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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
序章・黄昏の番人
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4話.封印の祠と守護者

いっぱい書いたつもりが……(汗)

 煌の肩に担がれながら、鬱蒼とした森の中を進んでいると、途中から辺り一面が竹林に変わる。

 ヒラヒラと舞い落ちる竹の葉が幻想的であった。

 空から夕日が差し込み、とても穏やかな空間が広がっている。


 凄く綺麗……


 担がれて運ばれている事を一瞬忘れ、うっとりしていると水の音が聞こえてきた。

 その水音がはっきり聞こえるようになると同時に、やっと煌の動きが止まる。


「ようやく来たか。遅いぞ、煌」

「時間は厳守して頂かないと困りますよ」


 威圧的な声と、礼儀正しさが際立つ声がヒナタの背中越しに聞こえた。


 うぅっ……担がれているから、煌君の背中しか見えない。


「はぁ? そこで土いじりしてやがる蛍の野郎が寄り道しなきゃよかったんだ。そうしたら俺は間に合ってたぜ」


 蛍さんも居るんだ……土いじりして……。


「おい蛍、無視してんじゃねぇよ……」


 煌君かなり怒ってる。

 今声かけたら良くない気がするけど……もう、担がれたままは限界!!


「私の事も無視しないでほしいよ! 降ろしてよ煌君!」

「はぁ? 煌君とか馴れ馴れしいんだよ! 言われなくても二度と担がねぇ――よっ!」


 やはり声をかけるタイミングを間違えたらしい。

 煌は怒りそのままに、ヒナタを地面に“転がした”。


「――――いっっったぁ……」

「あ」


 予想を遥かに越え、ヒナタの身体は勢いよく地面を転がった。

 髪は乱れ、服は土まみれになっている。

 ヒナタは身体を起こし、抗議の目を煌に向けるが、ばつが悪そうに視線をそらされた。


 扱いが酷過ぎだよ!


 ヒナタは状況を把握しようとして、視線を煌から正面に移す。


 まず始めに見えたのは、一番奥に切り立つ岩肌であった。

 そこから水が湧き出ており、小さな滝が出来ている。

 岩肌を下った水が泉になり、その上に祠と、そこに行くまでの足場として、石が水面から顔を出していた。


 あの祠……何だか懐かしいような……。


 ヒナタは誘われるように祠がある泉に近付こうとした。

 しかし、一人の男がヒナタの前に立ち塞がる。

 紺色の髪は首筋に近い部分だけ長く、キリッとした紺碧の瞳は力強さがある。

 背の高さは蛍より高めであった。


「近付くな」


 先程の威圧的な声はこの男のものらしい。


「本来であれば、貴女はここに居ることさえ許されません」


 斜め後ろに控えてる人物が、もう1つの声の主のようであった。


 白藤の髪は前髪から横にかけて長さが左右異なっている。

 細くてつり目な蒼い瞳をしており、眼鏡をかけていた。

 背の高さは、手前に居る人物より少し低いくらいであった。


「ご、ごめんなさい……」


 反射的に謝り、後ろに下がる。

 そのままじっと見つめられることに耐えかねて、視線を横に移動させると黄金の髪を見つけた。

 泉近くにしゃがみ、土をペタペタ触っている。


 蛍さん……楽しいんですか。

 煌君かなり怒ってますよー。


「蛍、いい加減に立て。来たぞ」

「……うん」


 紺髪は威圧感たっぷりに、腰に手をあてながら言い放つ。

 それに蛍は微笑みながら立ち上がった。


 来たって……誰が?


 ヒナタは四人の視線を辿っていく。

 奥の竹林にいつの間にか人がいた。

 まったく気配を感じさせずに立っている。


「四人とも揃っておるようだな……そして、そなたも」

「貴方は!」


 ――この人夢の中の人だ……。

 白銀の長い髪、翡翠の瞳……間違いない!

 ただ、言葉使いが古いけど。


「どうしたのだ? 我とそなたは初めてのはずだが……何処かで逢ったか?」

「……いえ、何でもないです」


 “夢の中で”とかは止めておこう。

 妄想女とか言われそうだし……煌君に。


「……」


 何故か煌君に睨まれてる!


「これ、煌。もしやこの娘を粗雑にあつかったのではあるまいな? 何故に薄汚れたなりになっているのだ?」

「うるせ! 落ち人を生きて連れて来たんだから良いだろ!」

「……今回は、ただの落ち人ではないぞ」

「は?」


 煌はチラリとヒナタを見た。


 ううっ、気まずいよ……


「…まずは名からいくか」

「はぁ? のんきに自己紹介かよ!」

「娘、この短気な者はこうだ。知っておるな?」

「おい! 誰が短気だ!」

「短気だろう……話が進まない。黙ったらどうだ?」

「何だと!?」

「この方に手を出すなら、私がお相手致します」


 早くも自己紹介が進んでない……。


「まあよい。威圧的で偉そうなのがすばるで、そやつの従者……敬語眼鏡がさくだ」

「偉そうな昴さんに、眼鏡の朔さんですね! 分かりました」


 ヒナタは復唱とともに、特徴と名前を覚えた!


