナタのままか」
「?」
何かを思い出すかのように、優しげな瞳で微笑む主を前に、僕は前々から思っていた疑問を口にする。
「あの人間は、何者ですか?」
「……俺にとって――――光だ」
しかし、そう言った主の表情は曇っている。
言葉と表情が合っていない気がする……何故?
「……選ばなくてはならない――だが、どちらもヒナタには似合わないな」
「………朧様?」
そう言って目を閉じられたまま、何か考えていらっしゃるようだった。
会話の無い部屋は静寂に満たされていた――――。
***
部屋から退出して、お気に入りの場所に行く。
考え事をするにはもってこいの屋敷の屋根に座り、封印の地の方向を見る。
“選ぶ”か…………。
朧様は最後に仰った。
「この地で生かすか、この手で永久に封じるか」
それ以上は話してくれなかった。
聴ける雰囲気でもなかったしね。
とりあえず、まだ選ばれていないご様子だったから、まめに守護者の馬鹿達の様子を見にいくか。
「……」
風も無く、静寂が満たす中ふと思う。
――アイツ、また乱暴に扱われてなきゃいいけど。
…………。
……。
何考えてんの僕、バカでしょ。
本当に意味が分からない――――。
槐
年齢:だいたい17歳くらい。「だから何?」
人種:奈落の民 「だから何?」
性別:男 「誰かさんは女の子って言ったけどね」
髪 :若竹色(後ろは長い三つ編み)「男だから」
瞳 :不明(仮面着用) 「女じゃないよ」
性格:朧には忠実。ヒナタにはツン。煌には呆れ。その他はどうでもいい。
「最後の紹介雑じゃない? ま、どうでもいいけどね」