「……」

「……」

「ハッ!……だとよ!」


 昴と朔が固まっている横で、煌が馬鹿にしたように笑っている。


「光」

「え?」


 振り返ると、肩を指先でつつきながらヒナタを呼んでいる蛍の姿があった。

 土いじりは終わったらしい。


ほたるさんですよね」


 蛍は微笑みながらコクリと頷く。


「私はヒナタっていいます」

「……光、ヒナタ」

「はい、そうです!」


 蛍さんと……会話が出来てる! 最初は“こんにちは”しか言わなかったから……。


「ほう、偉いな蛍。自ら名を申したか」

「うん。……睡蓮すいれん


 そのまま蛍は、ヒナタを見ながら白銀の髪を指差した。


「うむ。そして我が睡蓮だ」


 蛍が紹介をすると、睡蓮は満足そうに笑った。


「――さて、他の者がしびれを切らせておるゆえ、本題にはいるか」


 全員が真剣な顔付きになる。


「ここは黄昏の世界。そして、我らにとってそなたは異界の人間。ヒナタのように異界から来る人間は珍しくないのだ」

「じゃあ、他にも居るんですね!」

「……居た、な」


 睡蓮は表情を曇らせた。

 その横で煌がため息をつく。


「さっきお前に“堕ち人”って言っただろ。この世界に落ちて来たやつらは全員おかしくなる。だいたい直ぐに禍々しい力宿らせて襲ってくんだよ。」

「そんな……っ! じゃあ、他の……神隠しに遭った人は!!」


 ヒナタの身体は急速に冷えていく。

 脚がガクガクと震え、立っているのがやっとだった。


「言っておくが、俺達は殺ってねぇからな!」

「一度堕ちたら私達にはどうしようもありません。自我を失い襲う――そして、黒い霧となり消滅します」

「……消、滅」


 ヒナタはガクンと地面に座り込んだ。


 人間が消滅する……皆、消えた。

 じゃあ、私も?


 ヒナタはゆっくりと睡蓮を見た。

 睡蓮は優しげに微笑んでいる。


「そなたはおそらく大丈夫だ」

「え?」

「この世界は不安定で、世界に穴が開くのだ……その穴に引きずり込まれた者が落ちて来る。しかしそなたは……喚ばれた者」

「……誰に、ですか?」


 睡蓮は後ろにある祠を指差す。


「神だ。……破滅の、な」

「破滅の神様?」

「さよう。そなたは祠に封じておる神に呼ばれたのだろう」


 あまりの事に頭が混乱する。

 私は呼ばれた――?


 睡蓮はそのまま話を続ける。


「何故そなたを喚んだかは知らぬが……空を、空間を割って落ちてきたのだ。そのような強引な力を持つのは破滅の神ぐらいであろう。まあ、もう一人空間を開くやつならおるが今は置いておくかの」

「睡蓮、封印が弱まっているのか?」


 昴が深刻そうな表情で尋ねる。


「おそらく我の封印が弱まる時を狙って、呼んだのだろう。――もしや、この世界を終わらせる為に……」

「終わらせる……?」


 風が強く吹き、竹の葉が舞い散る。


 私と睡蓮さんの視線が交わった時、少しだけ祠が光った気がした。


「始まりがあれば、終わりもある。だが、破滅を拒んだ我らは封じてしまったのだ――そしてこの世界の時間は止まった。それからずっと、黄昏だ」

「堕ち人が増えたのもその頃からでしたね」

「全員が祠を襲いに来るしな!」

「この世界を破壊すれば外に出られる、と思っているんだろう」


 昴が呆れた表情で答えると、蛍が首をかしげた。


「…声聞こえる――帰りたい。だから、祠呼ぶ。でも、この世界……繋がってない――暗い」

「…蛍さん、分かるんですか?」

「……」


 蛍は小さな声でそう言ったきり、ヒナタに微笑んだまま答えなくなってしまった。


「我らはずっと、祠を守って来たのだ。我は封印と結界を施し、昴・蛍・煌・朔の四人で襲い来る者を退けておる」


 この世界は神様が居るのが、当たり前なんだよね? 話し合う事は出来なかったのかな……。


 ヒナタの表情から、睡蓮は察したように続けた。


「破滅の神は、終わらせるのが使命。生きている者にとっては破滅を望まぬだろう?」


 そう言って睡蓮は優しく微笑む。


 睡蓮、さん……。


 優しいはずの微笑みにヒナタは何故か焦りを感じた――――。




やっと、ワヤワヤ出てきましたね(笑)

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